モンテ・クリスト伯（三）

物語は、ローマからパリへとその舞台を移していった。エドモンは、あらかじめ、あるときはブゾーニ司祭として人の秘密を聞き出し、あるときはウィルモア卿として金融関係の情報を集めた。そして、ブゾーニ司祭はパリに住み、ビルフォール、フェルナン、ダングラールの居所をつきとめ、彼らの情報だけでなく、土地勘も養ったのだった。そして、いよいよモンテ・クリスト伯という仮面をかぶって、パリ社交界にのりだしたのだ。彼の敵は、三人とも、検事総長、伯爵、男爵といった身分を持ち、パリの上流社会に属していたからだった。

目次

３５章「撲殺の刑」 ローマの謝肉祭の前段、ポポロ広場で二人の男の公開処刑が予定されていた。伯爵は、アルベールとフランツの二人を処刑の見える窓へといざなった。

３６章「ローマの謝肉祭」 一週間続くローマのコルソ通りの馬鹿騒ぎで、アルベールは百姓姿の女に懸想する。そして、謝肉祭最後の日、彼はフランツの見ている前で、現れた女の手引き者と共に姿を消してしまう。

３７章「聖セバスチャンのカタコンベ」 フランツはブラチヤノ侯爵の舞踏会に一人で行き、アルベールからの連絡を待っていた。フランツが受け取った手紙には、身代金の要求が書かれていた。アルベールは、山賊ルイジ・バンパにさらわれたのだった。

３８章「約束」 アルベールはモンテ・クリスト伯と三ヵ月後の訪問が決まったことを歓迎する。しかし、フランツはアルベールに伯爵を警戒するようにと忠告する。しかし、アルベールは伯爵に対する疑念を少しもいだかない。むしろ、自分が伯爵をパリ社交界に紹介できることを光栄に思っているようだった。

（ローマのまとめ）フェルナンの息子、山賊ルイジ・バンパ

ローマを訪れた二人の青年の泊まったロンドン・ホテルの同じフロアに一人の御大尽（おだいじん）が泊まっていた。フランツはそれがモンテクリスト島の謎の主と思ったが、相手は初対面を装った。彼はモンテ・クリスト伯を名乗り、二人の青年に、謝肉祭を思う存分楽しむことのできる配慮をみせた。そして謝肉祭の最終日、アルベールが誘拐されるという事件が起こった。フランツの機転で伯爵を動かし、身代金を払うことなく、アルベールは開放された。そして、パリに行くつもりだという伯爵に対し、アルベールはパリ社交界への紹介を務めると約束した。その日は、三ヶ月後、五月二十一日午前十時半と決まったのだった。話は、ローマを離れ、パリに舞台を移すことになった。偶然か、しかしすべては、ダンテスの思惑どおりに運んでいたのだった。

第五部（１８３８年）ローマ謝肉祭あけから三ヶ月後、パリ

３９章「賓客」 エドモン・ダンテスはウィルモア卿として、あるいはブゾーニ司祭としてパリにも現れ、目的達成のための情報収集をしていた。今度はモンテ・クリスト伯として、パリ社交界の入り口に立った。標的の三人は、銀行家であり、軍人として名を成した伯爵であり、検事総長であり、パリ社交界の重鎮たちである。

４０章「午餐会」 伯爵はパリは初めてだと言いながら、住居・劇場の桟敷など、アリとベルツッチオに命じてすでに手配済みだった。十時半にはじまった午餐会は、四時間後の二時半にお開きになった。秘書官と新聞記者とお近づきになれて、しかも相手を圧倒して、伯爵のパリ社交界デビューがはじまった。

４１章「紹介」 アルベールは、モンテ・クリスト伯爵を、父モルセール伯爵と母メルセデスに紹介した。モルセール伯爵ことフェルナンは、モンテ・クリスト伯爵の正体に気づかなかったが、メルセデスは最初に声を聞いたときに、彼がダンテスだと見破った。なぜ、モンテ・クリスト伯爵などという名前でパリにきたのか、自分たちにさえエドモン・ダンテスだと名乗らないのだろう。得体の知れない不安が彼女をおそった。

４２章「ベルツッチオ」 ここにモンテ・クリスト伯の信頼すべき家令ベルツッチオが登場する。しかし、彼はモンテ・クリスト伯が購入を決めた別荘が、パリ近郊のオートイユにあることを知って、急にそわそわしだしたのだった。モンテ・クリスト伯は、彼の態度の急変を見誤らなかった。

４３章「オートイユの家」 ベルツッチオはオートイユの別荘を極度に恐れた。その理由をモンテ・クリスト伯は知っていた。それは、司祭に化けたエドモン・ダンテスが９年前にシャトー・ディフを脱獄した年に、ベルツッチオから告白された話だった。モンテ・クリスト伯は、その秘密をすべて話さないなら、ベルツッチオを解雇すると脅したので、ベルツッチオは話す覚悟を決めた。

４４章「復讐」 家令のベルツッチオはついに観念し、モンテ・クリスト伯にオートイユの屋敷を恐れるわけを話し出した。そして、その話の中でビルフォールの赤子殺害未遂、その赤子のその後、そして自分が服役することになった事件のいきさつについて語りはじめた。

４５章「血しぶき」 カドルッスの旅籠では、ブゾーニ司祭の帰ったあと、殺人事件が起こっていた。妻のカルコントが銃で、宝石商が刃物で殺された。そして、カドルッスは宝石と金を持って逐電した。密輸をやっていたベルツッチオは、隠れていたところから出たところを、警官と憲兵に現行犯逮捕された。伯爵にすべてを語り終えたベルツッチオは伯爵の言葉を待った。そして、ベルツッチオの贖罪は成った。ベルツッチオから恐怖が去り、平安がおとずれた。

−−−こうして伯爵の、長い五月二十一日が終った−−−

（パリ初日のまとめ）ビルフォールの弱点 エドモンは、アルベールの紹介で、モルセール伯爵ことフェルナンとその妻メルセデスに会った。メルセデスは、モンテ・クリスト伯の正体を見抜いたが、彼がパリに来た目的がわからず、動揺をおさえて黙っていた。また、オートイユの別荘に同伴させたベルツッチオから、庭の秘密を聞き出し、ビルフォールが赤子の殺人未遂者であること、その子が生きていることを語らせた。この事実は、かつてベルツッチオがブゾーニ司祭に懺悔（ざんげ：罪の告白）したものであるが、今あらためて、伯爵（と読者）の前に、語られたのである。

４６章「無制限貸出」 第二の標的、ダングラールを倒す手段にエドモンが選んだ方法のひとつは、「無制限貸出」。このとっぴな方法で、銀行の金庫を空にしてやること。そして、その金をローマの銀行に取りに行かせること。そのローマにはエドモンの息のかかった山賊がいて、ダングラールはたちまち餌食にされるというわけなのだ。

４７章「連銭葦毛」 ダンテスはまずダングラール男爵夫人に、元は夫人のものだった馬二頭をプレゼントし、男爵にも恩を売った。翌日、予定通り、その馬をつけた馬車がビルフォール夫人に貸出され、ボワに出かけたが、その二頭の馬が暴走し、オートイユの伯爵邸前を通過することが、ダンテスには知られていた。暴走馬車は、アリの手によって止められ、助かった夫人は感謝の限りの言葉で、伯爵に礼を言った。そして、その夜、ビルフォール本人が、伯爵邸を訪問するに至った。

４８章「観念論」 ダンテスは、自分を見下ろすような態度で、夫人と息子を助けられた礼を言いに来たビルフォールを、その知識と思想とで驚愕（きょうがく）させた。ビルフォールは、モンテ・クリスト伯と名乗る人物を見直し、友人の列に加えた。

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ページ制作者：　（ささくら宗）聖母マリヤ福音教会
通称「オリジナル教会」　初代代表者　笹倉正義
ささくら修道会必読書（１）
2016/2/17、2017/4/27-7/14