４５章「血(ち)しぶき」

カルコントは宝石商に銃で撃たれて死亡、宝石商はカドルッスに刃物で殺された。そのカドルッスは、宝石と金を持って逐電した。銃声とさび声で目を覚まし、隠れていた場所を出たベルツッチオを待っていたのは、武装した警官と憲兵だった。彼を救い得る者は、ブゾーニ司祭による証言だった。予審判事の手によって探索がはじまり、当の司祭がベルツッチオと面会するためにやってきた。そして司祭自身も驚かずにはいられない犯罪が語られたのだった。ベルツッチオは、自分自身の犯した罪についても、司祭に懺悔したのだった。司祭は、ベルツッチオの救済を約束し、働き口として、モンテ・クリスト伯への紹介状を書いてやったのだった。これらのことを伯爵に話したベルツッチオには、やさしい伯爵の言葉とともに、平安がおとずれた。ベルツッチオから罪の恐怖は消え去り、贖罪（しょくざい：神のゆるし）が成ったのだった。 こうして伯爵は、ベルツッチオの告白を通して、第一の標的、ビルフォールを倒す手段の確認をしたのだった。それは、彼の赤子殺し未遂事件の暴露に他ならなかった。そして、その証拠品が、ほかならぬその赤子というわけだった。この後わかることだが、ビルフォールは法の番人、司法の最高位、検事総長の要職にあるのだ・・・・。

目次

（１）家令「宝石商とカルコント」 3-45-1-33『では、わたし一人というわけですか?』。『お給仕を致しましょう』と、カルコントは、いつもとは打ってかわった、金を払う客にも見せたことのないような愛想『たらたら』で申しました。カドルッスは、ときどきチラリと、女房のほうをうかがっていました。嵐はあいかわらず吹いていました。『お聞きください。あのとおりでございますよ！』と、カルコントが申しました。

（２）家令「深夜の銃声と絶叫」 3-45-2-35ぐっすり寝入っていたわたくしは、とどろきわたるピストルの音、魂消えるような叫び声に、思わずハッと目を覚ましました。床の上に、よろめく足音が聞こえました。と、階段の、ちょうどわたくしの頭の上のあたりで、どたりと倒れる音がしました。わたくしは、まだ眼が覚めきっていませんでした。

（３）家令「ベルツッチオの現行犯逮捕」 3-45-3-28この恐ろしい光景に、わたくしはほとんど生きた心地もございませんでした。もう助けることもできないとわかると、いまはただ一つ、逃げることしかございません。わたくしは、髪をかきむしり、恐怖の叫びを上げながら、階段を駈けおりたのでございました。階下の室には、税関吏が五六人、憲兵がニ三人、すべて武装すがたで待っていました。

（４）家令「エドモンとベルツッチオのつながり」 3-45-4-26さすがに天道さまはお見通しで、そうしているまに、カドルッスは、外国で捕まえられ、フランスへ送りかえされてまいりました。やつは、いっさいを白状いたしまして、殺す気持を起させたのが、とりわけそれをそそのかしたのが女房だったと申し立てました。その結果、やつは終身懲役を申し渡され、わたくしは無罪ということになりました」。「ブゾーニ司祭の手紙を持ってわたしのところへきたのも、ちょうどそのときのことだったというわけだな？」と、モンテ・クリスト伯が言った。

（５）家令「姉は死に子供は行方不明」 3-45-5-37わたくしがお邸にあがりましたのは、」と、ベルツッチオは言葉をつづけた。「この悲しい事実を知ってからのことでございました。ベネデットは、ゆくえ知れずというわけで申しあげずにおりましたし、姉のほうは死んでしまっておりましたので申しあげなかったようなわけなのでして」。

（６）家令ベルツッチオの贖罪が成就 3-45-6-57さ、お前は帰るがいい。そして、しずかに寝るがいい。もしお前のいまわの際に、お前の懺悔僧があのブゾーニ司祭ほどのひろい気持ちをもってくれないようだったら、わたしにして生きているかぎり、このわたしを呼ぶがいい。わたしは、お前の霊魂が、永劫と呼ぶつらい旅路に上ろうというとき、お前の霊魂が快く眠れるような言葉を見つけてあげようから」。

（７）エデのパリ到着 45-7-32伯爵は、おりて行った。すでに玄関の扉は開かれていた。伯爵は、金繍をほどこした絹の被衣を身にまとい、それで顔をかくしている一人の若い婦人のほうへ手を差し伸べた。婦人は、差し伸べられた手を執ると、うやうやしく愛情をこめてそれに接吻した。

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ページ制作者：（ささくら宗）聖母マリヤ福音教会
通称「オリジナル教会」　初代代表者　笹倉正義
オリジナル教会・ささくら修道会・必読書
2017/7/25