４６章「無制限貸出(むせいげんかしだし)」

第二の標的、ダングラールを倒す手段にエドモンが選んだ方法のひとつは、「無制限貸出」。このとっぴな方法で、銀行の金庫を空にしてやること。そして、その金をローマの銀行に取りに行かせること。そのローマにはエドモンの息のかかった山賊がいて、ダングラールはたちまち餌食にされるというわけなのだ。このように読者は、「無制限貸出」の意味をしることができたが、ダングラールにそれを言ってもらっては困る。

目次

（１）ダングラールを視野に 3-46-1-36ちょうどそのとき、ベルツッチオがはいってきた。「お呼びになりましたか？」。「うむ、」と、伯爵は言った。「お前は、いましがた門（の前に止まっていた馬車を見たかね？」。「はい、なかなかりっぱな馬でございました」。「わたしはお前に、パリでいちばんりっぱな馬を、と言いつけたな」と、モンテ・クリスト伯は眉をよせながら言った。

（２）ボーイ「パティスタン」 3-46-2-49これはあらかじめ言っておこう。だから、もしお前が、好いにしろ悪いにしろ、わたしの噂をしたり、わたしの行動をとやかく言ったり、わたしのすることを窺ったりしたことがわかったが最後、そのとき限りこの家を出ていってもらおう。わたしは、召使に、ただ一度しか注意しないことにしている。これがお前への注意の全部だ。

（３）アリさんを見習い 3-46-3-11「アリには、長所もあるが欠点も多い。だから、あれを手本にしてはいけない。あれは例外だ。あれには、給金をやっていない。あれは、召使ではない、奴隷なのだ。わたしの犬だ。義務を欠いても放逐はしない。殺してしまうまでなのだ。パティスタンは目をみはった。「嘘だと思うのか？」と、モンテ・クリスト伯は言った。

（４）ノルマンディー海辺の不動産 3-46-4-13ただ、手に入った土地には、小さい港が欲しいのだ。船がはいって、碇泊していられるような、ちょっとした入江とか、湾とかだな。船はたかだか、十五フィート（読者註：０．３０Ｘ１５＝４．５ｍ）の吃水だ。そして、夜であろうが昼であろうが、気の向いたときに指図したら、いつでも水におろせるようにしておくのだ。あちらこちらの公証人に当って見て、いま言ったような条件の土地をさがしてはくれまいか。

（５）エドモンとダングラール 46-5-13ともかく、邸はシャン・ゼリゼーにありまして、これはたしかにたしかめて見たのですが、たしかに自分の邸で、きわめて堂々たるものでした。ところが、無制限貸出という『やつ』」と、ダングラールは卑しげな微笑を浮かべながら、「これは貸出を引き受ける銀行を『じりじり』させるやつでしてね。一刻も早く、その御本人というのに会って見たいと思っています。

（６）無制限貸出の意味が今ひとつ 3-46-6-43ところが、ダングラールさんは、取引に制限をおつけになる。さっきもおっしゃったように、賢者でいらっしゃる・・・・」。「あなた、」と、銀行家）は、傲然としてそれに答えた。「これまで誰一人、わたしのところの金庫の金のことを懸念したものはありませんでした」。「してみると、」と、モンテ・クリスト伯は冷やかに答えた。「どうやらわたしが初めてというわけですな」。「どうしてまたそんなことを？」。

（７）無制限貸出が三つの威力 3-46-7-23一通は、ウィーンのアレスタイン・ウント・エスコレス商会からロスチャイルド男爵に宛てたもの。他の一通は、ロンドンのベアリング商会からラフィット氏に宛てたものです。御承諾いただけるかどうか、一言おっしゃっていただきましょう。御心配をかけないことにいたしますから。この二つの店のうち、どちらかへ行きさえすればいいのですから」。勝負はきまった。

（８）大財産家の名前に記憶が 3-46-8-27「いや、」と、モンテ・クリスト伯は答えた。「近頃どころか、ずっと昔からのものなのです。いわば世襲財産といったようなもので、手をつけられないことになっていました。そして、利子が利子を生み、ほとんど元金の三倍ほどになっていました。遺言者の定めた時期というのが、やっとニ三年前にやってきまして。したがって、わたしが財産を動かしはじめたと申しますのも、わずかニ三年前からのことなのです。ご承知のないのもごもっともです。いまにおわかりになりましょう」。

（９）昵懇のしるしに家内に 3-46-9-29「で、奥さまのところにはどなたがおいでだ？ドプレーさんか？」と、きげんよさそうにダングラールがたずねた。銀行家の家庭の秘密を知っていた伯爵は、それを聞くなり、心のなかで『にやり』とした。「ドプレーさまでございます、男爵さま」と、下僕が答えた。ダングラールはうなずいた。

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ページ制作者：（ささくら宗）聖母マリヤ福音教会
通称「オリジナル教会」　初代代表者　笹倉正義
オリジナル教会・ささくら修道会・必読書
2017/7/26