４６（４）ノルマンディー ４６（４）ノルマンディー
| 3-46-4-1「旦那（だんな）さま、」ベルツッチオは言（い）った。3-46-4-2「手（て）に入（い）れますのに、とても骨（ほね）が折（お）れました。（＝苦労したの意味）。3-46-4-3それに、ずいぶんいいお値段（ねだん）でございまして」。3-46-4-4「だからといって、馬（うま）がりっぱでなくなりでもしたのか？」と、伯爵は首（くび）をすくめて見（み）せながらたずねた。3-46-4-5「御満足（ごまんぞく）いただけましたら、それに越（こ）したことはございません」と、ベルツッチオが言った。3-46-4-6「で、どちらへお出（で）ましになりますので？」。 3-46-4-7「ショセ・ダンタン町（ちょう）のダングラール男爵（だんしゃく）のところだ」。3-46-4-8こうした会話（かいわ）は、車寄（くるまよせ）の上（うえ）で行（おこな）われた。3-46-4-9ベルツッチオは、段（だん）をおりかけた。3-46-4-10「ちょっと待（ま）ってもらおう」と、伯爵（はくしゃく）は彼（かれ）を押（お）し止（と）めて、「わたしは海岸（かいがん）に土地（とち）が欲（ほ）しいと思（おも）っている。3-46-4-11ノルマンディの、まあル・アーブルとブローニュとのあいだあたりだな。3-46-4-12範囲（はんい）は制限（せいげん）しない。3-46-4-13ただ、手（て）に入（はい）った土地（とち）には、小（ちい）さい港（みなと）が欲（ほ）しいのだ。3-46-4-14船（ふね）がはいって、碇泊（ていはく）していられるような、ちょっとした入江（いりえ）とか、湾（わん）とかだな。 3-46-4-15船はたかだか、十五フィート（読者註：０．３０Ｘ１５＝４．５ｍ）の吃水（きっすい）だ。3-46-4-16そして、夜（よる）であろうが昼（ひる）であろうが、気（き）の向（む）いたときに指図（さしず）したら、いつでも水（みず）におろせるようにしておくのだ。3-46-4-17あちらこちらの公証人（こうしょうにん）に当（あた）って見（み）て、いま言（い）ったような条件（じょうけん）の土地（とち）をさがしてはくれまいか。3-46-4-18知（し）らせて来（き）たら、検分（けんぶん）に行（い）って、お前（まえ）がいいと思（おも）ったらお前（まえ）の名義（めいぎ）で買（か）っておくのだ。3-46-4-19船は、いまフェカンに向（む）かっているはずだな？」。 3-46-4-20「わたくしどもがマルセイユをたちましたとき、海（うみ）におろしたのを見とどけました」。3-46-4-21「そしてヨットのほうは？」。3-46-4-22「ヨットは、マルティグにいるように命令（めいれい）されております」。3-46-4-23「よし、ときどき、船とヨットと、その両方（りょうほう）の船長（せんちょう）との連絡（れんらく）を忘（わす）れるなよ。3-46-4-24居眠（いねむ）りでもしているとこまるから」。3-46-4-25「ところで、汽船（きせん：蒸気機関が動力の船）のほうはいかがいたします？」。3-46-4-26「シャロンに碇泊（ていはく）しているやつか？」。3-46-4-27「だい」。3-46-4-28「ニ艘（にそう）の帆船（はんせん）と同（おな）じような命令（めいれい）を出（だ）しておけ」。3-46-4-29「かしこまりました！」。3-46-4-30「地所（じしょ）を買ってしまったら、北仏街道（ほくふつ・かいどう）と南仏街道（なんふつ・かいどう）に、十里（じゅうり：読者註：４Ｘ１０＝４０Ｋｍ）ごとに換（か）え馬（うま）を用意（ようい）させておいてもらいたい」。 3-46-4-31「承知（しょうち）いたしました」。3-46-4-32伯爵は、満足（まんぞく）げなようすで、階段をおりて馬車（ばしゃ）に乗（の）った。3-46-4-33車（くるま）は、馬（うま）の足掻（あしか）きもみごとに、銀行家（ぎんこうか）の邸（やしき）の前（まえ）まで駈（か）けつづけた。 |
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ページ制作者：（ささくら修道会）聖母マリヤ福音教会
通称「オリジナル教会」 初代代表者 笹倉正義
オリジナル教会・ささくら修道会・必読書
2017/7/26