４０章「午餐会(ごさんかい)」

伯爵はパリは初めてだと言いながら、住居・劇場の桟敷など、アリとベルツッチオに命じてすでに手配済みだった。十時半にはじまった午餐会は、四時間後の二時半にお開きになった。秘書官と新聞記者とお近づきになれて、しかも相手を圧倒して、伯爵のパリ社交界デビューがはじまった。

目次

（１）アヘンの粒入れ 3-40-1-50エメラルドの函のなかには、いくつか同じような粒がはいっていたが、全部で十二くらいははいりそうに思われた。ボンボン入れは、食卓を一巡した。2だが、客人たちは、それを手から手へとまわしながら、丸薬を見たり嗅いだりするというより、むしろみごとなエメラルドの容器のほうをながめていた。

（２）三個の宝石の使途 3-40-2-16「そして、お二方からは、そのりっぱな贈物にたいして、何をおもらいになりました？」と、ドプレーがたずねた。「陛下は、或る婦人の自由をお与えくださいました。そして法王は、或る男の自由をお与えくださいました」と、伯爵が答えた。「そういうわけで、一生に一度、わたしも、王座の『きざはし』の上にう生まれたくらいの勢力を持ったわけです」。

（３）伯爵の信条について 3-40-3-54そこで伯爵、わたしがお尽しできることと言えば、ただ一つをおいてありません。それについては、じゅうぶん御用を務めましょう。それはあなたを方々へ御紹介申しあげ、またわたしの親友たちにもそれをやって貰うこと、これはいまさら申しあげるまでもございません。

（４）ショセ・ダンタンがお勧め 3-40-4-10「お待ちください、その方のお父様というのは、ダングラール男爵ではありますまいか？」。「ええ、」と、アルベールが答えた。「ただし、新男爵にすぎませんが」。「なんとおっしゃる？」と、モンテ・クリスト伯は答えた。「栄爵に相応するだけ国家に功労がおありだったら、少しもかまわないではありませんか？」。「偉大な功労があったのでして」と、ボーシャンが言った。「自由思想こそ抱いていますが、１８２９年シャルル十世のために六百万の国債を起こして成功し、王さまから、男爵の位をいただき、レジオン・ドヌール勲章のシュバリエを授けられたというわけでして。

（５）パリでの新住居 3-40-5-53で、今日わたしが十時に着くことを知っていまして、フォンテヌブローの街道口で、九時からわたしを待ちうけていまして、こうした紙片を渡しました。わたしの新居の番地です。ごらんください」。こう言いながら、モンテ・クリスト伯は、紙片をアルベールの手へ渡した。「シャン・ゼリゼー。三十番地」と、アルベールは読みあげた。

（６）お開きは二時半 3-40-6-10「では、」と、ボーシャンが言った。「われわれとしては、こまごました御用に立つくらいが関の山だな。僕は、新聞記者として、パリの劇場という劇場の門を伯爵の前にお開き申すことにしようや」。「ありがとうございますが、」と、モンテ・クリスト伯は微笑しながら言った。「じつは、家令に申し付けて、すでにほうぼうの劇場の桟敷を取らせておきました」。

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ページ作成者：（ささくら宗）聖母マリヤ福音教会
通称「オリジナル教会」　初代代表者　笹倉正義
オリジナル教会・ささくら修道会・必読書
2016/9/30、2017/6/4-6/15