24-1．「狂気消失」の最初の体現者たち 24-1．「狂気消失」の最初の体現者たち
| イエスの十字架の死は明らかに「失敗」である。弟子たちだけでなく人々は、イエスが「おだやかなユダヤ人の王」になることを望んだのだったが、死刑で殺されてしまったのではどうしようもない。イエスの一行は解散するしかないと思われたが、どういうわけか彼らはエルサレムの宿に留(とど)まった。 もうひとつは、カペナウムの兵営に「イエスの十字架の死には意味があるはずだ」と考えた異邦人がいたことである。彼はただちに自分の僕(しもべ)をエルサレムの宿に派遣したのである。その場所は伝令書に書いてあったのである。この僕、そうルカは生前(せいぜん)のイエスの顔や所作(しょさ)をよく知っていた。 宿におけるルカとマリヤさまの出会い、そこから新たな物語、イエスの十字架の死が、個々人の狂気をあがなうためのものであり、「成功」の始まりとなるのである。 |
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| (1)ペテロの場合 それで、あなたが立ち直ったときには、兄弟たちを力づけてやりなさい」。22-33シモンが言った、「主よ、わたしは獄にでも、また死に至るまでも、あなたとご一緒に行く覚悟です」。 この言葉はペテロの本音(ほんね)であろう。 彼が園から逃げたり、祭司長の邸宅で否認したのは不本意なものであったのだ。否認は「おびえ」からではなく、見破られて追い出されたら、裁判の結果を知ることができないと考えたからであろう。 しかし、イエスが処刑された今となって、それは深い悔恨に変わって彼を苦しめた。母のマリヤの容貌と、彼女のふるまいから、盟主奪回の暴動は起こらなかった。自分たちも、その時は、マリヤの容貌が現れたのを見て驚き、なぜか穏やかになっていた。しかし、イエスが復活されたと、人々が言うのを聞くにつれ、再び悔恨が彼を苦しめた。 とても人には言えないような恐ろしい思いが次々に彼を襲った。彼は、使徒たちのトップなのである。彼が号令すれば、使徒はおろか弟子たち、市民たちが呼応して立ち上がるだろう。その結果がどうなるのか、イエスの犠牲がふいになる、そのような自制との間で彼は苦しんだ。それは他の使徒や弟子たちも同じであった。「狂気」それこそが、彼らを崖っぷちへと誘っていたのである。 (2)母マリヤの役割 「みなさん」とマリヤがアラム語で人々に語りかけた。「みなさんは園でのイエスの苦しみをごらんでした。その情景を思い出してください」。ペテロと人びとは我知らず自分をゲッセマネの園に置いた。イエスの異様な苦しみ方、それが見える。すると、見よ、自分の狂気がイエスの身に降りかかり、イエスの苦しみが一段と増したように思われた。おお、イエスはわたしの汚物をお飲みだった！ マリヤは再び言葉を発した。「みなさんは十字架のイエスをごらんになりました。それを思い返してください」。一同は目を転じ、自らをイエスの十字架の下に置いた。木をつたって流れる下るイエスの血が見えた。その血を上につたってイエスを仰ぐと、その顔は苦痛にゆがんではおらず、穏やかであった。 23-46そのとき、イエスは声高く叫んで言われた、「父よ、わたしの霊をみ手にゆだねます」。こう言ってついに息を引きとられた。 そのイエスの叫びを聞いたとき、ペテロと人びとは、自らの「狂気」がふっと消えたことを思った。イエスの母マリヤの顔を見ると、そこには穏やかな笑顔があった。 危機は去った。人びとから「狂気」が消え、ユダヤ人（指導者たち）への敵意もまたどこかに行ってしまった。ペテロは、これこそはイエスの成し遂げた事業なのだと悟った。アロン家の神事は、獣の血を流して、人々の罪をあがなう。しかし、獣の血では実際人の罪（狂気）を負うことはできなかった。だが今、自分たちは、人となられたイエスにはそれができ、実際自分たちの「狂気」が消えたのを体現した。そして、その成就こそが、イエスの歩まれた道であることを、母マリヤは悟っておられたのだ。 おお、聖母子。それこそは、自分たちがこれから人びとに証（あかし）していくことなのだ。人の「すぐれた」知恵を用いるのではなく、神の「おろかさ」による救いが実現したことを証するのだ。こうして、彼らに聖霊が下る準備が整った。 (3)イエスの遺体が消えた 安息日が明けた、十字架から三日目の朝、女性たちがイエスを仮置きした岩窟に行ってみると、入口をふさいでいた岩の蓋(ふた)がころがされ、遺体が消えていた。そして、弟子たちの前に、性の違ったイエスが立った。そしてイエスの死の意味を律法に基づいて教え始めた。それこそはイエスの母マリヤさまに他ならなかった。 (4)カペナウムからの訪問者 その翌日、宿の前に馬車が止まった。乗っていたのはカペナウムから来たというユダヤ人の長老とひとりの異邦人だった。彼らはイエスの母との面会を求め、宿の女主人は二人(ふたり)を二階の広間に案内した。異邦人は、百卒長の僕（しもべ）ルカと紹介された。 長老は、ルカの主人はイエスにその信仰をほめられた百卒長と紹介した。ペテロはその事のしだいを覚えていた。 7-9イエスはこれを聞いて非常に感心され、ついてきた群衆の方に振り向いて言われた、「あなたがたに言っておくが、これほどの信仰は、イスラエルの中でも見たことがない」。7-10使いにきた者たちが家に帰ってみると、僕は元気になっていた。 (5)イエスの一行は神殿にて 殺気の消えた彼らは、何ら抵抗を受けることなく、神殿に入れた。そして神をほめたたえた。新しい何かが始まろうとしていた。 |
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