新約(しんやく)聖書の文面比較

 
(1)新約聖書はアレキサンドリヤ司教(しきょう)
このサイトで幾度となく指摘しているように、聖書には、旧約聖書と新約聖書とがあります。旧約聖書とはユダヤ人の聖典です。それをキリスト教の聖書は拝借しているのです。その理由は、マリヤさまとイエスさまの物語が旧約聖書の預言の実現としたエジプトのアレキサンドリヤ司教の思惑があったからです。

その新約聖書は、四世紀にコンスタンティヌスが東西を統一し単独皇帝に就位したのを機に、エジプトのアレキサンドリヤ司教の主導で定まったものです。その目的のひとつは、ローマ教会の風下に立つことをいとい、離脱の思惑があったこと、もうひとつは「ヨハネによる福音書」作成後、アレキサンドリヤに起った福音書作成ブームの沈静化です。

ひとつめのためにはローマ教会の象徴でもあるマリヤさまの名を「イエスさまの母」に封じることでした。それが「ヨハネによる福音書」ですし、新約聖書全体もまたマリヤさまの名が出ないようにしています。

(2)「智の(みやこ)」の福音書作成ブーム
ふたつめの無秩序な福音書作成ブーム対策は、皇帝名での焼却処分の断行により、お祭騒ぎは終わり、下火になりました。そういうわけで新約聖書はキリスト教関係の文書の単独峰となりました。新約聖書は歴代アレキサンドリヤ司教が、ローマ教会からの離脱を目的に、著作と言う労働を奴隷たちにさせて出来上がったものです。聖書の「智」の部分は奴隷たちのものです。

ローマ帝国には「奴隷階層」が存在し、人身売買の市場もありました。労働をしたのはローマ市民ではなく奴隷でした。医療、著作などの知的労働は奴隷たちが担っていたのです。

ローマ帝国の広大な版図が東西に分割統治された時代があること、その西の首都は「パンとサーカス」の「永遠の都」ローマ、東のそれは「智の都」アレキサンドリヤでした。そしてあらゆる労働を担う奴隷階層の存在がキリスト教誕生に反映されているのです。

(3)マリヤさまの名を(かく)福音書(ふくいんしょ)
キリスト教のオリジナル文書は、ふたつの「ルカ原書」とパウロ書簡の原書ですが、奴隷たちは、マリヤさまの否定のため、預言の成就、大げさの劇場化、道徳、小説化した文書に再構築しました。そのため、福音書は四(よっ)つになりました。

1)「マタイによる福音書」
ローマ司教にプレゼント、星はハレー彗星、ヨセフ一家がエジプトに避難はアレキサンドリヤの印章です。

2)「マルコによる福音書」
ルカ文書の補完が目的の短い文書ですが、奴隷たちによる改編記事もあります。

3)「ルカによる福音書」
ルカ文書の原文書にマリヤさまの出自(しゅつじ)とヨセフ一家の物語を読み解くヒントがあります。マリヤさまを否定すること、劇場化記事が挿入されており、通読すると意味不明になりますが、アレキサンドリヤ司教の存在がわかると読み解けます。

4)「ヨハネによる福音書」
マリヤさまの名を「イエスさまの母」に封じた文書です。

以上、現時点の知見をふまえ2024/12/16書き直し
 
テオピロ
テオピロは匿名、実名はクレオパ(「ルカによる福音書」24章)
各写真は、新約聖書の、「ルカによる福音書」の冒頭部分です。テオピロの訳し方に注目してみました。翻訳は単語レベルで「直訳」すると、読者に意味が通じません。まして、聖書を訳すには、言語力の他に、翻訳者の根底にある深い信仰と、敬虔な神への愛が試されます。しかし、「新約聖書」制定の目的がエジプトの「智の都」と謳われたアレキサンドリヤの司教の、「女と漁師」をあがめるローマ教会からの離脱にあることが分かると、「うーーん」です。2024/12/17

1.口語訳聖書では、「テオピロ閣下よ」
ルカが百卒長テオピロの僕だとしたら、「ご主人さま」ではなく、主人は軍人であり、こういう言い回しになるのでしょう。
2.バルバロ訳聖書では、「尊いテオフィロ」
   ルカが百卒長テオピロの僕だとしたら、無礼な言い回しに感じます。
3.英語聖書では、「most excellent The-oph-I-lus」
4.ドイツ語聖書では、「hochverehrter Theophilus」
5.共同訳聖書では、「尊敬するテオフィロスさま」
   ルカが百卒長テオピロの僕だとしたら、無礼な言い回しに感じます。
6.新共同訳聖書では、「敬愛するテオフィロさま」
   同上
 
なおテオピロは匿名であり、実名は最終章で明かされるクレオパです。僕(しもべ)とは奴隷(どれい)のことですが、ローマ帝国には奴隷階層があり、労働は奴隷が担っていました。ルカの奴隷は特別なものではなかったのです。そしてルカは解放奴隷だったと確信します。「解放奴隷」とは奴隷を解かれて自由人になった者です。 2024/12/16追記
 
 
口語訳(こうごやく)聖書
日本聖書協会

(ささくら修道会公式図書)
口語訳聖書は、人名、地名が単純で、日本人にとって分かりやすく表現されています。文章も整っています。

テオピロ閣下とルカの関係
テオピロ(匿名で、実は百卒長)は、ルカ(実は百卒長の僕)の主人でした。奴隷が自分のご主人を呼ぶ場合、どのような尊称や敬称を使うでしょうか。主人はローマ帝国の軍人でもありますから、「閣下よ」は簡潔にして、明瞭、これで十分よろしいということになります。口語訳が一番的を射た日本語だと思われます。

このテオピロの実名は最終章24章で明かされていました。クレオパです。最終章は、「ユダの山里の町」とテオピロの実名を明かしていたのです、エマオとクレオパです。2024/12/16

「ルカによる福音書」24章
24-17イエスは彼らに言われた、「歩きながら互いに語り合っているその話は、なんのことなのか」。彼らは悲しそうな顔をして立ちどまった。24-18そのひとりのクレオパという者が、答えて言った、「あなたはエルサレムに泊まっていながら、あなただけが、この都でこのごろ起ったことをご存じないのですか」。
 
しかし、同じくルカの書いた、二巻目の「使徒行伝」では、これが「テオピロよ」に変わるのです。「異邦人による聖書の物語」、一巻目と二巻目の間には、ふたりの感動的なドラマが隠されていました。

すなわち、マリヤさまをローマに招聘(しょうへい)し、「川向こうの地」で集会を開き、「狂気という罪のあがない」のための「苦杯と十字架」を話していただくのです。クレオパは「パンとサーカス」のローマ市民ではなく、庶民や奴隷たちにこそ、マリヤさまのお話は心に染(し)みとおると考えているのです。「暗き谷」に住む彼らに福音の光が照るようにと。2024/12/17

4世紀に聖書の成立してから、巻物になる過程で、「ルカによる福音書」の一部が「使徒行伝」に移っています。
 
聖書
「らい病」バージョン
日本聖書協会
 
 
フェデリコ・バルバロ聖書
講談社

(ささくら修道会公式図書)
 
 
「テオフィロ」は、カトリックの信者には、なじみの人名なのでしょう。他の人名、地名もそうでしょう。 注釈が多数載っているので、口語訳聖書の副読本としても参考になります。

この聖書(カトリック聖書)は、口語訳聖書(プロテスタント聖書)よりも8文書多く収録されています。

マリヤさまとイエスさまの時代より少し前までは、「ハスモン家」という家門の大祭司の統治下でユダヤは独立を保っていました。「マカバイの書上」を読めば、その背景がわかります。
 
バルバロ訳聖書(旧約)差分
 
 
 
「HOLY BIBLE」
King James Version

(ささくら修道会公式図書)
 
英語版「口語訳」聖書

1982年3月新婚旅行のグアムのとある書店で購入したものです。

本の箱には、「HOLY BIBLE」 King James Versionと書いてありました。度量衡や貨幣の換算で、口語訳聖書の単位では参照できないときに役立つことがあります。「斗」→「ガロン」→「リットル」などです。

福音はGood Newsではなく、THE GSPELと記されていることに今気付きました。(2012/11/3)
 
 
 
ドイツ語聖書
 
この本は、1987年2月に、東ドイツ(鋳物工場建設現場出張)からの帰路、西ベルリンのKDW(カーデーべー)デパートの書籍売り場で購入したものです。 
 
 
 
日本聖書協会 共同訳聖書
 
「共同訳」と書かれていると、カトリック教会とプロテスタント教会との共同作業による聖書と錯覚してしまいます。しかし、この聖書にカトリック教会がかかわっていることはないでしょう。

この聖書は、教会とは何の関係も無い、無信仰の学者やその手の者たちによって、つくられたものでしょう。彼らには、宣教という実務が眼中にありません。言葉を乱し、それによる混乱も意に介さないようです。


「創世記」11章
11-5時に主は下って、人の子たちの建てる町と塔とを見て、11-6言われた、「民は一つで、みな同じ言葉である。彼らはすでにこの事をしはじめた。彼らがしようとする事は、もはや何事もとどめ得ないであろう。11-7さあ、われわれは下って行って、そこで彼らの言葉を乱し、互に言葉が通じないようにしよう」。
 
 
日本聖書協会 共同訳聖書
 
共同訳聖書の「テオフィロス」が、この共同訳聖書では、「テオフィロ」と書かれています。新共同訳の新は、カトリックとプロテスタントの用語を統一したが、不評だったのか、もう一度見直したということでしょう。

こころなしか「ルカス」→「ルカ」のように「ス」が少なくなっています。

この調子で行くと、また見直されて、新・新共同訳が出版されます。


これももう古いかも、
あいた口がふさがりません。
 
 
 
絵解き聖書
 
1982年3月新婚旅行のグアムのとある書店で購入したものです。

マリヤが、天使の言った「妊娠六ヵ月」を確かめに、エリザベツに会いに行く様子が描かれています。マリヤ一人で、ちょっとそこまで、といった服装ですが、マリヤのナザレ村とエリザベツのユダの山里とは130km以上の距離があります。途中、悪路があり、治安も悪く、若い女一人では行けない所です。

おめでたいエリザベツの妊娠が、六ヵ月もの間、親戚のマリヤに届かなかったのは、二人の家が相当離れていたためと考えられます。そしてそれは、行ってすぐ帰る、ということができないことも示します。


新約聖書の地図と関連資料
(ナザレ村とユダの山里の距離)
 
 
 
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