(1)(2)(2)ダビデ王国とバビロン捕囚

１．ヘブル人の王、ダビデ その後、人々は、預言者サムエルに王を要求した。サムエルは、王は民を搾取すると説き、考え直すよう民に語ったが、民は王がほしいと言い張った。サウルが興されたが、サウルとその子が戦死すると、ダビデが部族統合の王となった。その都はエルサレムに置かれた。エルサレムは天然の要害であった。かつて、サレムの王はアブラハムを祝福した。また、アブラハムがわが子イサクを犠牲に捧げようとしたのは、このエルサレムの山の大岩であった。後にそこにはソロモンが神殿を建てた。また、イスラムの時代には、岩のドームが建てられた。 ダビデの子ソロモンの代に至って、ダビデ王国は栄華を極めた。ソロモンは、武力ではなく他国の王女と重婚を重ね、平和を保った。しかし、軍備に劣らぬ莫大な結納費用は、徴税によってまかなわれた。ソロモンは老いて大奥の女たちの祖国の偶像崇拝を楽しんだ。王の死後、徴税に不満を持つ部族との間に不和が起こり、ダビデ王国は二つに分裂した。 ２．王国が二つに分裂 ダビデ王国から離脱したのは北側の十部族であり、国名を「イスラエル」とした。王国に残った南側のニ部族は「ユダ」を名乗った。北王国はサマリヤの山に第二のエルサレムを建設し、偶像崇拝を国是とした。離脱した国民がエホバとエルサレムを慕わないようにしたのである。 南は縮小したがダビデ王国であり、血筋は継承された。北は下克上（げこくじょう）が頻発して、王の正統は続かなかった。北と南は相争（あいあらそ）ったが、アッスリヤが興ってまず北が滅ぼされた。その後、百五十年を経て、南がバビロンに滅ぼされた。この時、貴族や工芸に巧みな者たちが、大量にバビロンに引いていかれた。バビロン捕囚（ほしゅう）である。王族の中で、バビロン王室の気に入られた者が、侍従（じじゅう）や官僚に登用された。バビロンの公用語であった「アラム語」を身につけた彼らは、王の図書館でさまざまな文献を読むことができた。 それまでは、ヘブルびとの伝説伝承は口述しかなかったが、アラム語習得により、その語彙（ごい）とバビロンの知識が新たな宗教伝説を生み出す土壌となった。 旧約聖書「サムエル記上」 旧約聖書「サムエル記下」 旧約聖書「列王紀上」 旧約聖書「列王紀下」 ３．ユダヤ人誕生 そのバビロンもペルシャに移行した。バビロン捕囚から八十年たって、ペルシャ王は彼らに恩赦を与え、エルサレムへの帰還を許した。彼らは、現地では「ユダヤ人」と呼ばれていた。彼らは、ユダ族とベニヤミン族の子孫であったからである。 新約聖書「使徒行伝」「ピリピ人への手紙」で、パウロがこのように「ベニヤミン族」を強調するセリフがある。パウロには、自分が純粋なユダヤ人（最初の二部族）という誇りがあった。 「ピリピ人への手紙」 3-3神の霊によって礼拝をし、キリスト・イエスを誇りとし、肉を頼みとしないわたしたちこそ、割礼の者である。3-4もとより、肉の頼みなら、わたしにも無くはない。もし、だれかほかの人が肉を頼みとしていると言うなら、わたしはそれをもっと頼みとしている。3-5わたしは八日目に割礼を受けた者、イスラエルの民族に属する者、ベニヤミン族の出身、ヘブル人の中のヘブル人、律法の上ではパリサイ人、3-6熱心の点では教会の迫害者、律法の義については落ち度のない者である。3-7しかし、わたしにとって益であったこれらのものを、キリストのゆえに損と思うようになった。 ４．律法書の編纂「旧約聖書」の初め バビロン政府は、ユダヤ人に律法を作成させ、それに基づく自治を許した。これが「書かれた物」の雛形（ひながた）である。これに、ヘブルびとの伝承、バビロン神話などが融合して、創世記の冒頭を飾る。ユダヤ人は、南王国の関係者であり、ユダ族とベニヤミン族のニ部族であったが、律法の改編過程で、ユダヤ人は十二部族でなければ不都合であることに気づき、他の離散している部族にユダヤ人への編入を呼びかけた。こうして、ユダヤ人は十二部族に戻った。 ５．「旧約聖書」の帰還時代 旧約聖書「ネヘミヤ記」 旧約聖書「エズラ記」 旧約聖書「ゼカリヤ書」 旧約聖書「ハガイ書」 ６．「サマリヤびと」の蔑称（べっしょう） しかし、なかには、ユダヤ人の条件、「礼拝場所は唯一エルサレムの神殿」という強制に拒否反応を起こし、ユダヤ人への編入を拒絶した人々もいた。彼らは、先祖の崇拝対象であったサマリヤの山を信仰対象とすることに固執した。ユダヤ人は彼らを「サマリヤ人（びと）」と呼んで、軽蔑した。これが「福音書」にもその名が書かれた「サマリヤ人」である。だから、西暦７０年にエルサレムが陥落してからは、「サマリヤびと」の呼称は意味を持たなくなった。

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(1)(2)(3)ギリシャ化運動への抵抗

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