２４章「眩耀（げんよう）」

ファリア司祭の宝は現実にあった。このスパダの財宝の唯一の相続者はファリア司祭だったのであり、その第二の父が自分を唯一の相続人にしたのだった。「安心されるがいい。これらの宝はすべてダンテス君、君のものなのだ！」。

目次

２４（１）どこからか見られている　2-24-1-26彼は急ぎ足に、しかもじゅうぶん注意をしながらおりて行った。7彼は、さっき巧みに効果あるお芝居としてやってのけたことが、今度は事実として起こることを警戒していた。前にも言ったように、ダンテスは、岩々の上に残された目じるしと逆のほうへ向かって進んで行った。

２４（２）入口をふさぐ岩　2-24-2-28火縄に火をつけると、ダンテスは遠のいた。ほどなく爆発が起こった。上の岩は、はかり知れない力で、一瞬にして押しあげられ、下の岩はみじんに砕けた。彼が最初に作った小さな入口からは、無数の虫がおののき逃れた。そして、このふしぎな路の番人とでもいったような大きな蛇）が一匹、青光のする腹をくねらせて、どこかへ姿をかくして行った。

２４（３）闇の降り階段　2-24-3-30《だが、もし彼がやってきたとすれば、》とダンテスはつづけた。《彼は宝を見つけてそれを取って行ったにちがいない。イタリーを朝鮮薊（ちょうせん・あざみ）にたとえ、それを一枚ずつ食っていったボルジアのことだ、岩をわざわざ元の土台の上に据えるためにむだに時間を費やすようなことはしなかったにちがいない。なにしろおりてみよう》。

２４（４）ここが怪しい　2-24-4-26彼は、ふたたび前よりも力をこめて叩いてみた。するとふしぎなことが目にとまった。それは、叩くにつれて、ちょうど壁画を描くとき壁に塗る塗料といったものが、盛りあがってきたかと思うと、鱗状をなして剥落し、その下に普通の切石のような白ちゃけた軟らかい石を見せはじめたことだった。

２４（５）木の箱で鉄のたが　2-24-5-26掘ることニ尺、これがダンテスにとって、絶大の歓喜か絶大の失望か、そのいずれかの分かれ目だった。彼は片隅に進んで行った。そして、たちまち決心したといったように、大胆に堀りにかかった。五六回にして、鶴はしは、鉄に掘りあてた響きをたてた。

２４（６）スパダの紋章輝く　2-24-6-32さて第三の仕切りには、その半ばを埋めつくして、手に溢れるほどのダイヤモンド、真珠、紅玉があった。それは輝きわたる滝をなしてざらざらこぼれ落ちながら、まるでガラス窓にあたる霰のような音をたてた。

２４（７）億万長者の現実　2-24-7-22そこには、各々ニリーブルから三リーブルもあろうという黄金の地金が千個あった。それから、今日の貨幣にして各々二十五フランもする金貨、すべてアレクサンドル六世や先祖達の肖像のついた金貨が二万五千も積み重ねられていた。だが、仕切りは、まだわずかにその半分だけが空になったばかりだった。両手に十ぱいほどの真珠や、宝石や、ダイヤモンドなどを量り得たが、それらの多くは、当時のすぐれた貴金属職人の手によって細工され、その実質上の価値を別にしても、なおすばらしい細工品としての価値をもっていた。

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眩耀（げんよう）：まばゆいばかりに光りかがやくこと。まぶしくて目がくらむこと。また、目をくらますこと。

引用者：2016/8/(7-24）　（笹倉宗）聖母マリヤ福音教会
通称「オリジナル教会」　初代代表者　笹倉正義
ささくら修道会・必読書