２５章「見知(みし)らぬ男」

ダンテスは1４年ぶりに故郷のマルセイユに帰った。そして、カドルッスの居場所の情報を得た。これがダングラール、フェルナン、メルセデス、ビルフォール、メルセデス、モレル氏らに関する最初の手がかりになればよいのだが。だが、そう簡単には口をわるまい。

目次

２５（１）ジャコポを信頼　2-25-1-32翌日、彼は真新らしい一艘の船を買って、ジャコポに与えた。そのうえ、乗組員を雇うためといって、さらに百ピアストルの金を与えた。そして、その条件として、マルセイユへ行って、アレ・ド・メランに住んでいるルイ・ダンテスという老人と、カタロニヤ村に住んでいたメルセデスと呼ばれる少女の消息を聞いてきてほしいとたのんだ。

２５（２）自前のヨット　2-25-2-12ダンテスはジュノワへ行った。彼がそこへ着いたとき、ちょうどあるイギリス人の注文による小さなヨットの試乗がなされていた。そのイギリス人は、ジェノワ人が地中海きっての船大工であることを伝え聞いて、ジェノワ製のヨットを一艘手に入れようとしたのだった。イギリス人は、四万フラン出そうという契約をしていた。ダンテスは、船を即日引き渡すなら、六万フラン出そうと言った。

２５（３）二つの消息の悲しき　2-25-3-26彼は父の死については予測していた。だが、いったいメルセデスはどうなったのか。自分の秘密を明かさずには、じゅうぶんな材料を警官に与えるわけにいかなかった。他に知りたいと思うこともいくつかあった。そのためにも、彼としては自分ひとりを頼りにするより道がなかった。

２５（４）十五年目の帰省　2-25-4-25ノワイユ町のはずれまできて、アレ・ド・メランを望み見たとき、彼はまさに膝が崩れそうな気持になった。そして、危うく馬車の轍にふれさえしかけた。やがて彼は、前に父の住んでいた家まできた。かつて、父の手が丹精にその格子を編んでいたあの屋根裏の部屋のあたりには、もう『おはぐろ』花や金蓮花も見られなかった。

２５（５）カドルッスの消息　2-25-5-11二人は、後にさがって、思いのままに泣かせてやった。そして、帰ろうとする彼を見送りながら、来たいときにはいつでもきてくれるよう、いつでも喜んでこの貧しい住居に迎えようと言ってくれた。一階下までおりて行きながら、ダンテスは、も一つの戸口に立ち止まり、そこに、昔のまま仕立屋のカドルッスが住んでいるかどうかをたずねた。ところが門番の答えたところによると、彼は仕事に失敗して、いまはベルガルドからボーケールへ通う街道のほとりに、ささやかな旅籠屋を出しているということだった。

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引用者：2016/5/9、8/(24−26)　（笹倉宗）聖母マリヤ福音教会
通称「オリジナル教会」　初代代表者　笹倉正義
ささくら修道会・必読書