８章「シャトー・ディフ」

マルセイユの目と鼻の先にある孤島にイフ城がある。それは政治犯を収容する監獄である。ダンテスは、そのイフの城に収監された。ダンテスに納得できるはずがない。

目次

８（１）深夜の護送　1-8-1-24夜の十時とおぼしいころ、すでにダンテスが希望を失いかけていたとき、また別の物音が聞こえてきた。今度こそは自分の室へ向かってくるもののようだった。案にたがわず、足音は廊下に響きわたり、彼の戸口のところで止まった。

８（２）動く牢獄　1-8-2-65船は路（みち）をつづけていた。だが、囚人は、船のことなどすっかり忘れて、メルセデスのことだけを思っていた。地形の変化から、その灯も見えなくなってしまった。ダンテスはふり返って、船がもう沖合（おきあいに出ていることに気がついた。彼が、夢中になって考えふけりながらながめていたあいだに、櫂は帆に取り換えられていた。船はいま、風に送られて走っていた。

８（３）眼前のイフ城　1-8-3-63「よし！」。憲兵は、片膝を彼の胸の上に押しあてながら叫んだ。4「よし！船乗りの約束というのはそんなものか。さあちょっとでもお体を動かしてみろ、ちょっとでもだ。一発、頭にお見舞い申すぞ。一度は命令を破りもした。だが、はっきり言うが、二度と破りはしないからな」。

８（４）孤島の牢獄　1-8-4-38「これが今夜（こんや）のお前さんの室だよ」と、男は言った。「もう遅いからな、典獄さまはおやすみになった。あした、お目覚めになって、お前さんいついての報告を御覧になったうえで、たぶん室変えがあるだろう。それまでのあいだ、ほら、ここにパンと、その壺のなかには水があるし、寝藁はあそこの隅にある。懲役人のためにはこれだけだ。ではおやすみ」。

８（５）断腸の後悔　1-8-5-28とりわけ一つの考えが彼に『じだんだ』をふませた。それは、船にいたとき、どこへつれて行かれるとも知らないままに、あんなにしずかに、あんなにおとなしくしていたときに、もし海へ飛びこもうと思いさえしたら、いくらも機会があっただろうということだった。

８（６）無理な相談　1-8-6-25「食物を持ってこないんだったら、飢え死にしてやるばかりだから」。こうしたダンテスの言葉の調子から考えて、獄丁はダンテスが喜んで死にかねないことを見てとった。そして『そろばん』ずくから、囚人一人が獄丁にとって日（ひ）に十スー（５０円Ｘ１０＝５００円）ほどの収入になることを思った彼は、ダンテスの死ぬことによって生ずる損害のことを考えた。

８（７）気違いは暗牢へ　1-8-7-39頭は『だらり』と垂れ、目は血ばしって、まるでほんとに気違いになりでもしたようだった。獄丁は出て行った。そしてしばらくすると四人の兵士と一人の伍長を連れて帰ってきた。「典獄の命により、囚人をさらに一階下におろす」と、獄丁が言った。「では暗牢へ？」と、伍長が言った。「暗牢へ。気違いは気違いどうしだ」。

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引用者：2016/6/12-13　（笹倉宗）聖母マリヤ福音教会
通称「オリジナル教会」　初代代表者　笹倉正義
ささくら修道会