５章「婚約(こんやく)披露(ひろう)」

陰謀が成立したラ・レゼルブ亭で、許婚披露の宴が張られ、数時間後にはエドモンとメルセデスの結婚が受理される運びになっていた。しかし、その喜びの絶頂にあったその時に、エドモンは逮捕され、連れて行かれた。陰謀の首謀者の一人のフェルナンは再び娘の手をとり、もう一人のダングラールは船長代理になった。傍観者となったカドルッスは、主の御心に反することを思いながらも、身の保全のために沈黙を決め込んだ。

目次

５（１）ラ・レゼルブ亭　1-5-1-35ダングラールはフェルナンのそばへよると、この気抜けのしたような色男）をじっと見つめた。フェルナンは、二人の許婚者のうしろから歩いていたが、若くうれしい恋ごころの利己心から、エドモンのことだけしか目にははいらないメルセデスに、すっかり閑却されたかたちだった。フェルナンは、青白い顔色をして、思い出したように赤くなりながら、それからまた前より一そう青ざめた青を見せていた。

５（２）婚姻手続完了　1-5-2-56「契約書は『ちゃん』とできています。メルセデスには財産がなし、わたしにしたってないんですから！つまり夫婦共通財産制というわけでの結婚なんです。で、このとおり！書き上げるのに大して手間もかからなかったし、したがって手数料も安くてすむというわけです」。

５（３）その筋の者です　1-5-3-42と、ほとんど同時に、低い物音が階段に響き渡った。重い足音、武器の触れあう音にまじった『ざわめき』の声を聞きつけた客人たちは、今までずいぶん大きな声でさわいでいたにもかかわらず、はっと一せいに耳をすました。そして一座は、たちまち不安な沈黙に沈んだ。物音は近づいてきた。

５（４）あなたを逮捕する　1-5-4-31「これはいったいどうしたわけだ？」。カドルッスは、眉をひそめながら、驚いたふうをしているダングラールに問いかけた。「おれの知ったことかい？」と、ダングラールが言った。「おれもお前と変わりはないさ。こんなことが振って湧いたりして、何が何だかわからずにいるんだ。呆（あき）れているんだ」。カドルッスは、目でフェルナンの姿を求めた。だが、早くも彼は姿を消していた。

５（５）希望を持つんだ！　1-5-5-63「諸君！」。欄干の上で見張りをしていた客の一人がこう叫んだ。「諸君、馬車だぞ！ああ、モレルさんだ、元気を出すんだ、元気を出すんだ！きっと吉報を持ってきてくだすったにちがいない」。

５（６）ボナパルト党員の嫌疑　1-5-6-39みんなも、いよいよ引きあげることになった。フェルナンは、ふたたび娘の手に頼られることになり、彼女の手をとってカタロニヤ村へ連れて帰った。ダンテスの友だちたちは、もうほとんど気を失っている老人を、メイランの小径づたいに連れて帰った。

５（７）ダングラール船長殿　1-5-7-33「それはあとから知らせよう。ビルフォールさんにお話して、ダンテスのためによろしく取りはからっていただくつもりだ。あの人は『こり』かたまった王党だ。だが、かまうものかね！王党にしたって、それに王さまの検事代理であったにしたって、人間であることにかわりはない。悪い人ではないと思うよ」。

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引用者：2016/6/4-5　（笹倉宗）聖母マリヤ福音教会
通称「オリジナル教会」　初代代表者　笹倉正義