１１章「コルシカの鬼」

三日で王宮に駆けつけたビルフォールの情報のあった直後、王は警視総監のテレグラフの情報を受け取った。ナポレオンがエルバ島を抜け出し、フランスに上陸し、パリに向かって進んでいるというのだ。ビルフォールのもたらした懸念が、まさに現実となったのだった。こうして、ビルフォールはその野心の最初の足がかりをつかんだ。しかし、彼の試練は続いていく。

目次

１１（１）皇帝フランスに再上陸　1-11-1-14「総監」と、ルイ十八世は言った。「命令する。話したまえ」。「陛下、申し上げます。ボナパルトは二月二十八日にエルバ島を抜け出して、三月一日に上陸いたしました」。「どこへ？」と王は気色ばんでたずねた。「フランスでございます。アンティブ附近、ジュアン湾の小さな港でございます」。

１１（２）彼はパリを目指して　1-11-2-25「ドーフィネはどうだ？」と、王はビルフォールにたずねた。「あれもプロバンス同様起ちあがらせることができると思うか？」。「陛下、残念ながら、不幸な事実を申しあげなければなりません。ドーフィネの人心は、プロバンス、ラングドックの人心とぜんぜん比較できません。あの山国の人民どもは、すべてボナパルト方でございます」。

１１（３）テレグラフの威力　1-11-3-7公文には、ただ彼が上陸した報知と、彼が取った道筋だけしか書いてなかったのでございます」。「だが、その公文は、どういうふうにして君の手もとにとどいたのだね？」と、王がたずねた。総監は頭をさげた。そして、額の上には、鮮やかに赤面の色が拡がった。「テレグラフによったのでございます」と、彼は口の中で答えた。

１１（４）王の感慨　1-11-4-44「よしよし」と、王は言った。そして、「そこで諸君、」と、ブラスカ氏と総監のほうを向き直りながら、「もう用がないから引きさがってくれてよろしい。これからは陸軍大臣の管轄なのだ」

１１（５）試練の連発　1-11-5-47「陛下、少なくともこの件につきましては、御満足のまいるようにいたそうと思っております」。「けっこう。たのしみにしている、男爵。これ以上君をお引き止めしない。ビルフォール君、長旅）でお疲れのことだろう、行ってやすみたまえ。ところで、君はたぶんお父さんのところに泊まるのだろうな？」。

１１（６）叙勲の栄誉　1-11-6-5「が、お父さんには会うだろう？」。「会わないつもりでございます」。「ああ、それがいいな」。ルイ十八世は、たびたびくり返した質問が、心あってなされたことを思わせるように微笑しながら言った。「君とノワルティエ君と、仲の悪かったことをすっかり忘れていた。これも王家のために払われた犠牲だ。わたしが賠償してあげなければなるまい」。

１１（７）宿の訪問者　1-11-7-31レジオン・ドヌール勲章をつけておいでになります」。「あれだ」と、ビルフォールは顔色を変えながらつぶやいた。「なんたるこった！」こう言いながら、いままで二度までもその人相の言われた当の本人が、戸口に姿をあらわした。「やかましいことだのう。父親を待たせるなんて、マルセイユでのならわしかな」。

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引用者：2016/6/8-　（笹倉宗）聖母マリヤ福音教会
通称「オリジナル教会」　初代代表者　笹倉正義
ささくら修道会