(16・1)三人の傭兵をつのり、五名で護送隊を襲撃するも未遂

「騎士グリュウとマノン・レスコーの物語」

第二部

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16-1-1最初に頭にうかんだのは、G・・・・・M・・・・・を足止めさせるために使ったあの近衛兵であった。16-1-2そして、きょうの午後を宿捜しするだけの心の余裕がなかったので、彼の部屋で一夜をすごすのは一挙両得だった。16-1-3彼はひとりで家にいた。16-1-4彼は私がシャトレーを出たのを見て喜んだ。16-1-5私のために進んで力添えを申出たので、私は今後してもらいたいことを説明した。16-1-6彼はそのことの困難をことごとく気づくだけの良識はそなえていたが、しかし一方、その困難にうちかつことを引受けてくれるだけの侠気の持主だった。 16-1-7私たちは夜の一部を費やして、この計画を練った。16-1-8彼は最近ある機会に使ったという三人の番卒のことをもち出したが、彼に言わせれば、試験ずみの三勇士だそうだった。16-1-9T・・・・・氏の確報によれば、マノンを引率するはずの巡査の数は六人にすぎなかった。16-1-10勇猛果断な男が五人もあれば、これらの腰抜けどもをおじけさせるには十分だった。16-1-11実際、あの手合いときたら、形勢不利と見るや、逃げるすきさえあれば、堂々と戦ったりしないことは確実だった。 16-1-12私は金に不足はしていなかったので、近衛兵はもの惜しみしないことを私に勧めて、私たちの襲撃の成功を確実にしようとした。16-1-13「わたしたちにはまず馬が必要ですよ」16-1-14彼は言った。6-1-15「それから、ピストルと、めいめいに騎兵銃が一丁ずつね。16-1-16この準備のほうは、あすのうちにわしがなんとかします。16-1-17それに、番卒のために平服が三着いりましょうな。16-1-18この種の事件にまさか連隊の服で出るというわけにもまいりますまいから」 16-1-19私はT・・・・・氏から受けた百ピストールを彼に手渡した。16-1-20その金も翌日は最後の一文まで使いはたされた。16-1-21三人の兵士は私の検閲を受けた。16-1-22私は彼らを気前のいい契約で勇気づけ、また、疑念を一掃するために、とりあえず、めいめいに十ピストールずつ贈った。16-1-23いよいよ決行の日が来たので、早朝に私は兵士のひとりをオピタルにやって、巡査どもが獲物を連れて出発する時刻をその目で直接に探らせた。 16-1-24私がこうまで慎重を期したのは、極度の不安と用心のためだったとはいえ、後になってわかったのだが、これは絶対に必要なことだった。16-1-25私は彼らの通り道についての情報には多少の誤りがあることは勘定に入れたいた。16-1-26そして、この不憫な一隊が乗船するのはラ・ロシェルの予定だと聞かされていたので、そのつもりで、もし彼らをオルレアン街道で待ち伏せしていたらば、私の努力も水泡に帰するところだった。16-1-27しかし、偵察にやった番卒の報告によって、一隊が通るのはノルマンジー街道であり、アメリカに向って出航するのは、ル・アーヴル・ド・グラースからであることを知ったのである。 16-1-28私たちはただちにサン・トノレ城門におもむいたが、途中、めいめいちがった通りを行くことにした。16-1-29私たちは城外の一隅で勢ぞろいした。16-1-30馬どもは張りきっていた。16-1-31やがて、六名の巡査と、二年前にあなたがパシーでごらんになった見るも哀れな二台の幌馬車が現れるまでに手間はかからなかった。16-1-32この光景に、私はもうすんでのことで体力と意識を失うところだった。 16-1-33「おお、運命の神よ」私は叫んだ。16-1-34「残酷な運命の神よ！16-1-35死が、勝利が、すくなくともそのいずれかをあたえてくれ」16-1-36私たちは攻撃のやり方についてしばらく協議した。16-1-37巡査どもは私たちから百歩とは離れていなかった。16-1-38そして、私たちは街道にとり巻かれている小さな畑を横切りさえすれば彼らを遮断することができた。16-1-39近衛兵の意見では、この方法によって、一挙におそいかかって、度胆をぬいてやろうというのだった。16-1-40私も彼の考えを良しとして、馬に拍車を入れたのでは私が第一番だった。16-1-41それだのに、運命の神は私の願いを無慈悲にもふみにじってしまった。 16-1-42巡査どもは五人の騎馬者が自分たちのほうへ駆けてくるのを見たとき、それが襲撃のためであることを疑わなかった。16-1-43彼らは相当に果断な態度で銃剣と小銃をかまえて防戦しようとした。16-1-44これを見て、近衛兵と私とはいよいよ鼓舞されたのに、三人の卑怯者どもはたちまちにして勇気をくじかれてしまった。16-1-45彼らは申合せたように、馬をとめると、何やらわけのわからぬ言葉をかわしていたが、馬の向きを変えたかと思うと、パリ目がけて一目散に走り去った。16-1-46「しまった！」近衛兵は言ったが、この卑怯な逃亡に私と同じくらい茫然としたらしかった。 16-1-47「どうします？われわれふたりきりですぜ」16-1-48私は怒りと驚きで声さえ出なかった。16-1-49私は馬をとめたが、まず私の復讐は、私を見捨てたあの卑怯者を追跡して、こらしめることではないかと思われた。16-1-50私は逃げていく彼らをながめやり、また、巡査どものいるほうに目をやった。16-1-51もし自分のからだを二つに分けることができるものなら、私は自分の怒りのこれら二つの対象物に向って、まったく同時に、おどりかかったことだろう。16-1-52つまり、両方をいっしょに撃滅したかったのだ。16-1-53近衛兵は、私の目に迷いの色を見て、決心がつきかねているのだと判断し、自分の意見を聞いてくれるようにと懇願した。 16-1-54「こっちはふたりきりなのに」彼は言った。16-1-55「相手は六人、それがわれわれ同様に武装して、あのとおり平然とかまえていますからね。16-1-56これを攻撃するのは気ちがい沙汰かもしれませんぜ。16-1-57いったんパリにもどって、剛の者どもをもっと上手に捜し出すようにすることですな。16-1-58巡査どもは、重い車が二台もあるんだから、一日にそうたくさんは行けませんよ。16-1-59あすは造作なく追いつけまさあ」

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オリジナル教会の権能：「あなたの思うがままに作成してよい」 ページ制作者　（ささくら宗）聖母マリヤ福音教会代表　笹倉正義 2020/6/20、21

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