(15・4)シャトレー監獄でのマノンの運命に戦慄の騎士

「騎士グリュウとマノン・レスコーの物語」

第二部

(15) 4/10

15-4-1「ぼくは自分をかわいそうだなんてちっとも思わんよ」私は言った。15-4-2「牢屋に幾月たたきこまれたっていっこう平気さ。15-4-3それにサン・ラザールよりシャトレーのほうがかえってましなくらいさ。15-4-4ただ、いとしいマノン、ぼくの気にかかるのはきみのことだよ。15-4-5きみのような美しい人に、これはまたなんという運命だろう！15-4-6神さま！あなたはご自分の最大の傑作をどうしてこんなに冷遇なさるんです！15-4-7ぼくたちふたりはどうして自分らの不仕合せに似合わしい身分に生れてこなかったのでしょう？15-4-8ぼくたちが生と共に受けたのは、機知と、趣味と、情操でした。15-4-9ああ！それをぼくたちはなんと悲しい使いものにしたことでしょう！15-4-10そのくせ、一方には、ぼくたちのような悲運にこそ見舞われてふさわしいような多くのいやしい者どもが、あのように幸運のあらゆる恵みを受けているのに！」15-4-11こうした思いは私の胸を苦痛で貫いた。 15-4-12しかし、この先どうなるだろうかという思いに比べれば、まだしももののかずではなかった。15-4-13なぜなら、私はマノンのことが心配でたまらなかったからだ。15-4-14彼女にはオピタル入りの前科がある。15-4-15で、たとえ正門から堂々と出所したところで、この種の二度目は、容易ならぬ危険になることを私は知っていた。15-4-16私は自分の心配を彼女にうちあけたくはあったが、そうかといって、あまり彼女をこわがらせたくもなかった。15-4-17私は彼女に危険を知らせることもできずに、ただ彼女を思ってふるえていた。15-4-18そして、せめて自分の恋で彼女を安心させようと思い、溜息をつきながら、彼女をかきいだくのであった。15-4-19なぜなら、今となってはこの恋のみが、彼女に表明できるほとんど唯一の感情だからだった。 15-4-20「マノン」と、私は彼女に言った。15-4-21「ほんとうのことを言ってくれないか、きみはぼくをいつまでも愛してくれるだろうか？」15-4-22彼女は私からそんなことを疑われて、とても寂しいと答えた。15-4-23「ああ、そうだったか」私は言った。15-4-24「ぼくはちっとも疑ってなんかいやしないよ。15-4-25ただ、ぼくはこの確信を得て、ぼくたちのあらゆる敵と戦いたいのだ。15-4-26ぼくは家名を利用してシャトレーから出してもらおう。15-4-27そして、ぼくが自由な身になって、さっそくきみをも引出すことができなかったとしたら、ぼくの命なんか犬にくれてやる」15-4-28私たちは監獄に着いた。 15-4-29私たちはめいめい別の場所に入れられた。15-4-30これはすでに覚悟のうえだったので、それほどつらくなかった。15-4-31私は門衛にマノンを紹介する際も、自分が多少なり身分のある人間であることを告げ、相当の報酬をすると約束した。15-4-32私は自分のいとしい恋人と別れる前に接吻し、あんまり悲しまないようにと頼んだ。15-4-33そして、私が生きているかぎりは何ひとつ心配することはないとも言った。15-4-34私は金を持っていないわけではなかったので、その一部を彼女にあたえた。15-4-35そして、その残金を門衛に前払いして、彼女と私のための一か月の優遇料とした。 15-4-36私の金はてきめんにきいた。15-4-37私は小ぎれいな家具つきの部屋に入れられた。15-4-38そして、マノンも同じような部屋だということだった。15-4-39さっそく、私は出所の方策に没頭した。15-4-40私の事件の中には絶対に罪になるようなもののないことは明白だった。15-4-41そして、たとえ私たちの窃盗の計画がマルセルの供述で証明されたとしても、単なる意思を罰することのできないことを私は十分承知していた。15-4-42私は父にさっそく手紙を書いて、自身でパリに来てもらうことにした。15-4-43先にも言ったように、シャトレーはサン・ラザールほど恥ずかしくはなかった。 15-4-44なるほど、私は父親という権威に対して今もって恐れの念をいだいてはいたが、年齢と経験が私の臆病を非常に減少させていた。15-4-45そこで私は手紙を書いた。15-4-46シャトレーでは、手紙を持ち出すのに困難ではなかった。15-4-47しかし、父は翌日パリに来る予定だったということをもしも私が知っていたとしたら、これはむだ骨だというものだった。

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オリジナル教会の権能：「あなたの思うがままに作成してよい」 ページ制作者　（ささくら宗）聖母マリヤ福音教会代表　笹倉正義 2020/6/20

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