(15・3)GM老人は巡査に二人をシャトレー牢獄に送るよう命じた

「騎士グリュウとマノン・レスコーの物語」

第二部

(15) 3/10

15-3-1これだけあばいてしまうと、老人は逆上しながら私たちの寝室へけたたましく上がってきた。15-3-2物も言わずにつぎの居間にはいり、造作なく金と宝石を見つけた。15-3-3彼は満面に朱をそそぎながら私たちのところへ来ると、それらの品を盗品と称して私たちに示し、聞くにたえない罵倒を浴びせかけた。 15-3-4マノンの鼻先に首飾りと腕輪をちらつかせたりした。15-3-5「これ、見おぼえがありましょうな」彼は嘲笑しながら言った。15-3-6「それにお目にかかるのははじめてではありますまいて、いや、まったく、これは同じ品物じゃ。15-3-7ねえ、べっぴんさん、これ、よっぽどあんたのお好みに合っているとみえるね。15-3-8どうだ、図星だろうが、おかわいそうな子ども衆さ！おふたりともほんとにかわいい顔しているけど、ちと、いたずらが過ぎるよ」15-3-9この罵詈雑言に私の心臓は怒りで張り裂けた。 15-3-10一瞬でも自由が得られたら、私はどんなことでもやったろう・・・・・。15-3-11ああ、正義の神よ、どうして私はやっつけなかったんでしょう！15-3-12ようやっと、私は自分をおさえつけて、おだやかに、といっても、激怒を和らげただけのことだが、彼に向って言った。15-3-13「ねえ、そんな失礼な嘲笑はよしましょう。15-3-14それよりか問題はどうなのです？15-3-15いったい、ぼくたちをどうしようというのです？」 15-3-16「問題はですな、騎士君」彼は言った。15-3-17「この足でシャトレー（訳注　古代パリの二つの城塞で、大シャトレーと小シャトレーがあったが、後、小シャトレーのほうは牢獄に使用されるようになった）へ行くことだよ。15-3-18おっつけ夜が明けて、あすになれば、事件ももっと明瞭になることだろう。15-3-19で、結局は倅の居所を教えていただくご親切にあずかることになろうね」 15-3-20私たちが一度でもシャトレーに入れられれば、どんな恐ろしい結果になるか、それはあまり考えてみなくてもすぐわかることだった。15-3-21私はそれから生ずるあらゆる危険を身ぶるいしながら予想した。15-3-22私は自分の誇りも捨てて、運命の威力に膝を屈し、残酷きわまる仇敵に媚び、屈服しなければ、何ものも得られないと知った。15-3-23そこで私はしばらく耳をかしてほしいと丁重な語調で言った。15-3-24「ぼく、悪かったと思います」私は言った。15-3-25「若気のいたりでとんだ過失を犯したことはぼくも認めます。15-3-26そして、あなたが憤慨なさっても無理ないほど、心証を害されたこともわかります。15-3-27ただ、もしあなたが恋の力というものをご存じなら、もしもひとりの不幸な青年が自分の愛するものの全部を奪われたときの悩みを理解してくださるならば、ぼくが小さな復讐をする喜びを求めたとて、おそらく無理ないことに思われるでしょう。15-3-28そうでなくとも、今ぼくの受けた恥辱によって、ぼくは十二分に罰せられたと判断なさることでしょう。15-3-29あなたのご子息の居所をぼくに言わすためには、牢獄も刑罰も必要ではありません。15-3-30ご子息の身は安全です。15-3-31ぼくの計画は彼を害することでも、あなたを怒らすことでもありませんでした。15-3-32もしぼくたちを自由にしてくださるご親切がおありなら、ご子息が静かに夜をすごしている場所をいつでもお教えしましょう」 15-3-33この極悪無道のじじいは、私の嘆願に感動するどころか、笑いながら、私に背を向けてしまった。15-3-34そして、私の計略は知りつくしていることを理解させるために、二言三言もらしただけだった。15-3-35彼の息子に関しては、私が暗殺しなかった以上、きっとどこかで見つかるだろうと、彼はしゃあしゃあとつけ加えた。15-3-36「この連中を小シャトレーへお願いします」彼は巡査に言った。 15-3-37「ことにやっこさんのほうを逃がさないようにね。15-3-38これは前にもサン・ラザールやぶりした前科者だからね」15-3-39彼は出ていった。15-3-40そして、その後の私は、あなたもご想像できるような状態だった。15-3-41「おお,神さま！」と私は叫んだ。15-3-42「あなたのお手からならば、私はどんな打撃でもおとなしく受けもしましょう。15-3-43しかし、あのあさましい無頼漢が私をこんなに虐待する権利を持っているなんて、これはいかにも無念なことです」 15-3-44巡査どもはもうこれ以上待つのが不平らしかった。15-3-45彼らは戸口に馬車を待たせておいたのだ。15-3-46私は階下におりるためにマノンへ手をかした。15-3-47「さあ、来るがいい、ぼくのマノン」私は言った。15-3-48「ぼくたちの苛酷な運命に服従しよう。15-3-49おそらくは神さまのおぼしめしでいつかはもっと幸福な日も来ることだろう」15-3-50私たちは同じ馬車で出発した。15-3-51彼女は私の腕に身を託した。15-3-52G・・・・・M・・・・・が来たそのときから、彼女は一度も口をあかなかったけれど、ふたりきりになると、こんな不運をまねいたのは自分のせいだと詫びながら、かずかずの優しい言葉を述べるのだった。15-3-53私は彼女から愛されているかぎりは、自分の運命をこぼしたりなんか絶対にしないつもりだと断言した。

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オリジナル教会の権能：「あなたの思うがままに作成してよい」 ページ制作者　（ささくら宗）聖母マリヤ福音教会代表　笹倉正義 2020/6/20

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