(15・2)GM老人の手際よい現状分析と事件全容の把握能力

「騎士グリュウとマノン・レスコーの物語」

第二部

(15) 2/10

15-2-1私は恥辱と苦悩で逆上し、返事もできなかった。15-2-2さまざまの思いが、しばしのあいだは、彼の頭の中を回転しているらしかったが、それらはたちまちにして彼の怒りに点火したものらしく、私に向って絶叫した。15-2-3「や！この青二才、きさまはうちの倅を殺したな」15-2-4この悪罵は私を激怒させた。15-2-5「この老いぼれの極悪人め！」私は、居丈高にどなりかえした。15-2-6「貴様の一族のだれかをやっつけるとしたら、きさまからはじめていたぞ」 15-2-7「こいつをしっかりとくくってくれたまえ」15-2-8彼は巡査に言った。15-2-9「こいつの口を割って、どうしても倅のようすを知らなきゃならん。15-2-10すぐにも白状しなかったら、あすにもつるしあげてもらおう」15-2-11「おれをつるしあげるんだって？15-2-12この恥知らずめ」15-2-13私はおっかぶせて言った。15-2-14「首つり台に用のあるのはおまえのようなやつだ。15-2-15いいか、おれの血統はおまえなんかよりずっと高貴で、純潔なんだぞ。15-2-16それは知っているともさ、おまえの倅がどうなったくらいはな。15-2-17そのうえ、まだぐずぐず言ったら、あすとは言わずに、あいつの首をしめくくってやるぞ。15-2-18そのあとがおまえの番だから、覚えていろ」 15-2-19私は不覚にも彼の息子の居所を知っていると言ってしまった。15-2-20しかし、この失言も私の極度の怒りがしからしめたのだ。15-2-21すぐ彼は戸口で待機していた五、六人の巡査を呼び、家じゅうの使用人たちをひとり残らず訊問するように依頼した。15-2-22「ふん、騎士君」彼は嘲弄的な口調で言った。15-2-23「あんたは倅の居所を知っているんだね。15-2-24そして、あれを絞め殺すんだね。15-2-25まあ、安心してくれたまえ、ちゃんと手をうってみせるから」15-2-26私はとんだ失言をしたとすぐに悟った。 15-2-27彼はマノンのそばに寄った。15-2-28彼女はベッドにすわって泣いていたのだ。15-2-29彼は慇懃な口調で、彼女が親子を手玉にとったことや、また、そのやり口の手ぎわよさを皮肉った。15-2-30この狒々じじいは、彼女といくらかでもねんごろになりたいようだった。15-2-31「彼女に指一本でもさわってみろ」私は叫んだ。15-2-32「いかにおれだってきさまの命を見のがすわけにはいかないぞ」15-2-33彼は出ていった。 15-2-34部屋に残した三人の巡査に頼んで、すぐ私たちに着物を着せさせた。15-2-35そのときの彼は私たちをどうするつもりでいたのか、私は知らなかった。15-2-36もし彼に息子の居所を教えたら、きっと私たちを自由にしてくれるかもしれない。15-2-37これが私のとるべき最上の方法ではないかと、私は着物を着ながら考えめぐらした。15-2-38そして、たとえ彼が私たちの寝室を出たときにはこの心構えであったにせよ、彼がふたたびもどってきたときには、その心構えも一変していた。15-2-39彼は先に巡査たちに命じて足止めさせておいたマノンの使用人たちを訊問しに行ったのである。 15-2-40その使用人たち、つまり、彼の息子がマノンにつけた者たちからは何ひとつ得られなかったが、マルセルが以前から私たちに仕えていることを知るにおよんで、いろいろのおどし文句で彼の口を割ろうとした。15-2-41彼は忠実ではあったが、単純で、鈍感な若者だった。5-2-42彼がオピタルからマノンを逃がしたことの記憶は、G・・・・・M・・・・・の恐喝といっしょになって、彼の弱い頭を刺激したので、絞首だの、車裂きだのの刑罰を想像させずにはおかなかった。15-2-43そこで彼は命さえ助けてもらえるなら知っていることは全部ぶちまけると約束した。 15-2-44こう言われてG・・・・・M・・・・・は、今度の事件には、これまで彼が考えていた以上に重大な、かつ、犯罪的な何かがあるのではないかと見てとった。15-2-45彼はもしマルセルが自白したらば、生命のみか、報酬まで提供すると言った。15-2-46この情けない男は、私たちの計画の一部を老人に話してしまったのである。15-2-47というのも、彼には今度の仕事に多少なり手伝ってもらわねばならなかったので、私たちは彼の前でも平気でその話をしていたからだった。15-2-48もとより、私たちがパリへ来てから計画を変更したことはぜんぜん知らなかったとはいえ、シャイヨーを出るとき、計画の筋と、自分の演ずべき役割はさずかっていたわけだった。15-2-49だから、彼は老人に言明したのである。15-2-50私たちの目的は彼の息子をだますことにあったと、マノンは一万フランをもらうはずであったと、あるいは、すでにもらったかもしれないと、そして、その一万フランは、私たちの計略にしたがえば、G・・・・・M・・・・・家の後継者にもどるようなことは絶対にあるまいと。

次へ

オリジナル教会の権能：「あなたの思うがままに作成してよい」 ページ制作者　（ささくら宗）聖母マリヤ福音教会代表　笹倉正義 2020/6/20

（ささくら修道会規約）当会の用いる聖書は、口語訳聖書、文語体聖書、バルバロ聖書差分の３つに限定する。これ以外の、聖書の引用は異端行為として厳禁される。日本語以外の聖書については、文語体聖書の内容に準じるものとする。異端文例（Today's English Version)世事に迎合した改編文章など異端以外の何ものでもない。（異端：=故意に対立すること）

ささくら修道会の指定聖書：「日本聖書協会　口語訳聖書」に準拠 新約聖書（１９５４年改訳） 旧約聖書（１９５５年改訳） バルバロ聖書（旧約差分）

いろいろ聖書　　ささくら宗の聖書

（修正履歴）