(15・1)情事のさなか息子を探すGM老人と二人の巡査が闖入(ちんにゅう)

「騎士グリュウとマノン・レスコーの物語」

第二部

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15-1-1私は彼女の願いを通してやることにしたが、さすがに、何か不吉な終局が待ったいるような気がして、ひそかな胸騒ぎを感ぜぬではなかった。15-1-2私はニ、三の近衛兵をあてにして家を出た。15-1-3これは以前レスコーが私の仲間に引き入れた者たちだったが、G・・・・・M・・・・・の食いとめ役になってもらうつもりだったのだ。 15-1-4家にいたのはその中のひとりだけだったが、山気のある男で、話もろくろく聞かないさきから、お安いご用だと引受けてくれた。15-1-5彼は三人の番兵を手下に使うことにしたのだが、その報酬としてたった十ピストールしか要求しなかった。15-1-6私は時間を空費しないように頼んだところ、彼は十五分たらずで連中をかり集めた。15-1-7私は彼の家で待っていたところ、部下を連れてもどってきたので、私は彼らを自分で引っぱっていって、G・・・・・M・・・・・がマノンの家に帰るには必ず通るはずの町角へ案内した。 15-1-8G・・・・・M・・・・・を虐待してはいけないとあいうことを、私はくれぐれも頼んだ。15-1-9ただ、彼が朝の七時までに逃げなければ私は安心していられるので、その程度にはきびしく監視してもらうことにした。15-1-10彼の計画では、G・・・・・M・・・・・を自分の部屋に連れこんで、着物をぬがせたうえで、自分の寝床に寝かせ、一方、自分は、三人の荒武者どもと、酒とカルタで夜を徹するつもりだということだった。15-1-11私はG・・・・・M・・・・・が現れるまで、彼らといっしょに待機していた。 15-1-12そして、世にも珍奇なこの場面を見物しようと思って、下手の、うす暗い場所へ、数歩後退した。15-1-13近衛兵はピストルを手にかざして彼に近よった。15-1-14そして言葉使いも丁重に、自分は彼の生命も金銭もねらっている者ではない、ただ、自分についてくることにすこしでも苦情を言ったり、声をたてたりしたならば、脳天に一発お見舞いするつもりでいると説明した。 15-1-15G・・・・・M・・・・・は、相手には三人の兵卒がついていることを知り、かつ、おそらくはピストルの押さえがこわくて、抵抗しなかった。15-1-16私は彼が羊のごとく引かれていくのを見やった。15-1-17私はその足でマノンのもとに引返した。15-1-18そして使用人たちの疑念を一掃するために、私は部屋へはいるや否や、夕食のために彼女はG・・・・・M・・・・・氏を待っている必要がなくなったこと、あいにくと用事ができて彼は引きとめられたこと、それで、私が彼から依頼されて、言いわけかたがた彼女のお相手をするために来たことを、彼女にれいれいしく告げ、このような麗人のかたわらにいるのは身にあまる光栄に思う、とまで言い足した。 15-1-19彼女は私のつくりごとにそつもなく調子をあわせた。15-1-20私たちは食卓についた。15-1-21従僕たちが給仕しているあいだだけは、いかにもしかつめらしいようすをしていた。15-1-22とうとう、彼らが席をはずすと、私たちは生涯で最良の一夜をすごしたのだった。15-1-23私はそっとマルセルを呼んで、辻馬車を捜させ、明朝の六時までに戸口へ来ているように手配させた。15-1-24私はマノンのもとを辞すると見せかけ、十二時ごろ、しかし、マルセルの手引きでこっそりともどってくると、G・・・・・M・・・・・のベッドを、ちょうど、彼のテーブルと同じ筆法で、いままさに占領しようとしていた。15-1-25このあいだに、われわれの悪霊がわれわれを　没落させようと活動していたのだった。15-1-26私たちが快楽の陶酔のさ中にあったとき、私たちの頭上には短剣がつるしてあったのだ。 15-1-27それをささえている糸がまさに切れようとしていたのだ。15-1-28しかし、私たちの破滅の事情をいっそうよく理解するためには、その原因を明らかにする必要があろう。15-1-29G・・・・・M・・・・・が、例の近衛兵につかまったとき、彼にはひとりの下僕がついていた。15-1-30この若者は、主人の遭難に肝をつぶして、一目散に逃げ去ったものの、主人を救おうとしてとった第一の手段は、G・・・・・M・・・・・老人に急を告げることだった。15-1-31このような珍事は老人をひどく驚かさないわけにはいかなかった。15-1-32彼にはこの息子ひとりしかなかったし、年齢に似合わずまだかくしゃくとしていた。 15-1-33彼がまずその下僕から知ろうとしたのは、彼の息子がその日の午後にどんなことをしたか、たとえば、だれかと喧嘩でもしたか、それとも、他人のいざこざに巻きこまれたか、どこかいかがわしい家にでもはいったか、ということだった。15-1-34下僕は主人が最悪の危険にあると思ったので、彼を救い出す手助けになることなら何ひとつ遠慮をする必要はないと考えて、主人のマノンに対する恋慕や、彼女に支払った出費や、きょうの午後から夜の九時ごろまで家にいたあいだの動静や、さてはその外出、帰途の遭難に至るまで、知るかぎりの事情を物語ったので、息子の事件は女の争奪であると、老人に推測させるにはこれで十分だった。 15-1-35時刻はすくなくとも十時半になっていたが、彼はすぐその足で警視総監のところへ駆けつけた。15-1-36そして、夜警隊の全員に非常命令を出すようにと依頼した。15-1-37そして、自分にもその一隊をつけてもらって、息子がつかまったという町の方角へ走り、息子がいそうな場所は市中くまなく捜しまわった。15-1-38しかし、その痕跡さえどこにも発見できなかったので、最後に息子の情婦のところへ案内させた。15-1-39ひょっとしたら息子が帰ってくるかもしれないと答えたからだった。 15-1-40老人が来たとき、ちょうど私は床につこうとしていた。15-1-41寝室のドアがしまっていたので、私には門をたたく音が聞えなかったのである。15-1-42ともかく、彼はふたりの巡査を連れて、はいってくると、息子の消息を家人にたずねてみたがわからなかったので、息子の情婦に会ったら、何か手がかりが得られるだろうと考えた。15-1-43ふたりの巡査を相変らず連れたまま、彼は二階まで上がってきた。15-1-44私たちが床につこうとしていたちょうどそのとき、彼はドアをあけた。 15-1-45彼を見ると私たちの血は一時に凍ってしまった。15-1-46「や！G・・・・・M・・・・・のじじいだ」私はマノンに言った。15-1-47私は剣にとびかかったが、運悪くバンドにからまってしまった。15-1-48私のこの動作を見て、ふたりの巡査はすかさずそばに来て、私から剣を取あげてしまった。15-1-49シャツ一枚の男が抵抗できるものではない。15-1-50彼らは私から防衛の手段をことごとく奪いとった。15-1-51G・・・・・M・・・・・は、この光景に面くらったとはいえ、私だと判断がつくのに手間をとらなかった。15-1-52マノンのほうを思い出すのはなおいっそう造作もなかった。 15-1-53「これは夢ではなかろうか？」彼はもったいぶって言った。「そこにいるのは騎士グリュウとマノン・レスコーではなかろうか？」

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オリジナル教会の権能：「あなたの思うがままに作成してよい」 ページ制作者　（ささくら宗）聖母マリヤ福音教会代表　笹倉正義 2020/6/20

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