(14・6)美少女からＧＭとマノンの経緯(いきさつ)を聞きだす騎士

「騎士グリュウとマノン・レスコーの物語」

第二部

(14) 6/8

14-6-1彼女の言うところによれば、彼女はG・・・・・M・・・・・氏をかなり以前から知っていたが、そのG・・・・・M・・・・・氏が、五時ごろ、人をよこして彼女を呼びにきた。14-6-2そこで、その使いの下僕について、大きな屋敷に連れていかれたが、G・・・・・M・・・・・氏は、ひとりのきれいな婦人とトランプをしている最中だった。14-6-3彼らはふたりして、私に渡すようにと一通の手紙を少女に託したが、なお、私の居所として、サン・タンドレ街のはずれに待っている馬車の中を教えた。 14-6-4彼らはそれ以外には何も言わなかったかと少女にたずねたところ、きっと私は彼女をお相手にすることだろう、というのが彼らの口ぶりであったと、少女は顔を赤くしながら言った。 14-6-5「おまえはだまされたのだ」私は言下に言い放った。14-6-6「かわいそうにおまえはだまされたのだ。14-6-7おまえは女だ。だから男が必要だろう。14-6-8しかし、おまえに必要な男は、金持で、幸福者でなければならない。14-6-9ここはお門ちがいだよ。14-6-10お帰り、さっさとお帰り、G・・・・・M・・・・・君のところへね。14-6-11あの男は世の美人どもに愛される資格を全部持っている。14-6-12いつでもくれてやるような家具つきの屋敷もあれば、供回りもある。14-6-13ところが、このおれときたら、ご提供できるのは、愛ばかり、誠実ばかり。14-6-14女どもは、おれの貧乏を軽蔑し、おれの一本気をなぶりものにする」 14-6-15そのほか、私はいろいろさまざまのことを言った。14-6-16心をかきみだす情熱が、あるいは弱まり、あるいは激するに従って、弱気のことも、乱暴なことも言った。14-6-17とはいえ、あまりにも心を痛めたあげく、私の興奮もしだいにさめて、多少の反省に移っていった。14-6-18私はこの目前の悲運を、これまですでにこうむった同じ種類の悲運に比較してみて、今度のが特に悲観すべきものとも思えなくなってきた。14-6-19マノンの性質は十分心得ている私として、当然予想すべきこの不幸をどうしてこんなに悲しむのだろう？14-6-20むしろ、どうして善後策を講じようとしないのだろう？14-6-21まだ時はある。14-6-22ほったらかしておいて、自分で自分の苦痛を大きくするようなばかなまねがしたくないなら、すくなくとも、自分の努力を惜しむべきではあるまい。14-6-23その点に関して、私は眼前に希望の道がひらけそうなあらゆる方法について考えはじめた。 14-6-24暴力で彼女をG・・・・・M・・・・・の手から奪いとろうとするのは、自分の損にはなっても、成功の見込みなどぜんぜんない、むちゃなやり方である。14-6-25しかし、ほんのわずかな時間でいいから彼女と話ができさえすれば、私が彼女の心から何ものかを獲得するのはまちがいないように思われる。14-6-26それほどまでに私は彼女から愛されているという自信はあった！14-6-27このかわいい娘をよこして、私をなぐさめようとした、この奇怪なやり方さえも、彼女の創意によるものであり、また、私の苦悶に同情しての結果であることを、私は賭けてもよかった。14-6-28私はなんとか工夫して、どうしても彼女に会うことにした。 14-6-29多くの方法を一つ一つ吟味した結果、到達した方法はこうだった。14-6-30T・・・・・氏は、はじめっからなみなみならぬ愛情をもって働いてくれた人だから、その誠実と熱意については疑う余地がない。14-6-31私はすぐにも彼の家へ行き、重大な用事ができたという口実で、G・・・・・M・・・・・を呼んでもらうことにした。14-6-32マノンに話すには三十分で事足りるはずだった。14-6-33私の計画は彼女のいるその部屋にはいっていくことだが、G・・・・・M・・・・・さえいなければ、それも造作ないことに思われた。 14-6-34こう決心がつくと、私はすっかり平静をとりもどし、またそばにいた少女にチップを奮発した。14-6-35そして、彼女をここへよこした者たちのもとへもどろうという気を起させないために、私は彼女の住所を書とめたりして、今夜、彼女のところへ寝にいくという希望を持たせておいた。14-6-36私は辻馬車に乗ると、T・・・・・氏のところへ車をいそがせた。14-6-37彼が在宅していたのは何よりも仕合せだった。14-6-38このことが、みちみち、心配でならなかったのだから。 14-6-39さっそく、私は自分の苦境と、彼への頼みごとを知らせた。14-6-40彼は、G・・・・・M・・・・・がマノンを誘惑したと知って、ひどく驚いた。14-6-41そして、私のこの不幸が自業自得であるとは知らないT・・・・・氏は、私の恋人救出のため、彼の友人全部をかり出して、その連中の腕と剣にものをいわせる覚悟だという親切ぶりを見せてくれた。 14-6-42そんなに騒ぎを大きくするのは、マノンにも私にも不利になるのではないかということを私は彼に了解させた。14-6-43「冷静にやりましょう」私は言った。14-6-44「そして、極端にはしらないことですよ。14-6-45ぼくはもっと穏便で、しかも、うまくいきそうな方法を考えているんです」

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オリジナル教会の権能：「あなたの思うがままに作成してよい」 ページ制作者　（ささくら宗）聖母マリヤ福音教会代表　笹倉正義 2020/6/19

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