(14・3)マノンの浅知恵に手紙で応答するＧＭ

「騎士グリュウとマノン・レスコーの物語」

第二部

(14) 3/8

14-3-1十一時ごろになって、私たちは彼の馬車が現れるのを見た。14-3-2彼は、自分の気ままから私たちと昼食をしに来たことを念入りに詫びた。14-3-3彼はT・・・・・氏を見てもべつに驚きはしなかった。14-3-4なにしろ、T・・・・・氏も同席することは前日約束したのだが、何かの用事にかこつけて、同じ車で来ないようにしたまでのことだったのだ。14-3-5私たちのうちひとりとて、心中に裏切りをいだいていないものはなかったわけだが、いとも信頼と友情にみちみちた雰囲気のうちに私たちは食卓についた。 14-3-6G・・・・・M・・・・・はおのれの思いをマノンに伝える機会を見いだすのに苦労しなかった。14-3-7私が邪魔者に思われるはずはなかった。14-3-8なぜなら、私はわざと数分だけ席をはずしたからだ。14-3-9ふたたび席にもどったとき、私は彼が手きびしくやられて、しょげかえっているようすのないのをすぐに見てとった。14-3-10彼はすこぶる上機嫌だった。14-3-11私もそう見せかけた。14-3-12彼は心中で私のお人よしを笑っていたろうし、私は私で彼のお人よしを笑っていた。14-3-13午後も、私たちふたりはたがいに愉快きわまる場面を演じあった。14-3-14帰る前も、私は彼がマノンとふたりきりで話せる一分間をつくってやった。 14-3-15きょうのご馳走くらいに、私の親切ぶりをも喜んでもらえるようにするためだった。14-3-16彼がT・・・・・氏と馬車に乗ったと見るや、マノンは両腕をひろげて私のほうへ駆けより、笑いころげながら抱いた。14-3-17彼女は相手の言った文句や申し出を、一言も変えずにくりかえして聞かせた。14-3-18これを要約すれば、彼は彼女を熱愛しているのであった。14-3-19彼は、父親の死後にはいってくる財産など勘定に入れなくても、すでに四万フランの年収を自由にすることができたので、それを彼女と共有したいと言うのであった。 14-3-20つまり、彼女は、彼の心臓と彼の財布の女主人になろうとしているわけだった。14-3-21そして、この恩恵の保証として、ひとりの料理人を彼女に提供する用意があるということだった。14-3-22「これはまたたいした息子だね」私はマノンに言った。14-3-23「おやじさんとはずいぶんちがってものわかりがいいじゃないかね。14-3-24正直なところ」と、私はつけ加えて言った。14-3-25「この提案できみの心はぐらつくんじゃないだろうか？」14-3-26「あら、あたしが？」と彼女は答えたが、自分の思いにラシーヌの二行を作りかえて、4-3-27「われに？きみはこのわれに、ふた心ありと疑いたもうや？14-3-28われに？いかでわれに、かの醜き顔に耐える力のありうるや？14-3-29それはつねにかのオピタルを思い出させる顔にあらずや？」 14-3-30「ちがうよ」と私は言い返し、この替え歌のあとを受けて、14-3-31奥方よ、われ思わざりし、オピタルが、14-3-32恋の天使のきみが胸に打ちこみし矢なりしとは」14-3-33「それにしてもだね、家具つきの邸宅、一台の馬車、三人の下僕ときちゃ、かなり人の気をそそる矢だね。14-3-34恋の天使だって、これほど強い矢を持っていないもの」 14-3-35彼女はこれに不服をとなえて、彼女の心は永久に私のものであり、そして、それは私の矢以外のどんな矢も受けつけないだろうと言明した。14-3-36「あの人の贈物はね」彼女は言った。14-3-37「恋の矢じゃなくて、逆に復讐の針になるのよ」 14-3-38私は彼女に屋敷や馬車ももらうつもりかとたずねてみた。14-3-39彼女はそれをもらうのもただ金がほしいからだと答えた。14-3-40つまり、一方だけを手に入れるということはむずかしかったからだ。14-3-41G・・・・・M・・・・・は、自分の意向を全部手紙に書いて説明してよこす約束だったので、私たちはそれを待つことにした。14-3-42はたして、その翌日、彼女はひとりの下僕からの手紙を受取った。14-3-43下僕の服装をしていなかったその男は、だれもいない席で彼女に話しかける機会を上手に獲得したわけだった。14-3-44彼女は返事をすこし待ってほしいと言ってから、すぐ私のところへ手紙を持ってきた。14-3-45私たちは、いっしょにそれを開封した。14-3-46そこにはおきまりの甘い言葉のほかに、私の恋がたきの約束がことこまかにしたためてあった。 14-3-47それによれば、彼はその出費を制限などしていなかった。14-3-48そして、屋敷が手にはいりしだい、一万フランだけ支払うとして、もしこの金額が減ってきたらば、いつでも現金でこれだけの額が目の前にあるように補充するという約束だった。14-3-49屋敷にはいれる日もそんなに引きのばしているわけではなく、設備のために二日間の猶予がほしいとのことであった。 14-3-50そして、町名と屋敷の名を示し、二日目の午後、もし私から逃げ出せたら、自分もそこで待っているので来てほしいと書いてあった。14-3-51彼女が私の手から逃げ出られるかどうかが唯一の心配だといって、しきりにこのことを懇願していた。14-3-52それ以外のことでは確信ありげだった。14-3-53しかし、と彼は付言して、もし私の手からぬけ出るのがむずかしいと思われた場合は、容易に逃げられる手を考えるつもりだとあった。

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オリジナル教会の権能：「あなたの思うがままに作成してよい」 ページ制作者　（ささくら宗）聖母マリヤ福音教会代表　笹倉正義 2020/6/18

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