(14・2)マノンの幼稚なGMへの復讐プランに抗しきれない騎士

「騎士グリュウとマノン・レスコーの物語」

第二部

(14) 2/8

14-2-1私はT・・・・・氏がこんな大役を買って出てくれたことに感謝した。14-2-2そして、私のほうからも信頼の情を見せて、マノンの性質は、G・・・・・M・・・・・氏の考えているとおりであること、つまり、彼女は貧乏という名前には我慢ができないということを告白した。 14-2-3「それにしても」と私は言った。14-2-4「財産の多寡だけの問題で、彼女が私を捨てて、ほかの男のところへ走っていこうなどとは思われません。14-2-5それに今ではぼくも彼女に何ひとつ不自由させない状態になっています。14-2-6ぼくの財産も日に日に増していっているつもりです。14-2-7ただ一つぼくの心配なのは」と私は付言した。 14-2-8「G・・・・・M・・・・・が私たちの家を知っているので、何か私たちにひどい仕返しをしないかということです」14-2-9それに対してT・・・・・氏は、それだけは心配無用であること、G・・・・・M・・・・・は、恋のために盲目になることはあっても、卑劣なことのできる男ではないこと、万一、彼がそんなまねでもしたら、かくいう自分がまず彼を罰して、こんな不祥事を起した償いをするつもりであることを保証してくれた。14-2-10「そのお気持ちはありがたい」私はふたたび言った。14-2-11「しかし、万一のことが起ってしまえば、取返しはつかないでしょう。14-2-12だから、いちばん賢明な方法は、彼の機先を制して、シャイヨーを去り、別に家を捜すことでしょう」14-2-13「それはそうかもしれませんがね」彼は言った。 14-2-14「しかし、急場の間には合いませんよ。14-2-15なぜって、G・・・・・M・・・・・は、正午にはここに来ることになっています。14-2-16きのう、そう私に言うものだから、彼の目的を知らせようと、こんなの朝っぱらからやって来たわけなんです。14-2-17そう言っているうちにも現われるかもしれませんよ」14-2-18話はこのように切迫しているだけに、私はこの事件をいっそう真剣な目で見るようになった。14-2-19G・・・・・M・・・・・の訪問を避けるのは不可能のように思われたし、また、彼がマノンに心中をうちあけるのを阻止するのもおそらくは不可能のように思われたので、この新しい恋がたきの意中を私自身から彼女の耳に前もって入れておくことにした。14-2-20彼が彼女になすであろう申し出を私が知っているのを彼女も知っており、しかも、私の面前でその申し出を受ける以上、彼女はそれをはねつけうるだけの気概を持つであろう、というのが私の想像するところであった。 14-2-21この考えをT・・・・・氏にうちあけたところ、それは非常に危険だと彼は答えた。14-2-22「それはぼくも認めます」私は言った。14-2-23「しかし、ぼくだって恋人の心を確実につかんでいる理由があるんですから、彼女の愛情をあてにしますよ。14-2-24彼女だって、よっぽど莫大な贈物ででもなければ眩惑なんかされませんからね。14-2-25それに、今も言ったように、欲ばりの女じゃないのです。14-2-26なるほど、気楽な生活は好きですが、ぼくをも愛しています。14-2-27しかも、今のような場合、彼女がぼくを捨てて、自分をオピタルに投げこんだ男の息子を選ぼうなどとはどうしても考えられません 」14-2-28これを一口に言えば、私は自分の決心を固執したのだ。14-2-29そして、マノンと別室に引っこむと、いま聞いたことをありのままうちあけた。14-2-30彼女は私からよく思われていることを感謝した。14-2-31そして、G・・・・・M・・・・・の申し出に対しては、彼が二度とそんな妄想を起さないようなぐあいにしかるべくあしらうことを約束した。14-2-32「それはいけない」私は言った。14-2-33「あいつに剣突くをくわして、怒らせてはだめだよ。14-2-34あいつのことだから、ぼくたちに何をするかわからんからね。14-2-35それよりか、きみのような手くだのうまい女のことだから」私は笑いながら付言した。14-2-36「不愉快な恋人や、不都合な恋人なら、上手にまく手は先刻ご承知だろうもの」 14-2-37彼女はちょっと考えたあとで、語をついだ。14-2-38「あ、うまいことを考えついた」彼女は叫んだ。14-2-39「あたし、発明の天才ね。14-2-40G・・・・・M・・・・・は、あたしたちの残酷な敵の息子でしょう。14-2-41だから、そのおやじさんに復讐してやるのよ、いいえ、息子にじゃなくて、あいつの財布によ。14-2-42あたし、息子の言うことを聞いて、贈物をちょうだいするつもりよ。14-2-43そして、鼻をあかしてやるわ」 14-2-44「着想はおもしろいがね」私は言った。14-2-45「しかし、きみにはわからんかなあ、それはぼくたちがまっすぐにオピタル送りになる、その道をつくるようなものだよ、きみはだめだなあ」14-2-46私はこの計画の危険を極力彼女に説いてもむだだった。14-2-47それにはやり方さえ上手にやればいいのだと言いはって、彼女は私のあらゆる異議に反対した。 14-2-48それにしても、自分の熱愛する恋人のどんな気まぐれにも応じないような男があったら、お目にかかりたいものである。14-2-49もしあったとしたら、私は自分の恋人の気まぐれにこれほどたわいなく負けてしまったことの非を認めるのに躊躇しないつもりだ。14-2-50こうしてG・・・・・M・・・・・をだまそうという決心はなされた。14-2-51そして、私の運命の奇妙なめぐりあわせで、私が彼にだまされることになったのだ。

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オリジナル教会の権能：「あなたの思うがままに作成してよい」 ページ制作者　（ささくら宗）聖母マリヤ福音教会代表　笹倉正義 2020/6/18

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