(14・1)T氏の友人、資産家の若殿GMがマノンに横恋慕の情報

「騎士グリュウとマノン・レスコーの物語」

第二部

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14-1-1天はその最も過酷な処罰で私を打つために、私の幸運が安定したと思われる時をいつも選んできたということは、全生涯を通じて私の経験したところだった。14-1-2私はT・・・・・氏の友情と、マノンの愛情によって自分を幸福だと思っていただけに、また何か新しい不幸を恐れなければならぬとは、とうてい考えられないことだった。 14-1-3ところが、私にはじつに忌わしい不幸が用意されていたのであって、あなたがパシーでごらんになったような状態にまで引きずりこまれ、やがては、私の物語をほんとうにはなさらないと思われるほどの極端な不幸につき落とされてしまうことになった。 14-1-4ある日、私たちがT・・・・・氏と晩餐を共にしていたとき、一台の馬車が宿の門前にとまる音がした。14-1-5こんなおそい時刻に来るのは何者だろうと、私たちは好奇心にかられて見とどけようとした14-1-6それは若いG・・・・・M・・・・・君だということがわかった。14-1-7つまり、私をサン・ラザールに、マノンをオピタルにぶちこんだ私たちの残忍な仇敵である、あの狒々じじいの息子だったのである。14-1-8彼の名前に私はかっとなった。 14-1-9「神さまのお引合せだ」私はT・・・・・氏に言った。14-1-10「あいつの卑怯な父親のかわりにあいつをこらしめてやらなければ、今度という今度はわれわれの剣にものを言わせてやるぞ」14-1-11T・・・・・氏は、彼とは知合いの仲であり、親友のひとりでさえあったので、どうかして彼に好感をいだかせようとした。14-1-12T・・・・・氏の断言するところによれば、彼は非常に愛すべき青年で、父親の行動にあずかることなどのできるような人間ではないので、この私にしたところで、会えばすぐ彼を尊重するようになるだろうし、また、彼からの尊重されたくなるだろうとのことだった。 14-1-13T・・・・・氏は、彼のために千言を費やしたあとで、彼をもここに呼んで同席させ、食事の後半を楽しいものにすることを承諾してほしいと言うのだった。14-1-14私たちの敵の息子にマノンの住所を教えるのは彼女を危険にさらすことになるという私の反対に答えて、もしも彼が私たちを知ったとすれば、私たちのこのうえもない親身な味方になることを、T・・・・・氏は名誉と信念にかけて私に予告したのだった。14-1-15私もこれほどまでに保証されたからには、もうそれ以上は異議をとなえなかった。 14-1-16T・・・・・氏は、私たちが何者であるかを彼に知らせるために一分間をつぶしたあとでなければ、さすがに彼を私たちの部屋に案内してこなかった。14-1-17その客人がはいってきたようすから見ると、なるほど、私たちに好感をいだかせるものがあった。14-1-18彼は私をいだいたのである。14-1-19私たちは席についた。14-1-20彼は、マノンを、私を、私たちに属するすべてのものを激賞し、そして、私たちの晩餐の面目がたつように、大いに食ってくれた。14-1-21食卓が片づけられると、会話は急にまじめになった。 14-1-22彼は父親が私たちに加えた暴力が話題になったときには目を伏せて、いかにも恭順そうにあやまった。14-1-23「もうそんな話はよしましょう」彼は言った。14-1-24「私の恥にしかならない、そんな思い出を新たにしたってつまりませんもの」14-1-25彼のあやまり方は最初からまじめなものであったが、話しているうち、いよいよ熱をおびてきた。14-1-26なぜなら、私たちの会話がものの三十分もたたないうちに、マノンの魅力が彼にどんな印象をあたえたかを私は見のがしはしなかったからだ。 14-1-27彼のまなざしや態度に感動がしだいに増してくるのがわかった。14-1-28といっても、彼はそれを談話の中でもらしたわけではなかったが、恋愛の経験をあまりにも積んできた私には、嫉妬心の手助けなど借りなくても、それが何から来ているかを見わけるくらい楽なことだった。14-1-29こうして彼は夜の一時を私たちとつきあった。14-1-30そして、別れしなには、私たちと知合いになったことを非常に幸福に思っていると言い、今後とも、何かとお役にたつため、ときどき遊びにくることを許してくれと懇願することも忘れなかった。14-1-31翌朝、彼はT・・・・・氏と同じ馬車で帰っていった。 14-1-32今も言ったように、私には嫉妬などというものは微塵もまかった。14-1-33マノンの誓いをも以前以上に信ずるようになっていた。14-1-34この美しい生きものは私の魂を完全に握っていたので、尊敬と愛情以外の気持などすこしもいだいたことはなかった。14-1-35彼女が若いG・・・・・M・・・・・の気に入ったことをとがめるどころか、彼女の魅力の効能を知って有頂天になったほどだった。14-1-36そして、世のだれもが美しいと認めるようなひとりの少女から愛されている自分が自慢でならなかった。14-1-37私はこの懸念を彼女に伝えるのは穏当でないと考えた。14-1-38その数日というもの、私たちは彼女の衣類を仕立てなおすことに没頭し、どうしたら人に見つかる心配なしにコメディ・フランセーズ座へ行けるかという評議で一日が暮れる有様だった。 14-1-39T・・・・・氏はその週のうちにまたやって来たので、私たちは芝居見物のことで彼に相談してみた。14-1-40マノンを喜ばすためには必要だと思ったらしく、彼は大丈夫だと言って、保証してくれた。14-1-41私たちはさっそく出かけることにした。14-1-41ところで、私たちはそれを実行することができなかった。14-1-42というのは、T・・・・・氏がすぐに私を別室に引っぱっていって、こう言ったのである。 14-1-43「ぼくはね、この前お別れしてから、とても困っているんですよ。14-1-44それで、きょう来たのもそのためなんですが、G・・・・・M・・・・・はね、あなたの恋人に恋をしているんです。14-1-45彼はぼくにそれをうちあけたんですよ。14-1-46ぼくは彼の親友ですから、彼のためならなんでもしてやるつもりでいるんですが、だといって、それに劣らずぼくはあなたの親友でもあるんですからね。14-1-47彼の考えをぼくは正しくないと思ったものですから、そのことはうんと非難してやりましたよ。14-1-48ところで、彼の秘密を守ってやってもよかったのですが、ただ困ったことに、彼の歓心の求め方が普通とちがっているのです。14-1-49つまり、彼はマノンの気質をちゃんと調べたんですね。 14-1-50どこから聞いたか、ともかく、彼女は贅沢と快楽が好きだということを知ったのです。14-1-51で、もうかなりの金を自由にすることのできる彼のことですから、私に公言したのですが、とりあえず、すばらしい贈り物と、年一万フランの仕送りで彼女を誘惑するというのです。14-1-52こういう種類のことで、彼を裏切るなんて、本来ならぼくだってできにくいことなんでしょうが、あなたのことを思うと、正義が友情に結びつかずにはいません。14-1-53G・・・・・M・・・・・をここへ引っぱってきたりして、ぼくは軽率にも彼の情欲の原因をつくったのですから、それだけに自分が起した不幸の結果を前もってお知らせする必要があったのです」

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オリジナル教会の権能：「あなたの思うがままに作成してよい」 ページ制作者　（ささくら宗）聖母マリヤ福音教会代表　笹倉正義 2020/6/18

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