２３章「モンテ・クリスト島」

自然なかたちでモンテクリスト島に上陸するという課題はふってわいたような幸運で解決できた。残る課題は、これまた自然な形で、ひとりだけで数日間島に残るということだった。そして、その探索のための鶴ハシや火薬といった道具も必要だった。

目次

２３（１）天空にも灯台の星灯　2-23-1-10だが、昼になって帰ってきてみると、それらの宝玉はすっかりあたりまえの石に変っていた。そこで彼は、そのふしぎな洞穴へも一度もどって行こうとした。ところが、道は無限に曲りくねっていて、もう入口がわからなくなっていた。彼は、疲れ果てた記憶のなかで、かつてアラビヤの漁夫のために壮麗なアリ・ババの洞を開いてくれたあのふしぎな言葉（『アラビヤン・ナイト』中の言葉、「胡麻よ開け」）を探し求めた。4だが、すべてはまったく徒労に帰した。

２３（２）洞穴なんか知らない　2-23-2-14あらゆる富を賭（か）けて争っている賭博者にしても、こうしていま、その望みの頂点に立っているダンテスの感じているほどな苦悩を、その賽の一擲にかけたものはないにちがいない。5夜がきた。午後十時に船は岸に近づいた。ジュヌ・アメリー号は、ここの会合に『い』の一番にやってきたのだった。

２３（３）罪は神にある　2-23-3-30こうして、『つい』三月前まで、ただ自由しか望んでいなかったダンテスは、いまその自由だけでは満足できず、富を望むようにさえなっていた。これはなにもダンテスの罪ではなかった。罪は神にある。神は人間の力に限界をつけておきながら、しかも無限の欲望を与え給うからなのだ！

２３（４）ダンテスが転落事故　2-23-4-21だがみんなの目が、まるで飛ぶようなダンテスの姿を追いながら、その身軽さの大胆すぎるのに眉をひそめていた折も折、さもみんなの懸念をもっともと思わせるように、ダンテスはたちまち足をふみ滑らした。彼は、とある岩の頂きでよろめいたと見るまに、叫び声をあげて姿を消した。

２３（５）喜んで残ってやる　2-23-5-22「だって、餓え死をしてしまうじゃないか」と、船長が言った。「むしろ、そのほうがけっこうです」と、ダンテスが答えた。「ちょっと体を動かしただけで、こんなにひどく痛むのですから」。船長は船のほうをふり返った、船は、小さな港のなかで、出帆準備に取りかかりながら身をゆすらせ、化粧さえ済めばすぐにも海へ乗り出せるといった風情を見せていた。

２３（６）おどろいたな　2-23-6-9一時間の後、船はまったく姿を消してしまっていた。少なくも彼がいるところからは、船を見ることができなかった。と、ダンテスは、その辺りの岩の上に生えているミルトやランティクスの間を跳びはねている仔山羊より身軽に、さらにしなやかに身を起こした。

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引用者：2016/7/22-31　（笹倉宗）聖母マリヤ福音教会
通称「オリジナル教会」　初代代表者　笹倉正義
ささくら修道会・必読書