２３（６）おどろいたな

2-23-6-1密輸入者たちは、ダンテスに思いどおりにさせることにした。2-23-6-2そして、幾度（いくど）かふり返りながら遠ざかって行った。2-23-6-3そして、振り返るたびに、親しみをこめた、あらゆる別れの合図（あいず）を送った。2-23-6-4そてにたいしてダンテスは、さも体のほかの部分が動かせないというかのように、手だけでそれに答えて見せた。 2-23-6-5やがてみんなの姿が見えなくなると、《おどろいたな、》と、笑いながらつぶやいた、2-23-6-6《友情の誠実（せいじつ）さとか犠牲的（ぎせいてき）行為（こうい）とかいったようなものが、かえってああした連中のなかに見出されるとは》。 2-23-6-7され彼は、用心（ようじん）しながら、いままでその目から海をかくしていた一つの岩の頂（いただ）きまで身をいざらせた。2-23-6-8そしてそこから、いまや準備を終った船が錨（いかり）を上げ、まさに飛び立とうとする鴎（かもめ）のように、しとやかに身をゆすりながら出帆（しゅっぱん）するのをながめていた。 2-23-6-9一時間の後（のち）、船はまったく姿を消してしまっていた。2-23-6-10少なくも彼がいるところからは、船を見ることができなかった。2-23-6-11と、ダンテスは、その辺（あた）りの岩の上に生（は）えているミルトやランティクスの間を跳（と）びはねている仔山羊（こやぎ）より身軽（みがる）に、さらにしなやかに身を起こした。 2-23-6-12そして片手（かたて）に銃（じゅう）を、片手に鶴ハシを握（にぎ）ると、岩石（がんせき）の上に見つけた目じるしがそこで行き留（と）まっている岩のほうへ走って行った。2-23-6-13「いまこそ、」と、彼は、ファリア司祭が話して聞かせたアラビヤの漁夫（ぎょふ）の物語（ものがたり）を思い出しながら叫んだ。2-23-6-14「さあ、胡麻（ごま）よ開け、だ！」。

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引用者：2016/7/31　（笹倉宗）聖母マリヤ福音教会
通称「オリジナル教会」　初代代表者　笹倉正義