(9・7)計画通りGM氏は寝室に、３人は遁走した

「騎士グリュウとマノン・レスコーの物語」

第一部

(9) 7/8

9-7-1助平じいさんは私が気に入ったらしかった。9-7-2私のほほをニ、三べん軽くたたいたりした。9-7-3私のことをきれいな若者だと言い、しかし、パリというところは若い者が堕落しやすいから気をつけなければいけないとも言った。 9-7-4レスコーは私が生れつき賢明であることを保証した。9-7-5そして、私の念願は司祭になることだし、私の楽しみといえば、ミサ用の礼拝用品をつくることだと力説した。9-7-6「なるほど、どこがマノンに似ているわい」と、老人は片手で私のあごをしゃくりあげながら、言った。 9-7-7私もばかづらをしながら、答えてやった。9-7-8「それは、旦那さん、ぼくたちのからだがぴったりくっついているからですよ。9-7-9だから、ぼくは姉さんのマノンを、もうひとりのぼく自身のように愛しているんです」9-7-10「きみ、あれを聞いたかね？」9-7-11老人はレスコーに言った。9-7-12「この子はなかなか機知があるわい。9-7-13こんな子が世間を知らないのは残念なことじゃ」 9-7-14「へえ、旦那さん」私は語をついだ。9-7-15「ぼくだって世間なら教会でいっぱい見ていまさあ。9-7-16そして、パリにだってぼくなんかよりは阿呆がいると思いまさあ」 9-7-17「ごらんよ」と老人は言った。9-7-18「田舎の小僧にしては大出来じゃないか」9-7-19食事中、私たちの会話は、大体こんな趣向でつづけられた。9-7-20剽軽もののマノンは、よくふきだすものだから、幾度ぶちこわしそうになったか知れなかった。9-7-21食事の最中、私はある機会をとらえて、いま老人はどんな立場にいるのか、また、どんな災難が降りかかろうとしているのかを話してやったものだ。 9-7-22私がこの話をしているあいだじゅう、レスコーとマノンははらはらしていた。9-7-23ことに私が老人の姿をありのままに描いてみせたときなどなおさらだった。9-7-24しかし、相手はうぬぼれが強いから、感づくようなことはあるまいとたかをくくっていた。9-7-25しかも、手ぎわよくやってのけたものだから、いちばん最初におもしろがったのはご当人だった。9-7-26なぜ私がこの滑稽な場面のことまでお話ししたか、いずれあなたにはおわかりになるでしょう。 9-7-27ついに床入りの時刻が來ると、老人の話しぶりは急にそわそわし、色っぽくなってきた。9-7-28レスコーと私のふたりは引きさがった。9-7-29案内が来て、老人は寝室に引きあげた。9-7-30そして、マノンは用事にかこつけて部屋を出、門口で私たちに合流した。9-7-31三、四軒ばかり下のほうで待っていた馬車は、私たちを迎えに近づいてきた。9-7-32私たちは一瞬にしてこの界隈を遠ざかった。 9-7-33この行為は、私自身の目から見ても、正真正銘の詐欺であったにせよ、自分の心を責めなければならないほど最悪の行為とは思えなかった。9-7-34むしろ、私は賭博でもうけた金のほうがよっぽど気にかかった。9-7-35それだのに、私たちはそのいずれからも益するところはなかったのである。9-7-36しかも、この二つの不正行為の軽いほうを、神さまはより重く罰せられるようにはかられたのである。

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オリジナル教会の権能：「あなたの思うがままに作成してよい」 ページ制作者　（ささくら宗）聖母マリヤ福音教会代表　笹倉正義 2020/6/15

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