「騎士グリュウとマノン・レスコーの物語」 |
第一部 |
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9-4-1私は感情の分裂状態にあった。9-4-2だから私は、レスコーがつぎつぎに浴びせかけてくる質問に答えもせず、なかなかやみそうもない不安の中にいた。9-4-3じつにこういう瞬間であった、名誉と徳行がいまなお私に悔恨の切っ先を感じさせるのは。9-4-4そして、アミアンのほうへ、父の家の方へ、サン・シュルビスのほうへ、私が無垢のうちに生活したあらゆる場所のほうへ、私が嘆きの目を向けるのは、どれほど広大な空間によって私はこのような幸福な境地から隔てられていたことだろう! 9-4-5今でも私の悔恨と祈念をまねきはするが、私の努力をそそるにはあまりにも弱い影として、もはや、私はあの境地を遠く望見するよりほかはなかった。 9-4-6「なんの因果で、こんな罪づくりになったのだろう!」9-4-7私は自分に言ってきかせた。9-4-8「恋愛はけがれない情熱であるはずなのに、ぼくにとって、どうしてそれが不幸とふしだらの原因になってしまったのだろう?9-4-9マノンと静かに徳を守って暮すのを何がこうしてさまたげるのだろう?9-4-10彼女の愛を得る前に、どうして彼女と結婚しなかったのだろう?9-4-11あれほどぼくをかわいがっている父のことだから、筋みちをたてて、お願いさえすれば、承知してくれないことはなかったろうに!9-4-12ああ!父は息子の妻は立派すぎるほど美しい嫁として、彼女をいつくしんでくれたことだろうに。 9-4-13マノンの愛、父の慈愛、教養ある人びとの尊敬に加えて、運命の恩恵があり、徳操がもたらす心の安らぎがあることを思えば、どんなに幸福であったろうに。9-4-14それが不運にもすべてが逆なのだ!9-4-15なんと不潔な人間になることをこの男はぼくに勧めにきたのだろう。9-4-16なんで承知するものか・・・・・。9-4-17しかし、それを取決めたのがマノンなら、そして、それを喜ばなければ彼女を失うのなら、なんの迷うことがあろう?」 9-4-18「レスコー君」9-4-19私はこのようなせつない思いを振りすてようと、目を閉じながら叫んだ。9-4-20「もしもきみがぼくのためを思ってしてくれたことならば、ぼくはお礼を言おう。9-4-21おそらくきみはもっと穏当な方法をとることもできたろうと思うと残念だが、しかし、もうすんだことなら仕方がない。9-4-22こうなったからには、きみの手配を利用して、その計画を実行することだけを考えよう」 9-4-23レスコーは、いきなり私が腹をたて、それから、黙りこくったものだから、非常に困っていたものの、彼が心配していたのとはまったく別の決心をした私を見て、すっかり気をよくした。9-4-24結局、この男は親切者だというよりほかはない。9-4-25私はそのよい例を今後もいくつか持つことになろう。9-4-26「それ、それ、それでよかった」と彼はあわてて答えた。 9-4-27「これでもおれはずいぶんとあんたにつくしたつもりなんだよ。9-4-28さあ、どれだけの金が引きずり出せるかなあ、これはきっとあんたの想像も及ばんくらいだろうぜ」 9-4-29私たちはG・・・・・M・・・・・氏の疑念を防ぐ方法について協議した。9-4-30というのは、思ったより私が大きくて、おそらくは年かさも多いことから、彼は私たちが姉弟だということを不審に思うかもしれないからだった。9-4-31で、考えついた方法は、彼の前では朴訥な田舎者のふうをよそおい、僧侶になるつもりで、毎日、学校へ通っていると思いこませることにした。それからまた、私がはじめて彼に挨拶する名誉を許されたときには、できるだけみすぼらしい身なりにすることに一決した。 |
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オリジナル教会の権能:「あなたの思うがままに作成してよい」 ページ制作者 (ささくら宗)聖母マリヤ福音教会代表 笹倉正義 2020/6/15 |
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