「騎士グリュウとマノン・レスコーの物語」 |
第一部 |
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9-3-1この剣幕に彼は恐れをなしてしまった。9-3-2彼の答えるところによれば、私のためにどれほど尽力したか、その報告に来たのに、このような待遇を受けるなら、このまま引きさがって、二度と私の家へ足を踏み入れないというのであった。 9-3-3私は部屋のドアまで駈けよるなり、それを入念にしめてから、彼のほうを向きながら、言った。9-3-4「またぼくをお人よしだと思って、たわいなくだませると思うと当てがちがうぞ。9-3-5さあ、命をもらおう。9-3-6さもなければ、マノンの居所を言うんだ」 9-3-7「これは、これは、たいへんご立腹な」彼は言った。9-3-8「そのために、おれはこうして来たのじゃないかね。9-3-9これでもおれは吉報を持ってきたのですぜ。9-3-10あんたの考えてもいないようなのをな。9-3-11そして、それを知ったら、きっとあんただって、おれに感謝しないわけにはいきますまいて」 9-3-12私はすぐにも説明するように促した。9-3-13彼の語るところによれば、マノンは貧乏の苦労に耐えることができず、とりわけ、私たちの衣類を一気に新調しなければならないと思いたって、気前のいいのでとおっているG・・・・・M・・・・・氏の知遇が得られるようにと彼に依頼したのだそうである。9-3-14そんな勧誘は彼から来たことも、彼女をそこへ連れていくまでのお膳立ては、彼がととのえたのであることも私には言わずにいた。 9-3-15「おれは今朝とどけてきたがね」彼はつづけて言った。9-3-16「そしたら、あの正直な先生、すっかり、マノンの器量に惚れこんじまってね。9-3-17さっそく、田舎の別荘へお供させるというので、四、五日の予定で出かけていったね。9-3-18おれはだね」9-3-19レスコーはつけ加えていった。9-3-20「これはあんたにとってももっけの幸いだと一目で見てとったものだから、マノンの受けた損害がなみなみならぬものであることを上手に話してきかせたものさ。9-3-21相手の気前よさを大いにあおりたてたものだから、さしあたり二百ピストールだけ贈ろうということになったね。 9-3-22おれは言ってやったよ、贈物としてはこれで結構だが、妹はこれから先が物入りのある身である。9-3-23だいいち、彼女には小さい弟がある。9-3-24弟は、両親がなくなってからはおれたちの厄介になっていたので、妹はこの世話をみてやらなければならない。9-3-25だから、彼女を相当に値ぶみするのなら、彼女が自分の半身のように思っている、あのかわいそうな子どものことで彼女を心配させないようにしてほしいものだと、こうね。 9-3-26この物語は先生を感動させた。9-3-27で、あんたとマノンのために手ごろな家を一軒借りようということになったよ。9-3-28というのも、その、かわいそうな孤児の弟というのは、とりもなおさずあんたご自身のことですからな。9-3-29家具も相当なのを備えつけること約束したね。9-3-30それから、月々、たっぷり四百フランの仕送りすることもね。9-3-31これだけでも勘定してみると、年末には、優に四千八百フランになりますぜ。9-3-32田舎にたつ前に執事に言いつけていたっけ。9-3-33家を一軒捜して、自分の帰るまでに借りておくようにって。 9-3-34そのあかつきは、あんたはその家でマノンに会えるわけだよ。9-3-35あ、そういえば、おれもマノンにことづかってきたっけ、彼女のかわりに千度もあんたに接吻してくれってね。9-3-36それから、彼女はあんたを今までよりもっともっと愛しているから安心するようにってね」9-3-37私は自分の運命のこの奇妙なあり方をぼんやり考えながら、すわった。 |
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オリジナル教会の権能:「あなたの思うがままに作成してよい」 ページ制作者 (ささくら宗)聖母マリヤ福音教会代表 笹倉正義 2020/6/15 |
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