(9・1)あたしの騎士のためにあたし働きます

「騎士グリュウとマノン・レスコーの物語」

第一部

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9-1-1彼はすぐにも警視総監とパリ大判官のところへ行くことを勧めた。9-1-2私は行ったが、しかし、行ったのは自分の最大の災難を準備するためのようなものだった。9-1-3というのは、私のこの奔走、および、私がふたりの法官にさせた奔走が、何の得るところもなかったばかりか、私はレスコーに妹と密談する余裕をあたえたので、私の留守中、彼は彼女に恐るべき決心を吹きこむことができたからだった。 9-1-4彼は彼女にG・・・・・M・・・・・氏のことを話したのだ。9-1-5これは道楽となれば金に糸目をつけない好色のじいさんで、この人の持ちものになれば莫大な金になると水を向けられたものだから、それでなくとも、この災難で困りぬいている際なので、口説かれるままに彼の口車にすっかり乗ってしまったのである。9-1-6この名誉ある取引は私の帰宅前に取り決められた。 9-1-7そして、その翌日、さっそく実行されたのは、レスコーがあらかじめG・・・・・M・・・・・氏に連絡しておいたからであろう。9-1-8家に着くとレスコーは私を待っていたが、マノンは自分の部屋で寝ていた。9-1-9そして、彼女が下僕から私に言わせたのは、すこし休息したいから、今夜はひとりにしておいてほしいということだった。9-1-10レスコーは私に数ピストール握らせてから、帰っていった。 9-1-11私が床についたときにはもう四時ちかかった。9-1-12それに、自分の運命を立てなおす方策をあれやこれやといつまでも思いめぐらしていたので、寝ついたのは非常におそかったらしく、だから、目がさめたのは、十一時か、それとも正午ちかかったかもしれなかった。9-1-13私はすぐ起きあがって、マノンの容態をききに行ったところ、彼女は貸し馬車で迎えにきた兄といっしょに一時間ばかり前に出ていったということだった。 9-1-14レスコーとのこのような外出は不審に思われたが、私は無理にも自分の疑いをおさえつけようとした。9-1-15私は読書で数時間をつぶしはしたものの、とうとう、不安に耐えかねて、部屋という部屋を大股で歩きまわった。 9-1-16マノンの部屋まで来ると、封をした一通の手紙が机の上においてあるのが目にとまった。宛名は私で、彼女の筆跡である。9-1-17私は死ぬほどの戦慄を覚えながら、封を切った。9-1-18手紙の内容はこうであった。 9-1-19「あたしの愛する騎士よ、あたしはあなたに誓います。9-1-20あなたはあたしの心の偶像であるということを、そして、あなたを愛するようにあたしが愛することのできる人は、世界にあなたよりほかにいないことを。9-1-21けれども、哀れな、いとしい人よ、あなたはそう思いませんこと？9-1-22あたしたちの今のような身のうえでは、女の操なんて、つまらない美徳だって。 9-1-23パンなしで恋が語れるとお思いになって？9-1-24ひもじさあまって、あたし、とんでもない見当ちがいをするかもしれませんわ。9-1-25恋の吐息のつもりでいたら、それが末期の吐息だなんてことにならないともかぎりませんもの。 9-1-26あたし、あなたを熱愛していますことよ。9-1-289-1-27これだけはほんとう、信じてくださいね。9-1-28しかし、あたしたちのお金をつくるあいだだけ、どうかしばらく辛抱してくださいね。9-1-29あたしのワナにひっかかってくる者にわざわいあれですわ。 9-1-30あたしの騎士を、お金持ちに、そして、仕合せにするために、あたし、働きます。9-1-31あなたのマノンの消息は、兄が知らせることでしょう。9-1-32それから、あなたと別れなければならないのがつらくって、どんなに彼女は泣いたかも、兄から聞いてくださいね」

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オリジナル教会の権能：「あなたの思うがままに作成してよい」 ページ制作者　（ささくら宗）聖母マリヤ福音教会代表　笹倉正義 2020/6/13

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