(8・3)資産形成の手段は「賭博」以外なし

「騎士グリュウとマノン・レスコーの物語」

第一部

(8) 3/5

8-3-1マノンは異常性格の女だった。8-3-2金銭に対して、あれほど淡白な女はなかったろうが、そのくせ、金銭の不足は、一時たりと彼女を落着かせておかなかった。8-3-3何より彼女に必要なものは快楽であり、遊びであった。8-3-4もし金を払わずに遊び楽しむことができるものとしたら、彼女は一文だってほしがらなかったろう。 8-3-5彼女は一日を快適に暮すことさえできれば、私たちの財産がどうなっていようが穿鑿（せんさく）などしなかった。8-3-6だから、遊びに極端にいうのでもなく、大出費の豪勢ぶりでなければ目がくらまないというのでもないので、彼女の好みに合った遊びさえ毎日つくってやれば、彼女を満足させるくらいやさしいことはなかった。8-3-7ただし、このように快楽に没頭していることは、彼女にとって、どうしても必要だったので、それなしだと、彼女の気分や愛情はまったく当てにならなかった。 8-3-8なるほど、彼女は私を優しく愛していたし、また、自分でもよく言うように、天下に恋の楽しさを味わわせうるのは私ひとりかもしれないが、なんらかの不安にあえば、この愛情も根こそぎくずれてしまうことは明らかであった。8-3-9中ぐらいの財産さえあれば、おそらく彼女は全世界のだれよりも私を選んだであろう。 8-3-10しかし、彼女に捧げるものとしては、信頼と忠実しか私に残っていないような場合、彼女が新規のB・・・・・のために私を捨てることは疑う余地もなかった。8-3-11そこで私は彼女の出費にいつでも応じられるように、自分ひとりの分は十分に節約することにした。8-3-12そして贅沢品を買うのを制限するというよりは、いろいろの必需品さえなしですませるようにした。 8-3-13他の何よりも重荷なのは馬車だった。8-3-14なぜなら、今後、御者ひとりに馬数頭を維持することなどできるはずはなかったからだ。8-3-15私はこの苦しい胸のうちをレスコー君にうちあけた。8-3-16ある友人から百ピストール借りたこともかくしはしなかった。8-3-17彼は、もし私が一六勝負をやってみるつもりなら、彼の紹介で博徒仲間に入れてやれないことはないと、しきりに言っていた。8-3-18ただ、それには百フラン奮発して、仲間におごってやる必要があるというのだった。 8-3-19何か臭くて、不愉快ではあったが、のっぴきならぬ必要に迫られて、私は引きずりこまれるよりほかはなかった。8-3-20その夜、レスコー君は私を親戚のひとりとして紹介した。8-3-21そして、私は運命の最大の恩恵を必要とする人間だけに、それだけ成功の可能性があるのだと、彼は付言した。 8-3-22とはいっても、私の貧乏は、無一物の者の貧乏とはちがうことを知らせるために、彼は彼らに告げて、私には彼らを晩餐に招く計画のあることを明らかにした。8-3-23その申し出は受け入れられた。8-3-24私は彼らを盛大に歓待した。8-3-25人びとは、私の顔つきの上品なこと、気だての明朗なことについて長いこと語りあった。8-3-26ある者は私を非常に有望だと主張した。8-3-27人相に正直そうなところがあるので、私の術策を疑う者などひとりもあるまいと言うのである。 8-3-28最後に人びとは、私のように才能ある新人を「結社」に紹介してくれたことについてレスコー君に謝意を表した。そして、数日のあいだ、私に必要な教育をさずけることをペテン師のひとりに託した。

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オリジナル教会の権能：「あなたの思うがままに作成してよい」 ページ制作者　（ささくら宗）聖母マリヤ福音教会代表　笹倉正義 2020/6/13

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