(8・1)友人とパレ・ロワイヤルのベンチにて

「騎士グリュウとマノン・レスコーの物語」

第一部

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8-1-1私はパレ・ロワイヤルの御苑に来てくれるようにと頼んでおいたのである。8-1-2彼は私より先に来ていた。8-1-3私の姿を見るなり飛んできて、私を抱きかかえた。8-1-4彼は私をいつまでもその両腕で抱きしめていたが、私には自分の顔が彼の涙でぬれるのがわかった。8-1-5私は彼にあわす顔のないこと、自分の忘恩は肝に銘じていることを告げた。 8-1-6そして、彼の尊敬と友情を失っても当然のような行いをした私ではあるが、その私が彼を友人だと思うことを今でも許してくれるかどうか、きょう、彼にお願いする第一のことは、これを聞かしてもらうことだとも語った。 8-1-7それに対して、彼は優しい、しみじみした語調で答えてくれた、どんなことがあろうと、彼はこの友人という資格を捨てることなどできるものではない、私の不幸そのものが、むしろ、私の過失と放埓が（と、彼に言われても仕方ないのだろうが）、私に対する愛情を倍加するようなものである、といっても、それははげしい苦痛の混じった愛情であって、たとえば、自分の親しい者が堕落していくのを助けることもできずにただ傍観している、そんなときに感ずるあの気持ちである、と。 8-1-8私たちはベンチに腰をかけた。8-1-9「ああ！」と、私は心の底から深い溜息を吐き出しながら言った。8-1-10「懐かしいチベルジュ、もしきみの同情がぼくの苦しみと同じくらいだと言うのなら、それは並みなみならぬものでなければならない。8-1-11ぼくはその苦しみをきみに見せるのが恥ずかしい。8-1-12なぜって、正直なはなし、その原因といえば、あまり名誉になるものじゃないからだ。8-1-13しかし、その結果はといえば、これは悲惨なんだ。8-1-14それを聞いたら、きみほどぼくを愛していない者だって、きっと哀れを感ずるだろうと思う」 8-1-15彼は私のサン・シュルビス脱出以来のことを友だちのよしみでかくさずに話すことを促した。8-1-16私はそのとおりにした。8-1-17そして、真実をゆがめたり、体裁よく見せようと自分の過失を過小評価したりするどころか、私は自分の恋情のことを、ついその恋情にかられながら力をこめて語った。8-1-18私はこうした人間の恋情を、あの運命独特の襲撃の一つであると説明した。8-1-19そして、このような運命の襲撃は非力な者の破滅にはつきもので、それは人間の叡知をもってしても予知しがたいように、人間の徳操をもってしても防ぎがたいものであることを思い起させた。8-1-20私は自分の悩みについて、心配について、彼に会う二時間前に私におかれていた絶望状態について、目に見えるように説明した。 8-1-21また、運命に見はなされると同じように、もし友人たちから無慈悲に捨てられたとしたら、私がおちいるであろう絶望についても云々することを忘れなかった。8-1-22要するに、私は善良なチベルジュの涙をそそったのだ。8-1-23その結果、私は、自分の苦悩ゆえに悲しんでいるのと同じように、私への同情ゆえに悲しんでいる彼を見たのだった。8-1-24彼はあかず私を抱きしめては、私を激励し、心をまぎらし、勇気を出すことを勧めてくれた。 8-1-25しかし、彼は私がマノンと別れることをつねに仮定していたので、私は彼にはっきりと言いきかせたのだった。8-1-26私が自分の最大の不運と思っているのは、マノンと別れることであると、そして、あらゆる不幸を一まとめにしたのより耐えがたいお薬をいただくくらいなら、どん底の貧乏はもとより、残酷な死をさえいとわないつもりであると。 8-1-27「もしきみがぼくの提案に全部反対するのなら」彼は言った。「それではぼくはきみにどんな種類の援助をあたえることができるのか、ねえ、それを説明してくれたまえ」

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オリジナル教会の権能：「あなたの思うがままに作成してよい」 ページ制作者　（ささくら宗）聖母マリヤ福音教会代表　笹倉正義 2020/6/12

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