(7・4)マノンの兄に賭博仲間への紹介依頼

「騎士グリュウとマノン・レスコーの物語」

第一部

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7-4-1さしずめ、私はマノンの兄であるレスコー君に相談しにいくことにした。7-4-2彼はパリのことならなんでも知っていたし、それに、彼の最も明白な収入は、その財産からきているのでもなければ、国費によるものでもないことを、私はあまりに多くの機会によって見せつけられている。 7-4-3やっと二十ピストールだが、それでもこれだけの金が運よくも私のポケットには残っていた。7-4-4私は自分の不幸と心配を説明しながら、彼に財布を示して、飢えのために死んだり、絶望で頭を割ったりする以外に、何かまだ私に残されたいい方法があるかどうかたずねた。7-4-5彼に言わせれば、頭を割るのは阿呆のすることだった。7-4-6そして、餓死にするというのは、世の才人たちが、いかに才能を持っていても、それを生かそうとしないから、そういう羽目におちいるからだった。7-4-7私に何ができるかを考えるのが私のすべきことであり、私のどんな企てにも、彼は救援と助言を惜しまないつもりだということだった。 7-4-8「レスコー君、それはあんまり漠然としているよ」私は言った。7-4-9「ぼくのきいているのは、さしあたっての切抜け策なんだ。7-4-10だいいち、ぼくはマノンにどう言ったらいいと思う？」7-4-11「マノンのことで、あんたに何が困ることがあります？」7-4-12彼は語をついだ。7-4-13「マノンといっしょにさえいれば、あんたの心配なんて、いつだって吹き消すことができるじゃありませんか、あんたさえその気になればね。7-4-14ああいう女は、あんたを養う義務があるんですぜ、あんたや、彼女自身や、それから、おれなんぞもね」 7-4-15この暴言に報いようとする私の反駁をさえぎって彼がなおも語りつづけるところによれば、もし私が彼の意見に従うなら、夕方までに、ふたりで分配すべき千エキュを引受けてみせるというのである。7-4-16彼は遊蕩にかけてはじつに気前のいい殿様をしっているが、その人なら、マノンのような女と一晩寝るのに千エキュくらいもののかずではあるまいという。7-4-17私は彼を黙らせた。 7-4-18「ぼくはきみをもっと買っていたつもりだった」私は反芻した。7-4-19「これまできみが友情を示してくれた動機は、今きみが自分の妹に対していだいているような感情とはぜんぜん反対のものだと思っていたのだ」7-4-20彼はずうずうしくも告白したのだったが、彼の考えはいつだって同じだったのだし、それに、妹が最愛の男のためであるにせよ、女の道を一度ふみはずした以上、彼女の不品行を獲物にする目当てがないからには、彼女と仲なおりする気など毛頭ないと言うのだ。 7-4-21これで私たちが今まで彼にだまされてきていたことはすぐにわかった。7-4-22それにしても。この論法がどれほど私を激昂させたにしても、急場を救ってくれるのは彼だと思えば、愛想笑いもいたしかたなく、彼の忠告は最後の手段として、万一の場合にそなえておく必要があると答えざるをいなかった。7-4-23それよりか何か別に活路をひらいてくれるようにと頼んでみた。7-4-24それには、私の若さと、生まれながらの美貌をエサにして、だれが気前のいい老婦人と関係するのがいちばんだということだった。 7-4-25マノンを裏切ることになるような、そんな手段は私のとるところではなかった。7-4-26私は自分の現状でいちばん平易であり、いちばん適当な方法として賭博のことをもち出した。7-4-27なるほど、賭博は一手段かもしれないが、それには手ほどきが必要だ、というのが彼の返答だった。7-4-28世間知らずの甘い考えから、ただ漠然と勝負事に手を出すのは、身の破滅をまねく方法でしかない、玄人が運を切りもりしようとして用いるあの小細工を、もし後援もなくひとりでやろうなどとしたら、それはあまりにも危険な職業だというよりほかはない、三番目の方法としては、賭博仲間にはいることであるが、しかし、私のような若年では、賭博諸君が、仲間に入れる資格を認めるかどうかあやしい、というのが彼の意見だった。 7-4-29そうは言ったものの、彼は私を彼らに斡旋してくれることを約束した。7-4-30それに、これは意外だったが、さしせまって必要ならばと、いくばくかの金さえ提供してくれた。7-4-31この際、私が彼の好意に訴えて懇願した唯一のことは、今度の災難について、また、私たちの会談について、いっさいマノンに知らさないということだった。

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オリジナル教会の権能：「あなたの思うがままに作成してよい」 ページ制作者　（ささくら宗）聖母マリヤ福音教会代表　笹倉正義 2020/6/11

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