(6・4)面会人はマノン18歳の情念

「騎士グリュウとマノン・レスコーの物語」

第一部

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6-4-1私はこの出席をまったく知らなかった。6-4-2人も知るように、ここには婦人用の特別室があって、彼女たちは目の細かい格子のために外から見えないようになっていた。 6-4-3私は名声赫々としてサン・シュルビスにもどった。6-4-4それは夕方の六時だった。6-4-5戻ってほどなく一婦人が私に面会を求めているという取次ぎを受けた。6-4-6さっそく、私は面会所へ行ったところ、ああ！なんという驚くべき出現であったろう。 6-4-7そこにはマノンがいたのだ。6-4-8まさしく彼女だった。6-4-9しかも、これまで私の見た彼女よりも一段とつややかに光りかがやいていた。6-4-10まさに十八歳、この世ならぬ美しさだった。6-4-11繊細で、甘美で、魅惑的な風情！6-4-12それは恋そのものの風情だった。6-4-13彼女の姿態全体はあたかも一つの魔法のように思われた。 6-4-14彼女を目のあたりに見て私はただうろたえるばかり。6-4-15なんのための訪れか推察することもできず、目を伏せ、身をふるわせながら、ただ私は彼女の説明を待っていた。6-4-16彼女の混乱ぶりもしばらくは私に劣るものではなかったが、私の沈黙がいつまでもつづくのを見て、彼女は片手を目にあてて、涙をかくそうとした。 6-4-17彼女がおどおどした語調で私に言うには、彼女の不貞が私の憎しみに値するものであることは認めるけれど、それにしても、もしほんとうに自分にいくばくかの愛情をいだいたことがあったとすれば、この二年のあいだ、彼女の消息を問い合せてくれようともせずにうち捨てておいただけでも無情な仕打ちだし、それのみか、こうしてふたりは相見ることができたのに、言葉ひとつかけてくれないのはいよいよ無情なことではないかと、私をなじるのだった。 6-4-18こういう議論を聞く私の魂の混乱ときたら、なんとも言いようのないものだった。6-4-19彼女はすわったが、私は立ったままだった。6-4-20からだを半分横に向けたなりで、彼女をまともに見ようとはしなかった。6-4-21幾度か私は返事をしかけたが、しまいまで言うだけの気力がなかった。6-4-22やっと私は苦しまぎれに、こう叫ぶのがせいいっぱいだった。 6-4-23「マノンのうそつき！6-4-24ああ！うそつきめ！うそつきめ！」6-4-25彼女は今さら自分の不貞を弁解するつもりはないと、熱い涙を流しながら、くりかえして言った。 6-4-26「じゃ、なんだというの？」私はふたたび叫んだ。6-4-27「もしもあなたのお心を返していただけないなら、あたし、死ぬつもりなの」彼女は答えた。6-4-28「あなたのお心なしでは、あたし、とても生きていられない」 6-4-29「そんならぼくの命を取るがいい、ひどい女だ！・・・・・」あふれ出る涙をおさえられず、私も泣きながら、言いつづけた。6-4-30「ぼくの心を取ってくれ、きみに捧げることのできるただ一つの残りものだ。6-4-31なぜなら、ぼくの心がきみのものでなかったためしは一度だってなかったのだから」 6-4-32この最後の言葉を私が言いおわると、彼女は感きわまって、立ちあがるなり、私を抱きしめ、情熱のこもった愛撫で私をつつんだ。

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オリジナル教会の権能：「あなたの思うがままに作成してよい」 ページ制作者　（ささくら宗）聖母マリヤ福音教会代表　笹倉正義 2020/6/11

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