(6・1)読書「アエネイス」第4巻「ディドー」

「騎士グリュウとマノン・レスコーの物語」

第一部

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6-1-1私はこの牢獄でまる６か月をすごしたが、最初の期間は、私の心境にさしたる変化もなく、私の感情といえば、憎悪と愛情、希望と絶望のたえまない交代にすぎなく、それはマノンが私の心にうかんでくる、そのときどきの考え方によるのであった。 6-1-2あるときは、彼女のうちに世にも愛すべき娘しか見なくて。彼女恋しさに身をこがす。6-1-3そうかと思うと、卑劣不貞な情婦としか思われず、彼女を捜しだして、ひどい目にあわせてやろうと、無数の誓いをたてたりする。 6-1-4書物の差入れはあったので、これは私の魂にいくぶんの落着きをもどしてくれるのに役だった。6-1-5私は自分の愛読書をことごとく読みかえし。新しい知識を得た。6-1-6私は学問に対する限りしれない興味を覚えた。6-1-7これが私にどれほどききめがあったか、いずれおわかりになるときが来るであろう。 6-1-8恋のおかげで得た知識は、ホラーティウスやウェルギリウスの、以前は不明であった多くの個所に光を投げてくれずにはおかなかった。6-1-9アイネーイスの第四巻には恋愛上の注釈さえ試みた。6-1-10いずれ発表する日もこようが、世人はきっと喜ぶものと私は自負している。6-1-11＜ああ！＞と私はこの注釈を作成しながら、思った。6-1-12＜あの忠実なディードーに必要だったのは、ぼくのような心だったのだ＞ 6-1-13ある日、チベルジュが私の牢獄を訪れてきた。6-1-14彼が私をかきいだいたときの、その熱情のほとばしりには私も度胆をむぬかれた。6-1-15同じ年ごろの若者たちのあいだに結ばれがちな、あの単なる学友づきあいといったものとはまったく別に思われる彼のような友情のあかしに、これまで私は接したことがなかった。6-1-16彼に会わずにすごした五、六ヵ月のあいだに、風采も人物もすっかり立派になったのを見いだした私は、その風貌、その語調に尊敬の念を覚えずにはいられなかった。 6-1-17学校友だちというよりは、むしろ、賢明な助言者として私に語った。6-1-18彼は私のおちいった苦境に同情し、私がたちなおっていると信じて、それを祝福してくれた。6-1-19そして、この若気のあやまちを利用して、快楽のむなしさを悟るようにと激励してくれたりした。6-1-20私はびっくりして彼の顔を見た。6-1-21彼もそれに気づいたらしい。 6-1-22「ぼくの親しいシュバリエ」彼は言った。6-1-23「ぼくはまちがいなく真実であることや、まじめな検討によって納得のいったことしかきみに言わないつもりだ。6-1-24肉体の快楽には、ぼくだってきみに劣らず心をひかれていた。6-1-25しかし、神さまのおかげで、ぼくは美徳に対する好みも同時に持っていたつもりだ。6-1-26ぼくは自分の理性を利用してね、この快楽とこの美徳と、両方から生れる結果を比較研究してみたのさ。6-1-27そして、両方のちがいを発見するのに手間はかからなかったね。 6-1-28神さまのお救いがぼくの反省にうまく合致したわけなんだ。6-1-29おそらくぼくくらいこの俗世を軽んじている者はあるまいと思う。6-1-30そのくせ、何がぼくをここに引きとめておくのか、何がぼくを孤独な生活に走らせないのか、きみにはわかるだろうか？ 6-1-31それはただただきみに対するぼくの深い友情だよ。6-1-32ぼくはきみの心も頭も優秀であることを知っている。6-1-33きみはどんな美しいことだってできる人間だ。6-1-34ただ快楽という毒薬がきみを外道にそらせたのだ。6-1-35美徳のためになんという損失だろう！6-1-36きみがアミアンを出奔したことはぼくには耐えがたい痛手となって、あれ以来、心のやすまるときはすこしもなかったほどだ。それはきみのことでぼくがどんなに奔走したかわかれば想像がつくだろうと思う」

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オリジナル教会の権能：「あなたの思うがままに作成してよい」 ページ制作者　（ささくら宗）聖母マリヤ福音教会代表　笹倉正義 2020/6/8

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