(5・1)突如、実家に連れ戻される騎士

「騎士グリュウとマノン・レスコーの物語」

第一部

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5-1-1こうして私が彼女にかかりあっている最中、階段を上がってくる数人の足音が聞こえてきた。5-1-2静かにドアをたたく音がした。5-1-3マノンは私に一つ接吻すると、私の腕をぬけ出て、すばやく自分の部屋にはいるなり、うしろからドアをしめた。5-1-4彼女はすこしとり乱していたので、ドアをたたいているその知らぬ人たちに見られたくなかったからだろうと思われた。 5-1-5私は自分であけに行った。5-1-6ドアをあけたかと思うと、私は三人の男につかまってしまった。5-1-7が、すぐそれは父の従僕であることがわかった。5-1-8彼らはべつだん乱暴なことはしなかったが、その中のふたりが私の両腕をつかまえているあいだに、三人目の男が私のポケットを捜して、私が身につけていた唯一の武器である小さなナイフを取出した。5-1-9このように礼を欠く行動に出たのもやむをえなかったからだと、彼らは私に許しを求めたうえで、これは私の父の命令でやったことであること、また、下には兄が馬車で待っていることをいかにも自然の語調で告げた。 5-1-10私はまったく度肝をぬかれてしまったので、抵抗もしなければ、口返答もせずに、おとなしく連れていかれた。5-1-11実際、兄は待っていた。5-1-12私は兄のわきに乗せられた。5-1-13そして、御者は命令を受けていたと見え、一路、サン・ドニへと急いだ。5-1-14兄は優しそうに抱きしめてくれたが、口はいっさいきかなかった。5-1-15だから、私にはこの降ってわいた不運をじっくり考える余裕があった。5-1-16最初はただ暗闇の一色で、どんな憶測も明るみに出すことなどできなかった。 5-1-17ともかく、私は裏切られたのだ。5-1-18しかも、残酷なほど裏切られたのだ。5-1-19しかし、それはだれに裏切られたのだろう？5-1-20最初、胸にうかんできたのはチベルジュだった。5-1-21裏切り者め！5-1-22もしおれの目に狂いがなかったら、きさまなんか生かしておかないぞ、と、私はひとり思ったものの、よくよく考えてみれば、彼は私の住所を知らないのだから、結局、彼の口からそれがもれるはずはなかった。 5-1-23マノンに嫌疑をかける、そんな罪なことを私の心はとうてい許さなかった。5-1-24彼女があのように異常な悲しみにうちひしがれていたこと、泣いていたこと、部屋を出ながら私に愛情のこもった接吻をしたことなどは、たしかに一つの謎ではあった。 5-1-25しかし、それは私たち共通の不幸の予感ではなかったかと、私はこう解釈しがちだった。5-1-26そして、自分を彼女から引裂いたこの事件で絶望しきっている最中でさえ、彼女を自分よりもいっそう哀れだと思うほど私はばか正直だったのだ。 5-1-27で、私の思索の結果は、だれかパリの街頭で私を見つけた知人が、父に密告したのだということに落ち着いた。5-1-28この考え方は気休めになった。5-1-29父の権威からして、私はいくらかの叱責や折檻は覚悟しなければならないとしても、まずそれくらいですんでしまうだろうと決めこんでいた。5-1-30私は辛抱づよく我慢し、どんな要求にも応ずる決心だった。 5-1-31それだって一刻も早くパリに帰り、いとしいマノンに生きがいと喜びを返していく機会を得やすくしてやりたい一念からだったのだ。

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オリジナル教会の権能：「あなたの思うがままに作成してよい」 ページ制作者　（ささくら宗）聖母マリヤ福音教会代表　笹倉正義 2020/6/8

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