(4・1)若すぎる二人に「教会法」の壁

「騎士グリュウとマノン・レスコーの物語」

第一部

(4) 1/4

4-1-1チベルジュが私にだまされたと知ったとき、どんな行動をとったか、いずれあとになってからお話しすることにしよう。4-1-2このために彼の熱い友情も冷えるようなことはなかった。4-1-3それどころか、彼はこの友情をどんなに熱烈に燃やしたか、そしてそれに対する私の代償がどんなものであったかを思うごとに、私はどんなに涙を流さなければならなかったか、おいおいおわかりになることだろうと思う。 4-1-4私たちはひたすらに先を急いだので、日が暮れる前にサン・ドニへ着いた。4-1-5私は馬に乗って、馬車に付き添っていったので、私たちは馬を換えるときでなければろくに言葉をかわすこともできなかった。4-1-6しかし、もうパリの近くまで来たのだから、言いかえれば、もう安全地帯なのだから、アミアン以来なにひとつ食べてなかった私たちは、ここで一休みするだけの時間をつくった。4-1-7私がマノンにどれほど熱中していたにせよ、彼女もまたそれに劣るものでないことを私に納得させた。 4-1-8私たちはお互いに愛撫しあうことつつしんでいられなかったので、ふたりきりになるのをどんなに待ちあぐんでいたか知れなかったのだ。4-1-9御者もお客もただ舌を巻いて見ているばかり。4-1-10私たちのような年ごろのふたりの子どもが、こうして夢中で愛しあっているようすに彼らもあきれかえっていることがわかった。 4-1-11私たちが結婚するという計画も、すでにサン・ドニで無視されてしまった。4-1-12私たちは教会法を犯したのだ。4-1-13そして、そんなことにはいっこう頓着なしで、夫婦気どりでいたのだった。4-1-14もともと私の誠実で優しい性質からして、もしもマノンが私に貞節でさえあったら、おそらく私は一生幸福であったろうと思う。4-1-15私は彼女を知れば知るほど、彼女のうちに、さまざまの愛すべき性質をつぎつぎに見いだすのだった。4-1-16彼女の才知、心情、優しさ、美しさは、強くて魅惑的な一つの鎖を形成していたが、私はそれから絶対にぬけ出ないことに自分の全幸福を賭けていたのだった。 4-1-17それがまたなんと恐ろしいことになったものだろう！4-1-18私を絶望させるものが、私に至上の幸福をもたらすことができるとは。4-1-19私は自分の誠実な性質に、あらゆる運命のなかで最も優しい運命を期待していたのに、恋愛の最も完全な報酬を期待していたのに、その誠実な性質のために、私はあらゆる人間の中で最も不幸な人間になったのだ。

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オリジナル教会の権能：「あなたの思うがままに作成してよい」 ページ制作者　（ささくら宗）聖母マリヤ福音教会代表　笹倉正義 2020/6/3

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