(11・3)門番をピストルで殺害し、神父のせいにする

「騎士グリュウとマノン・レスコーの物語」

第一部

(11) 3/7

11-3-1私はテーブルの上に鍵のおいてあるのに気づいた。11-3-2私はそれをつかむと、できるだけ音をたてないで、私のあとに従ってくるように促した。11-3-3彼はそうせざるをえなかった。11-3-4私たちは進んでいき、そして、彼はドアを一つあけるごとに、溜息まじりにくりかえして言うのだった。11-3-5「ああ！わしの息子！11-3-6こんなことになるとだれが思ったろう！」 11-3-7「静かにしてください、神父さん」と、私のほうではたえずこれをくりかえした。11-3-8とうとう、私たちは、一種の柵のところまで来たが、すぐその前が道路に面した大きな門であった。11-3-9ここまで来ればもう大丈夫のように思われた。11-3-10私は片手にロウソクを、片手にピストルを持って、神父のうしろにいた。11-3-11彼が門をあけようと懸命になっているあいだに、わきの小部屋に寝ていた小使が、閂(かんぬき)の音のするのが聞えたので、起きあがってきて、戸口に顔を出した。 11-3-12人のいい神父は、この男なら私をつかまえることができると思ったらしい。11-3-13じつに不用意にも彼に救いを求めたのである。11-3-14頑強なやつだったから、迷わず私にとびかかってきた。11-3-15私も容赦しなかった。11-3-16相手の胸もとに一発ぶっぱなした。11-3-17「それ、ごらんなさい、神父さん、あなたのせいですよ」と、私は自分の案内者にかなり高飛車に言った。 11-3-18「しかし、もうちょうっとの辛抱ですからね」そう言いながら、私はいちばん最後の門のほうへと彼を押していった。11-3-19彼はそれをあけるのを拒まなかった。11-3-20私は首尾よく外に出ると、四歩ばかり先にレスコーがいた。 11-3-21約束どおり、ふたりの友人を連れて待っていたのだ。11-3-22私たちは遠ざかった。11-3-23レスコーはピストルの音がしたような気がしたと言った。11-3-24「きみが悪いんだよ、どうして弾丸なんかこめておいたのだ？」と、私は言ったものの、私は彼のこの用心を感謝した。11-3-25さもなければ、おそらく私はいつまでもサン・ラザールにいることになったろう。 11-3-26私たちはさる飲食店へ行って一夜を明かすことにした。11-3-27そこで私は三カ月来の栄養不良を多少なりとりもどした。11-3-28とはいえ、私はいい気分にひたっているわけにはいかなかった。 11-3-29マノンを思えば死ぬほど苦しかった。11-3-30「まず、彼女を救い出すことが肝心だ」11-3-31私は三人の友に言った。11-3-32「ぼくが脱出しようと思ったのも、ただこの目的のためだったのだからね。11-3-33きみたちのいい知恵をかしてもらいたいものだ。11-3-34ぼくとしては命を投げ出してもやるつもりでいる」 11-3-35レスコーは知恵にも思慮にも欠けることのない男だったから、私にこう言った、何よりも用心してかからなければならない、ことに私のサン・ラザールの脱獄と、出る間ぎわの失敗は、必ず表沙汰になっているはずである。11-3-36警視総監は私を捜索させるであろう、そして、彼の指令はひろくいきわたっている、だから、私がサン・ラザールよりもひどい目にあいたくなかったら、ニ、三日、どこかへもぐって、ほとぼりのさめるのを待つのにこしたことはない、と。 11-3-37彼の忠告は賢明であったが、それに従うには同じくらい賢明である必要があった。11-3-38しかし、そんなにぐずぐずしていたり、用心したりすることは、私の情熱が許さなかった。11-3-39翌日、一日は寝て暮すと約束したのが、私の譲歩のぎりぎりであった。11-3-40私は彼の部屋に閉じこもったなり、夕方までおとなしくしていた。11-3-42そのあいだに、私はマノンを救い出すための計画や工夫をめぐらした。11-3-43彼女の牢獄は私のよりはるかにはいりにくいことはわかっていた。11-3-44だから腕力や暴力は問題でなかった。 11-3-45必要なのは策略であった。11-3-46しかし、発明の女神さえ、どこから手をつけていいかわからなかったろう。11-3-47私にも皆目見当がつかなかったので、オピタルの内部事情について若干の知識を得てから、もっとよく考えてみることにした。

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オリジナル教会の権能：「あなたの思うがままに作成してよい」 ページ制作者　（ささくら宗）聖母マリヤ福音教会代表　笹倉正義 2020/6/16

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