(11・2)好意的な神父を脅し、ドアの開錠を要求

「騎士グリュウとマノン・レスコーの物語」

第一部

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11-2-1私は脱出を保証してくれるこの武器を身につけたとき、自分の計画の成功をほとんど疑わなかった。11-2-2それは突飛な、思いきった計画だったが、私を勇気づけてくれるだけの動機がある以上、どうしてできないということがあろう？ 11-2-3私が自分の部屋から出て、廊下を散歩することが許されて以来、すでに気づいていたのだったが、毎夕、門衛が全部のドアの鍵を院長のところへ持っていくと、やがてあたりは深い沈黙にとざされるのだったが、それは全員が各自の部屋へ引っこもったことを語っていた。 11-2-4そのときを見はからって、つづき廊下を通り、自分の部屋から神父の部屋へはなんの障害にもぶつからずに行くことができた。11-2-5私は彼から鍵をとりあげ、もし出ししぶったら、ピストルでおどして奪い、その鍵で街路に出るつもりだった。 11-2-6私はじりじりしながら時の来るのを待っていた。11-2-7門衛はいつもの時刻、つまり、九時ちょっと過ぎにやって来た。11-2-8私はもう一時間やりすごして、修道士と下男の全部が眠ったのをたしかめた。11-2-9いよいよ、私は武器と、灯のついたロウソクを持って、部屋を出た。11-2-10まず、私は神父のドアをかるくノックした。11-2-11音をたてずに彼の目をさますためだった。11-2-12彼は二度目のノックで目をさました。11-2-13だれか修道士が病気になって、救援を求めに来たとでも思ったのだろう。11-2-14立って、あけに来た。11-2-15それでも、さすがに用心して、だれが、なんの用事で来たのかと、ドア越しにたずねた。 11-2-16私は自分がだれであるか言わないわけにはいかなかった。11-2-17でも、無理と哀れっぽい声を出して、気分の悪いことを相手に了解させようとした。11-2-18「なあんだ！きみか、わしのかわいい息子か」と言いながら、彼はドアをあけた。11-2-19「こんなにおそく来るなんて、どうしたというのだろう？」 11-2-20私は部屋の中にはいるなり、ドアとは反対側のすみに引っぱっていくと、彼に向って宣告したのである。11-2-21もうこれ以上サン・ラザールにいるのは我慢できないので、脱出しようと思うのだが、それには人目につかない夜分が都合がいい、それで、彼の情誼にすがってお願いするのだが、自分のためにドアをあけてほしい、それとも、私が自分であけるために鍵を貸してほしい、と。11-2-22この挨拶は彼を仰天させたに相違なかった。11-2-23しばらくは返事もせずに私を見つめたままだった。 11-2-24私のほうはぐずぐずしていられないので、すぐにあとをつづけて、私は彼の好意には深く感謝している者だが、いかなる財宝よりも自由がいちばんほしい、ことに自分のように不当に自由を奪われている者にとってはなおさらのことであるから、今夜という今夜は、どんな犠牲をはらってもそれを獲得する決心である、と言ったのである。11-2-25そして、彼が救いを求めようとして声をあげては困ると思って、私は上着の下にかくしていた例の立派な黙らせ道具を見せてやった。 11-2-26「ピストルだね！」彼は言った。11-2-27「なんということだ、わしの息子！11-2-28これまでわしはきみのことを考えてやったのに、その恩返しのつもりでわしの命をとろうというのか？」11-2-29「とんでもないことです」私は答えた。11-2-30「あなたは知恵も理性も十分おありだから、ぼくにこんなものを必要とさせるはずはありません。11-2-31ただ、ぼくは自由になりたいのです。11-2-32そして、ぼくは深く覚悟を決めていますから、もしぼくの計画があなたのへまのために失敗したとしたら、それは絶対あなたのせいにせずにはおきません」 11-2-33「しかし、ねえ、おまえ」と、彼は顔を青くして、おびえながら言った。11-2-34「わしはきみに何をした？11-2-35なんの理由あってわしの命がほしいのか？」11-2-36「そうじゃないんです」11-2-37私はじりじりしながら言った。11-2-38「あなたが生きていたいなら、ぼくはあなたを殺そうなんて思いません。11-2-39ドアをあけてください。11-2-40ぼくはあなたのいちばんの友だちです」

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オリジナル教会の権能：「あなたの思うがままに作成してよい」 ページ制作者　（ささくら宗）聖母マリヤ福音教会代表　笹倉正義 2020/6/16

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