(10・2)GM氏からマノンの消息、オピタル監獄で淑女の

「騎士グリュウとマノン・レスコーの物語」

第一部

(10) 2/6

10-2-1勉強どころか、ひとりになると、私は自分の不幸を嘆くことしかしなかった。10-2-2私は自分の牢獄をのろい、ここに私をつないでおこうとする暴虐を憎んだ。10-2-3恥辱からくるあの圧迫感がいくぶんゆるんだと思うと、今度はふたたび恋の責苦におちる私だった。 10-2-4マノンのいないこと、その消息が不明であること、ニ度と会えないのではないかということなどが、私の悲しいもの思いの唯一の題目だった。10-2-5私はG・・・・・M・・・・・氏の腕の中にある彼女を想像していた。10-2-6なぜなら、この考えが真っ先に私の胸へ来たからだった。10-2-7そして、彼女をも私と同じ扱いをしているなどと想像するどころか、彼は私を隔離させたのは、彼女を安心して所有するためだとしか考えられなかった。 10-2-8こうして、私は日に夜を重ねていったが、それは永遠のように長く思われた。10-2-9私は自分のこの偽善が功を奏することのみに望みをつないでいた。10-2-10私は院長の言葉と顔色を注意ぶかく観察することによって、彼の私に対する考えをたしかめようとした。10-2-11そして、私の運命を左右する人として、彼の機嫌をとるようにつとめた。10-2-12私が完全に彼から愛されていることを知るのは造作もないことだった。10-2-13彼が私のために尽力するつもりでいることは疑いの余地がなかったからだ。 10-2-14ある日、私は彼に思いきってたずねて、私の釈放は彼の権限にあるのかどうかを明らかにしようとした。10-2-15その答えによれば、彼に絶対的な権限があるわけではないが、もともと、警視総監はG・・・・・M・・・・・氏の依頼で私を幽閉したのだから、同氏は、院長の証言があれば、私の釈放を承諾する見込はあるということだった。 10-2-16「もうふた月もはいっているんですからね」私はおだやかに言った。10-2-17「あの方だって、償いは十分だとお思いになるだろうと、こうぼくは楽観してもいいものでしょうか？」10-2-18彼は私が本気にそう思うのなら、話してみてやろうと約束してくれた。10-2-19私はぜひ心配していただきたいと懇願した。 10-2-20それから二日して、G・・・・・M・・・・・が私の改心を聞いて、たいへん感心しているということを気かされた。10-2-21しかも、ただ私に日の目をみせようち思っているばかりではないらしく、もっと個人的に私と知合いになりたいという熱意さえ示し、みずから私の獄屋を訪れるつもりであるとのことだった。10-2-22彼の来訪はなんとしても愉快ではなかったが、それも私の自由への近道だと思えば仕方なかった。10-2-23彼は実際にサン・ラザールへやって来た。 10-2-24マノンの家で見たときよりもずっとばかでない、しかつめらしいようすをしていた。10-2-25彼は私の不品行についてニ、三のもっともらしい説法を試みた。10-2-26そして、これはおそらく彼自身の不品行を弁護するための言だろうが、本能の求める快楽を得ようとするのは人間の弱さで仕方ないとしても、詐欺、ぺてんの類は処罰されても当然であると、つけ加えたのだった。10-2-27私はうやうやしく拝聴していたので彼も満足の体であった。 10-2-28私がレスコーやマノンと兄弟であることをしきりに彼はからかったり、また、例のミサ用の礼拝用品については、私がこうした神さまの仕事をするのをあんなにも楽しみに思っていたからには、さぞかしサン・ラザールではどっさり作ったことだろうと思う、などと言ってひやかすのを聞いても、私はちっとも腹なんかたてなかった。10-2-29ただ、彼にとっても、また私自身にとっても不運だったのは、彼がうっかり口をすべらして、おそらくマノンも、オピタルでミサ用のとてもかわいい礼拝用品を作ったであろうと言ったことだった。 10-2-30オピタルと聞いて、私はぞくっとしたが、それでも落着いてその説明を求めるだけの余裕はあった。10-2-31「ああ、いいともさ」彼は言いつづけた。10-2-32「というのはね、二カ月前から彼女はオピタル・ジェネラルで、貞淑というものを教わっているのさ。10-2-33きみがサン・ラザールで得たくらいのものを、彼女もあそこで得てくれればとわしも願っているわけだが」

次へ

オリジナル教会の権能：「あなたの思うがままに作成してよい」 ページ制作者　（ささくら宗）聖母マリヤ福音教会代表　笹倉正義 2020/6/15

（ささくら修道会規約）当会の用いる聖書は、口語訳聖書、文語体聖書、バルバロ聖書差分の３つに限定する。これ以外の、聖書の引用は異端行為として厳禁される。日本語以外の聖書については、文語体聖書の内容に準じるものとする。異端文例（Today's English Version)世事に迎合した改編文章など異端以外の何ものでもない。（異端：=故意に対立すること）

ささくら修道会の指定聖書：「日本聖書協会　口語訳聖書」に準拠 新約聖書（１９５４年改訳） 旧約聖書（１９５５年改訳） バルバロ聖書（旧約差分）

いろいろ聖書　　ささくら宗の聖書

（修正履歴）