(1・3)貴人は二人の恋に６ルイを出資

「騎士グリュウとマノン・レスコーの物語」

第一部

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1-3-1「それは、それはお気の毒な」と、私は言った。1-3-2「そんならあなたのお困りをなくしてあげましょう。1-3-3さあ、ここにすこしばかりお金がありますが、どうかこれをお納めください。1-3-4ほかのことでお役にたてないのが残念ですが」 1-3-5私は彼に４ルイ（訳注　１ルイは２４フランに当る昔の金貨）の金貨を渡したが、看守たちには気づかれないようにした。1-3-6なぜなら、もし彼らがこの金額を知ったなら、いよいよ自分たちの恩を高く売りつけることはわかりきっていたからだった。 1-3-7そればかりか、私は看守たちと取引することさえ思い付き、この恋の青年が、ル・アーブルまでたえず恋人と自由に話していけるようにとりはからってやることにした。1-3-8私は首領株を手招きして、これを提案してみた。1-3-9彼はその厚顔無恥にも似ず、いかにも恥ずかしそうなようすをして見せた。 1-3-10「わしどもにしたところで」と彼は当惑げに答えた。1-3-11「なにもあの娘と口をきいてはならんというわけではないんで。1-3-12ただ、あの男はのべつ女のそばにいたがりますんで、これはわしどもには邪魔になりまさあ。1-3-13この邪魔になることに金を払うのはあたりまえのことに思いますが」 1-3-14「それならばだね」と私は言った。1-3-15「その邪魔を邪魔だと思わずにすむには、あんたに何をやったらいいか考えてみよう」1-3-16彼はずうずうしくも２ルイを要求した。1-3-17私は即座にあたえた。1-3-18「しかし、注意しておくがね」と私は言った。1-3-19「ずるいことしてはいかんよ。1-3-20私はこの若い人に私の所書きを渡しておいて、連絡できるようにしておくからね。1-3-21それに、ちょっと言っておくが、私にはあんたたちを処罰する権限がないわけではないんだよ」 1-3-22私には金貨６ルイの出費だった。1-3-23それにしても、この好意に対して、青年が私に示したはげしい感謝の情を見れば、彼が私の恩恵を受けてもいいほどの人間であることを、私としても納得せずにはいられなかった。 1-3-24出発に先だって、私はその恋人にも言葉をかけた。1-3-25彼女も私に答えたが、そのつつましい態度が、いかにも優しく、愛くるしいので、私は宿屋を出ながらも、女というものの不可解な性質について、いろいろと考えずにはいられなかった。1-3-26わが家にもどった私は、この事件のその後についてはなんら知るところがなかった。

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オリジナル教会の権能：「あなたの思うがままに作成してよい」 ページ制作者　（ささくら宗）聖母マリヤ福音教会代表　笹倉正義 2020/6/1

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