(0・1)「ある貴人の回想録」の中に「小説」

Aｎｔｏｉｎｅ−Ｆｒａｎｃｏｉｓ　Ｐｒｅｖｏｓｔ アントワーヌ・フランソワ・プレボー Ｍａｎｏｎ　Ｌｅｓｃａｕｔ

0-1-1わたしは『ある貴人の回想録』の中に、騎士グリュウの物語を入れることにしたが、そこにはなんらの必然的な関係もないのだから、読者はこれを切り離して読んだほうがかえって納得がいくのではないかと思われる。0-1-2この話自体が相当に長いので、そうでもしないと、これまでの私のつづけてきた私自身の身のうえばなしの筋みちを中断してしまうおそれがある。0-1-3正直なところ、私は厳密な意味での作家の資格を要求しようなどとは毛頭思わないが、説話というものは、それを重くるしくし、ぎごちなくさせるさまざまの副事件から解放される必要のあることを、私といえども知らなくはない。 0-1-4ここにホラーティウスの訓言を引用するならば、0-1-5先に言うべきことを先に言い、0-1-6他は機会あるまで言わざること。0-1-7これほど単純な真理を証明するのに、こんないかめしい権威まで引き合いに出す必要などなかろう。0-1-8なぜなら、この種の原則の本源をなすのは良識だからだ。 0-1-9もしも読者が、私の身のうえばなしの中に何か楽しいもの、何か興味のあるものを見いだしたとしたら、ここに加える一編の物語にもやはり満足されるであろうことをお約束する。0-1-10人はグリュウ君の行状に、燃えさかる情火の恐るべき実例を見るであろう。0-1-11私は恋ゆえに盲目となった一青年を描こうとしているものである。0-1-12彼は幸福であることを拒絶して、終局は、悲境にみずからとびこもうとする。0-1-13かがやかしい未来を約束している、あらゆる才質をかねそなえながら、みずから好んで裏街道をごろついて、運命と自然がもたらす有利な条件のごときもことごとく棒にふってしまう。0-1-14自分の不幸が目に見えているのに、避けようともしない。0-1-15もとより、そうした不幸を身をもって感じもし、また、その蹂躙にまかされてもいるのだが、親しい人たちから不幸払いの方法をたえずさずかりながら、それをいっこうに利用しようともしない。 0-1-16要するに、有徳であると同時に不徳であり、良く思考しながら、悪しくも行動するという、どっちつかずの性格なのだ。0-1-17以上が、私のこれからお目にかけようとする絵巻の背景をなすものである。0-1-18良識ある人びとなら、この種の作品をもって、必ずしもあらずもがなの作品とは思うまい。0-1-19楽しい読書という喜び以外にも、品性をみがくことのできるようなところも少なからず見いだされるだろうと信ずる。0-1-20そして、私に言わせれば、公衆を楽しませつつ同時に教育するのは、彼らに大きな奉仕をすることになるのである。

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オリジナル教会の権能：「あなたの思うがままに作成してよい」 ページ制作者　（ささくら宗）聖母マリヤ福音教会代表　笹倉正義 2020/5/30、6/8

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