２６．戦争と貧困

殺意の起源
聖書は戦争の記録でもあります。ただし、信仰に関連付けられています。その最も古いものは、カインが弟を殺害した記録です。
（創世記）
4-8カインは弟アベルに言った、「さあ、野原へ行こう」。彼らが野にいたとき、カインは弟アベルに立ちかかって、これを殺した。

聖書は、ユダヤ人が編纂したものですが、それを構成する文書の多くは、戦いや戦争のことが書かれています。そして、そのほとんどが、神に関連付けられているからこそ、聖書なのです。

ユダヤの人々はたびたびモーセに率いられた「出エジプト」の神を忘れ去り、その罰として王国が滅んでしまったのだ、というふうに、戦争が神罰に関連付けられています。

イエスの時代には、ユダヤはローマ帝国の属領になっていて、徴税や治安はヘロデたちが請け負っていました。そのユダヤも西暦７０年にエルサレムが破壊されて、古代ユダヤ教は終焉しました。

その後の世界史においても、戦争が歴史を作っているかのようです。その戦争は、たいていは資源の争奪です。「金」、「経済」、「為替」、「株」の操作に長けた先進国が、それに疎い後進国（発展途上国）の資源を争奪します。国の中で一部の既得権者が富を独占します。それらはいとも簡単に戦争や内乱に火をつけます。

このような人類が発展させてきた戦争と、非条理を司る神と何か関係があるのでしょうか。

人は神のロボットではない
あなたは日常神を意識することがありますか？　ないですよね。それは、あなたが神のロボットではない証拠です。他の人たちもみんなそうです。ですから、神は日常的には、わたしたちとは何の関係もないのです。

言い換えると、神はわたしたちが意識しな限り存在されないのです。わたしたちが意識することによってのみ、神はその意識の中に臨在されるのです。

しかし、意識という見えない神は、たよりなく思えます。その見えない神を見えるようにされたのが唯一キリスト教のイエス・キリストです。イエスは目に見える歴史的存在であったからです。

このイエス・キリストさえも戦争とは関係ないのだとすれば、なんとなく情けない気持ちになりますね。しかし、キリスト教徒の多くは、イエス・キリストの名によって戦争をしている場合があります。

神がいるのなら
さて、神がいるのならなぜ戦争がなくならないのか、ということですが、この質問は虫がよすぎるのです。つまり、身勝手な質問です。

戦争は、人々の本音や身勝手が、引き起こしています。「わたしは戦争が好きです。人を殺すとわくわくします」という本音を、関係者の間では言えても、公の場で言う事はできないはずです。個人ではできないことも組織ではできます。

大勢の人々は、戦争によって被害を蒙りますが、それによって潤っている少数の人がいるから戦争がなくならないのです。国家、軍、武器商人、武器製造業者、マスコミ、それらが概ね戦争を必要としています。彼らは神よりも組織に忠誠を誓います。

これからの戦争
インターネット社会によって、人々は常に緊張し、ヒステリックになりつつあります。このインターネットを情報操作することによって、社会をさまざまな不安定に導くことができます。

今、わたしたちは神を失い、先の見えない絶望的な時代を生きているのでしょうか。だとしたらこの世に生まれた不幸を嘆かなければなりません。事実、そのようなことを喧伝する人もいます。

しかし、戦争や貧困の只中にあっても、おおむね信仰のある者は幸せを保持し、努力してその境遇から自力で這い上がろうとします。そして、神はそのような者の努力を祝福されます。

イエスが繰り返して言われたことは、「信仰があなたを救った」です。信仰とは、自分自身の問題解決を、人ではなく、神に求めることなのです。イエスの時代、ユダヤ人はヘロデ王への貢、神殿への貢、ローマ帝国への貢に苦しんでいました。

イエスがユダヤの王になって、平和をもたらしてくれたらいいのに、と思ったのは大衆です。権力の側はそうであっては困るのです。

平和運動
神に、漠とした「世界平和や平等」を求めることは、人の自己宣伝に過ぎません。大言壮語です。埋められた地雷、環境汚染、核の無効化、どのような課題にも巨額の費用がかかります。それらの原因を作った組織が自費でするとは思えません。口先だけの平和宣言や式典は、自らを慰めるだけの行為で、主なる神の祝福は受けられません。

人口問題
格差社会がいやならば、地球上の人口を、自然破壊しなくてもいい程度に減らすことです。日本はそうなるでしょうが、途上国では人口爆発が起きています。やがて、食や富を求めて、世界的な民族移動が起こる可能性もあります。そのときは、かつてない戦争になるかも知れません。

戦争をなくしてくれたら
人々は神が戦争をなくしてくれたら幸せになり神を信じるでしょうか。そのようなことがあり得ないのは、歴史が教えています。ある日、ピタッと世界から戦争が消えても、その感謝はすぐに消え去り、瞬く間に地上は諸悪に満たされます。しかし、少数の神を信じる人々もまた存在するのです。それが、神と人との営みです。

（ルカによる福音書）
21-8イエスが言われた、「あなたがたは、惑わされないように気をつけなさい。多くの者がわたしの名を名のって現れ、自分がそれだとか、時が近づいたとか、言うであろう」。彼らについて行くな。21-9戦争と騒乱とのうわさを聞くときにも、おじ恐れるな。こうしたことはまず起らねばならないが、終わりはすぐにはこない。

（ローマ人への手紙）
3-5しかし、もしわたしたちの不義が、神の義を明らかにするとしたら、なんと言うべきか。怒りを下す神は、不義であると言うのか（これは人間的な言い方ではある）。3-6断じてそうではない。もしそうであったら、神はこの世を、どうさばかれるだろうか。

3-7しかし、もし神の真実が、わたしの偽りによりいっそう明らかにされて、神の栄光となるなら、どうして、わたしたちはなおも罪人としてさばかれるのだろうか。3-8むしろ、「善をきたらせるために、わたしたちは悪をしようではないか」（わたしたちがそう言っていると、ある人々はそしっている）。彼らが罰せられるのは当然である。3-9すると、どうなるのか。わたしたちには何かまさったところがあるのか。絶対にない。ユダヤ人もギリシャ人も、ことごとく罪の下にあることを、わたしたちはすでに指摘した。
3-10次のように書いてある、

「義人はいない、ひとりもいない。
3-11悟りのある人はいない、神を求める人はいない。
3-12すべての人は迷い出て、
ことごとく無益なものになっている。
善を行う者はいない、
ひとりもいない。
3-13彼らののどは、開いた墓であり、
彼らは、その舌で人を欺き、
彼らのくちびるには、まむしの毒があり、
3-14彼らの口は、のろいと苦い言葉とで満ちている。
3-15彼らの足は、血を流すのに速く、
3-16彼らの道には、破壊と悲惨とがある。
3-17そして、彼らには平和の道を知らない。
3-18彼らの目の前には、神に対する恐れがない」。

詩篇
聖歌隊の指揮者によってうたわせたダビデの歌
14-1愚かな者は心のうちに「神はない」と言う。
彼らは腐れはて、憎むべき事をなし、
善を行う者はない。
14-2主は天から人の子らを見おろして、
賢い者、神をたずね求める者が
あるかないかを見られた。
14-3彼らはみな迷い、みなひとしく腐れた。
善を行う者はない、ひとりもない。
14-4すべて悪を行う者は悟りがないのか。
彼らは物食うようにわが民をくらい、
また主を呼ぶことをしない。

詩篇
聖歌隊の指揮者によってマハラテのしらべにあわせてうたわせたダビデのマスキールの歌
53-1愚かな者は心のうちに「神はない」と言う。
彼らは腐れはて、憎むべき不義をおこなった。
善を行う者はない。

53-2神は天から人の子を見おろして、
賢い者、神を尋ね求める者があるかないかを見られた。
53-3彼らは皆そむき、みなひとしく堕落した。
善を行う者はない、ひとりもない。

53-4悪を行う者は悟りがないのか。
彼らは物食うようにわが民を食らい、
また神を呼ぶことをしない。

3-19さて、わたしたちが知っているように、すべて律法の言うところは、律法のもとにある者たちに対して語られている。それは、すべての口がふさがれ、全世界が神のさばきに服するためである。3-20なぜなら、律法を行うことによっては、すべての人間は神の前に義とせられないからである。律法によっては、罪の自覚が生じるのみである。

戦争推進者の家族は安全な場所に住んでいます。彼らは、家族には言えないことをしています。万人が苦しみ、数人が潤うのが戦争ですが、それがなくなりません。誰がそれを起こしているのか、「大義名分」は正しいのか、誰も考えてはいません。

それでも、今の時代、神を思う人の数ほどに、戦争回避に努力をしている人々はいるでしょう。彼らの上に、神のご加護のあらんことを。

戦争の原因
民族主義から資源の争奪、利権の分配など、多様化しています。領土問題も資源争奪の一部です。 　　　

貧しい人たち
（マタイによる福音書）
26-10イエスはそれを聞いて彼らに言われた、「なぜ、女を困らせるのか。わたしによい事をしてくれたのだ。26-11貧しい人たちはいつもあなたがたと一緒にいるが、わたしはいつも一緒にいるわけではない。26-12この女がわたしのからだにこの香油を注いだのは、わたしの葬りの用意をするためである。26-13よく聞きなさい。全世界のどこででも、この福音が宣べ伝えられる所では、この女のした事も記念として語られるであろう」。

貧困から人々を解放する最も大きな手段は、「教育」です。文字を読み書きできれば、それは権利を知る大きな武器になります。しかし、怠け者は、その恩恵に預かれません。楽していい目をしようというのは、虫がよすぎます。

為替とか株とかいった架空の商品が、世界経済を混乱させ、戦争に関与しています。これらは戦争資金ともなり、経済の牽引ともなります。なくしたらなくしたで、世界は混乱します。

結局のところ、「神がいるなら、なぜ戦争や貧困があるのだろう」という答えは、出ていません。戦争もまた、人類の営みの一つなのだ、とも言えるからです。
　 
 
　 

2013/7/21 オリジナル教会（初代代表）　笹倉正義
正式名称：（笹倉宗）聖母マリヤ福音教会
2016/1/1