２２章「密輸入者(みつゆにゅうしゃ)」

ダンテスをひろってくれた船はうまいぐあいに密輸入船だった。船はモンテクリスト島の近くを何度も往来したが、島に上陸する機会がなかったのだった。

目次

２２（１）リボルノの理髪店　2-22-1-10つづいてシャトー・ディフの上にさも帽子の前飾りとでもいったように浮き出した軽い一抹の煙を見、やがて遠く大砲の音を耳にしたとき、彼は、ひょっとしたらいま船に乗せたこの男は、ちょうど王さまのお出ましやお帰りのときと同じく、礼砲をもって迎えられる身分の男（政治犯）ではあるまいかと考えた。事実こう考えるほうが、この男が税関吏である場合にくらべて、ずっと不安が少なかった。

２２（２）ダンテスの見入る島影　2-22-2-14そして、右にはゴルゴンヌ、左にはピアノサを残しながら、パオリとナポレオンの祖国のほうへ向かって進んで行った。翌日、いつものとおり朝早く甲板にあがって行った船長は、ダンテスが船壁に身をもたせながら、ふしぎなようすで、昇る朝日によって薔薇色にいろどられている花崗岩質の岩山に見入っている姿を見つけた。それはモンテ・クリスト島だった。ジュヌ・アメリー号は右舷のほう、四分の三海里（1．４Ｋｍ）のところに島をながめて、コルシカへの道をつづけた。

２２（３）ジャコポの気持ち　2-22-3-32それにジャコポは、彼が倒れるのを見ると、てっきり『やられた』と思い込み、飛んできて助け起こしてくれた。そして、助け起こしたそのあとで、このうえもない親切な朋輩としての看護をしてくれた。つまり世の中は、パングロス博士（ボルテールの『カンディド』に出て来る人物の名）の考えたほど善良なものでもなければ、ダンテスが考えたほど悪意にみちたものでもなかった。なぜかといえば、朋輩が死ねば、その男のぶんの賞与金までもらえるはずの男の殺されかかったのを見て、ジャコポはこれほど真剣に心配してくれたではなかったか。

２２（４）島の使い道　2-22-4-29話というのは一つの大きな仕事だった。それはトルコ絨毯や、東洋の織物や、カシミヤなどを積みこんだ船のことだった。どこか交易のできるような中立地帯を見つけ、それらの貨物を、フランス海岸に陸揚げしようというわけだった。これが成功したあかつきの賞与金は莫大なもので、一人あたり五十乃至六十ピアストルということになっていた。ジュヌ・アメリー号の船長は、貨物を積みおろす場所としてモンテ・クリスト島を挙げた。

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引用者：2016/7/18-19　（笹倉宗）聖母マリヤ福音教会
通称「オリジナル教会」　初代代表者　笹倉正義
ささくら修道会・必読書