２０章「シャトー・ディフの墓場」

ダンテスは土葬されると思ってその覚悟を決めていた。しかしそのダンテスが入った袋は、空を切って下へ下へと落ち、海中へと沈んでいった。

目次

２０（１）恩師との別離　2-20-1-41だが、こう言いながらダンテスは急に目を据え、突然なにか一つの考えが思い浮かび、しかもその考えが恐ろしくなったというように、じっと身動きしなくなった。たちまち彼は立ちあがって、『めまい』がするとでもいったように、手を額へ持っていった。そして室のなかを二度三度歩きまわると、ベッドのそばまでもどって行って立ちどまった・・・・。

２０（２）死者と生者の入替り　2-20-2-8それからふたたび穴にはいり、壁のところへベッドを引きよせ、さてそれから、片方の室に帰ってくると、かくされていた針と糸とを取り出し、嚢のなかには裸の人がいると思わせるため、着ていた『ぼろ』をかなぐり捨て、腹のあいた嚢のなかにもぐりこみ、死骸のはいっていたところに体をおさめ、縫目をうちから縫い閉じた。

２０（３）死体袋の運び出し　2-20-3-28死人は、ベッドから担架へうつされた。ダンテスはうまく死人に見せようと思って、つとめて体を硬ばらせた。彼は担架の上にしっかり乗せられた。そして葬列は、先頭に立つ角灯を持った男に照らされながら、階段を上へ上へとのぼって行った。たちまち、爽やかな、荒い夜風が身にしみた。

２０（４）宙を落下する死体袋　2-20-4-35「よおし、いよいよきたぞ！」と、第一の男が言った。「もっと先だよ」と、も一人が言った。「いつかの奴も途中で引っかかって岩に砕け、あくる日典獄さんから、手を抜いたって怒られたっけ」。上りになって四歩か五歩。やがてダンテスは、頭と足とをつかまれて振りまわされているのを感じた。「ひの、」。「ふの、」。「み！」。それと同時にダンテスには、自分がひろびろとした虚空に投げ出されたのが感じられた。そして傷ついた鳥といったように空を切って、胸を凍らせる恐怖と共に、下へ下へと落ちて行った。

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引用者：2016/7/10　（笹倉宗）聖母マリヤ福音教会
通称「オリジナル教会」　初代代表者　笹倉正義
ささくら修道会・必読書