４章「陰謀(いんぼう)」

告訴状は左手で書くのがポイント。誰が書いたのかわからないその文面の破壊力。ダングラールが書き、フェルナンが小声で読むのを聞いたカドルッスは恐れをなすが、事態は進行していく。

目次

４（１）フェルナンの希望　1-4-1-30そしてメルセデスが死ぬ前には、」と、フェルナンはゆるがぬ決心をみせた調子で言葉をつづけた。「僕が死んでしまいます」。それこそ色恋というやつだな！」。カドルッスはますます酔いのまわった声で言った。「そうさ。そうこなければ、色恋がわからねえってことになるんだ！」。「ねえ、」と、ダングラールが言った。「君はずいぶんいい人らしい。ひとつその苦しみから救ってやろうと思うんだが、ただし・・・・」。「そうだ」と、カドルッスが言った。「さあさあ初めたり」。

４（２）二人の間に牢屋の壁を　1-4-2-1「あなたは、僕を苦しみから助け出してやろうとおっしゃいましたね」と、フェルナンが言った。「そしてそのあとで、『ただし』とおっしゃいましたね・・・・」。「うん、『ただし』とつけ加えたな・・・・君を苦しみから救うには、つまり君の好きな女をダンテスがもらわないようにしさえすればいいんだ。ところでその結婚は、たといダンテスが死なないでも、ちゃんと『ふい』にさせられるんだぜ」。

４（３）ペンとインキと紙　1-4-3-59「そいつはまずいや」と、ダングラールが言った。「それほどの決心があったら、なあ、それならむしろ、おれがやるように、このペンをとってインキにひたし、自分の筆跡だということがわからないように、左手で、こうした短い告訴状を書くほうが利巧だと思うな」。こう言いながらダングラールは、手本を見せるといったように、左手で、平素の彼の書体とまったくちがった筆跡で、つぎの文句を書きつらね、それをフェルナンの手に渡してやった。

４（４）告訴状の文面　1-4-4-23ダングラールは、こう言いながら立ちあがった。そして、椅子にかけたまま、横目づかいで、いましがた片隅に投げすてられた告訴状を一心に見ている青年のほうをながめやった。

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引用者：2016/6/3　（笹倉宗）聖母マリヤ福音教会
通称「オリジナル教会」　初代代表者　笹倉正義