４９章「エデ」

マクシミリヤンの住居をたずねる前に、伯爵はエデの室をおとずれた。そして伯爵はエデに、ここはフランスであり、おまえを自由の身にしたと教えてやったのだった。しかし、それを聞いたエデは、むしろ顔をくもらせた。

目次

（１）エデのプロフィール 4-49-1-32戸口の四角な框は額縁のようになっていて、『しとね』の上に横たわった若い女の姿は、まるで美しい一幅の画のようだった。モンテ・クリスト伯ははいっていった。エデは、水煙管を持ったほうの腕をついて身を起こした。そして、伯爵のほうへ手をさし出しながら微笑して迎えた。「どうなさいました？」と、女は、スパルタやアテネの娘特有の、響きのいい言葉で言った。

（２）エデと伯爵の機微 4-49-2-52だから、ローマや、フィレンツェや、ミラノや、マドリッドでしたように、この北の国へきたら、ここでの生活に馴れなければ。それが、いずれはお前の役にたつのだ。このままここで暮らすにしても、あるいは東洋へ帰るにしても」。エデは、涙をたたえた眼をあげて伯爵を見た。そして、「『わたしたち』が東洋へ帰るにしても』と、おっしゃるおつもりでございましょうね？」と言った。

（３）父とあなたでは違う「愛」に 4-49-3-30「ちがいます。わたくし、あなたをお愛ししたようには、父を愛していませんでした。あなたに対しての愛は、それと違った愛なのです。父が亡くなりましたとき、わたくし、死のうとはしませんでした。でも、あなたの場合、もしあなたがお亡くなりになったら、わたくし生きていませんもの」。伯爵は、深い情愛のこもった微笑を見せて、エデのほうへ手をさし伸べた。

次へ

ＸＬＩＸ（４９） Ｈａｙｄｅｅ

ページ制作者：（ささくら宗）聖母マリヤ福音教会
通称「オリジナル教会」　初代代表者　笹倉正義
この本は、オリジナル教会・ささくら修道会の必読書
2016/5/8、2017/9/17