３２章「めざめ」

フランツの島遊びは、船乗りシンドバッドと名乗る人物との出会いと、晩餐と、ハシッシュの体験で終わった。その人物の正体、モンテクリスト島の秘密はともにわからなかた。そして、舞台はローマに移り、フランツとアルベールとは、謝肉祭の興奮へと導かれる。

目次

３２（１）沖に去り行くヨット　 2-32-1-32「では、やっぱりほんとうだったのか」と、フランツは言った。「僕を島に迎えてくれ、王侯のもてなしをしてくれ、そして僕の寝ているひまに出かけて行ったあの人は、ほんとうに実在していた人なのか？」。「ほんとうでございますとも。あそこに、ほら、すっかり帆をあげて、あの方の小さいヨットが進んで行きます。遠眼鏡でごらんになったら、乗組員の真中にあの方のお姿がお見えでしょう」。こう言いながら、ガエタノは手を差し伸べて、いまコルシカの南端へ向かって進んで行く小船のほうを指した。

３２（２）すべては夢のあと　 2-32-2-59そうしたことからはっきりわかったのは、フランツをまねいてくれたシンドバッドの殿さまというのが、地中海沿岸を挙げての密輸入者や海賊たちと関係をもっているということだった。これは、彼の身分をかなり奇怪なものと思わせるのにじゅうぶんだった。

３２（３）パストリーニのホテル　 2-32-3-12さて彼は、ますます数を増し、ますますざわついてくる群集のあいだを抜けて、ホテルまで行った。彼の最初の申出に対しては、約束済の辻馬車の馭者や満員の旅籠屋特有な横柄なようすで、もうロンドン・ホテルには室がないというにべもない返事を聞かされた。そこで彼は、名刺をパストリーニに通じ、アルベール・ド・モルセールからの紹介である旨を申し入れた。この方法はまさに成功だった。パストリーニは自身飛んで出てきて、待たせたことを詫びながら、ボーイどもを叱りとばし、フランツをつかまえていた案内人の手から手燭を取りあげ、アルベールのところへ案内しようとした。ちょうどそこへアルベール自身も迎えに出てきた。

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ページ制作者：2016/9/19-20　（ささくら宗）聖母マリヤ福音教会
通称「オリジナル教会」　初代代表者　笹倉正義
ささくら修道会・必読書
2017/5/25