(1)(3)(2)教会建設者パウロ

パウロ（この当時の名前はサウロ）はアンテオケにやってくる前、ユダヤ人キリスト者の迫害者であった。彼は、タルソの町の裕福なテント職人の息子であったが、エルサレムに留学し、ユダヤ神学を修めた。また、改宗のユダヤ人を求めて、ギリシャやクレテ島方面にも旅をした。使徒行伝に残る彼に関する記録は、それをうらづける。

彼は、ダマスコへの旅の途中で、眼病を発症し失明の危機にさらされた。「盲人になる！」それは、ユダヤの神エホバの戦士を自認するパウロにとってあまりな負の報酬であった。「神が間違っているはずはない、だが、なぜだ？」彼は苦しみ、その魂は第三の天にまで引き上げられた。そして、栄光のイエスさまを見たのであった。
 
彼は議論好きだった。捕らえたキリスト者と問答をし、理論で圧伏しようともした。しかし、彼らは議論でも争わなかった。ただ、こう祈っていた、「彼の罪をゆるすので、わたしの罪もゆるしてください」、聞いたパウロはあざわらった。「無知蒙昧の者ども、呪われるがよい」。

しかし、いま自分はその神に打たれた。盲人になれば、自分は穢れたものとされ、今までの労苦はふいになる。激しい悔恨が彼を包み、思わず知らず、彼らの言葉が口をついた、「わたしの罪をおゆるしください！」。と、激しい嗚咽とともに、両眼に涙があふれた。その涙の圧力が眼のかさぶたを吹き飛ばし、涙があふれ出た。彼は救われたのだった！

彼は失明はまぬがれたが、眼病は根治にいたらず、彼の生涯をとおし、彼を苦しめた。病は、彼の人相も一変させた。しかし、彼はイエス・キリストの富を得たのだった。イザヤ書は彼に関してこう記している。

旧約聖書「イザヤ書」
52-13見よ、わがしもべは栄える。
彼は高められ、あげられ、ひじょうに高くなる。
52-14多くの人が彼に驚いたように
−−−
彼の顔だちは、そこなわれて人と異なり、
その姿は人の子と異なっていたからである
−−−
52-15彼は多くの国民を驚かす。
王たちは彼のゆえに口をつぐむ。
それは彼らがまだ伝えられなかったことを見、
まだ聞かなかったことを悟るからだ。

ちなみにパウロは、ベニヤミン族出身の生粋のユダヤ人であるから、イザヤ書の預言者がはるかにパウロの幻を見たのだとしてもおかしくはない。

その彼が、アンテオケにやってきた。彼は、ルカ文書（福音書として編纂される前の短い文書）によって、異邦人に増えたキリスト者たちに、その救いの根拠を教え、教会を組織する任務を自認した。アンテオケのパウロは、おだやかであった。弟子にギリシャ人のテトスを得た。また、「ヘブル人（びと）への手紙」と後世名づけられた文書を著した。イエスさまがイエス・キリストとなって、永遠の大祭司であることを論証した。

元来、行動派のパウロは、宣教の旅にでることにした。かつて改宗者を求めて旅をした地域に、今度は福音を伝え、教会組織をつくるのだ。そして、彼の苦難は、ここから始まるのだった。それは、ユダヤ人たちの激しい抵抗であった。ユダヤ教は、常に内向きのでなければならない。世界中で、その政治体制の中にあって、商売に特化した、内向きの集合体でなければならないのだった。それが、外向きに作用すれば、政治体制にも巻き込まれ、ユダヤ教は瓦解する。「背徳のパウロは断じてゆるせぬ！」、こう叫ぶ者から、弾圧を受け続けるのである。それは、ローマの市民権を持つ彼が、皇帝への上訴を申し出て、カイザリヤの獄から開放されるまで続いたのである。

それらは、使徒行伝から知ることができるが、パウロ書簡と合わせて読むことで、その視野を広げることができる。使徒行伝はルカの書いたものであり、前半はむしろ「福音書」の続きである。後半が、パウロに随行した記録である。しかし、ルカ文書には、ギリシャ人の痕跡はない。たとえば、重要な人物であるはずのテトスの名前は出てこない。それは、パウロ書簡にあるから、十分なのである。パウロ書簡は、ルカがコピーして残させたものである。「記録」することの重要性、それはテオピロとルカの信条、神学的哲学なのであった。

こうして、ルカ文書はローマに受け入れられるようになり、弟子たちもそれに続いたのである。そして、ペテロは、その代表者なのである。土着のユダヤ人であり、湖の漁師であり、方言交じりのアラム語を話すペテロ、そのペテロこそ、カトリック教会の象徴なのである。イエスの母と女性たちもまた、ローマを目指されたであろう。ルカは自分の奉仕、女性たちの献身を書き記さなかった。それらを表に出さないことこそ、キリスト教の奥義のひとつなのである。「善行は人に知られてはならぬ。知らせようなどはもっての他」、知られたが最後、それはけがれるからである。

ともあれ、パウロの教会建設（物理的な建物ではない）は成功し、その信徒のありかたに、作用し続けている。
 
 
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2016/7/31 オリジナル教会（初代代表）　笹倉正義
正式名称：（笹倉宗）聖母マリヤ福音教会
ささくら修道会