３（９） ３（９）
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| (3-356)(3-357)(3-358)(3-359)(3-360)(3-361)(3-362) (3-363)(3-364) こうして、一日が終り、また一日が過ぎました。微風（そよかぜ）がしきりに帆を鳴らし、南風（みなみかぜ：アウステル）が亜麻布（あまぬの）の中で膨（ふく）れ上がります。わたしは、予言者としても高名なヘレヌスに日頃の疑問をぶつけ、こう問うてみました。『トロヤの君、あなたは神々の言葉のわかる人だ。ポエブスの御心（みこころ）を読み解き、三脚の御座所（ござしょ）（デルフィの巫女（みこ）の座）から神託を受けとり、クラロス（アポロ神殿で有名な小アジアの町：今のトルコ西端）の月桂樹（ラウルス）の神事（しんじ）に通じ、また星座の意味を理解し、鳴く鳥の告げる予言を理解し、飛ぶ鳥の航跡（こうせき）で吉凶（きっきょう）を占うことができる人だ。 それならば、告げてほしい。これまでわたしはいろいろ不思議な出来事に遭遇してきた。それらはすべて物事の吉兆（きっちょう）をあらわしているように思えるのだ。神々は一致してわたしにイタリア行きを勧め、遠く離れた地に向えとの御心を示している。(3-356-364) (3-365)(3-366)(3-367)(3-368)(3-369)(3-370)(3-371)(3-372)(3-373) ただしかし、不吉な予言をたれたハルピュイアのケラエノの言葉が妙に引っかかる。あの怪物は恐ろしい怒りと不気味な餓えを予告していった。次にはどんな危険が待っていて、それをどうやって避けたらよいか。どの道を辿（たど）ってこれからの苦難を乗り越えていったらよいか。それを教えてはいただけまいか』。 わたしの言葉にヘレヌスは、まず作法どおり若牛を屠（ほふ）って神々の御加護（ごかご）を祈願（きがん）しました。それから、聖なる頭からリボンをはずし、わたしを、あなたの神殿へ、ポエブスよ、連れていったのでした。彼はわたしの手を握って導いてくれたのですが、わたしはあなたの大御心（おおみこころ）を感じて、心がふるえました。ついに神官（しんかん：サケルドス）は、おごそかな口調（くちょう）で、こう予言しました。(3-365-373) (3-374)(3-375)(3-376)(3-377)(3-378)(3-379)(3-380) 『女神の御子（みこ：アエネアスのこと）よ、あなたには神々のお導きがあります。あなたが海を渡って往（ゆ）かれる事、ここにはっきり出ております。神々の王（ユピテル）がその運命（さだめ）を選び、めぐらせ、それに従って事は成り行きます。ただ、わたしは多くを語ることができませぬ。あなたが未知の海を安全に航行し、無事アウソニウス（イタリア）の港に辿（たど）り着けるように、若干（じゃっかん）お話しするのみです。 運命の女神（めがみ：パルカという）たちが、このヘレヌスが詳しい事情を知ることを妨（さまた）げるのです。またサトウルヌスの御娘（みむすめ）ユノ（ギリシャ名はヘラ：ゼウスの妻）がわたしに話すことを禁じるのです。(3-374-380) (3-381)(3-382)(3-383)(3-384)(3-385)(3-386)(3-387) あなたは、イタリアがすぐ近くにあると思っておられるようだが、隣の港へ行くようなおつもりで居（い）られるとしたら、それは、とんでもない間違いというものです。とても長い道なき道が、延々（えんえん）とつづいている。その彼方（かなた）にイタリアはあります。まずはトリナクリア（シチリア）の大波に、あなたは櫂（かい）を入れねばなりません。 またその彼方のアウソニウスの千尋（ちひろ）の海を、あなたは船で渡らねばなりませぬ。さらには、冥府への入口（いりぐち）なすふたつの湖（みずうみ：リクリヌス湖（こ）とアウェルヌス湖）、アエアエキアのキルケの島（妖術使いの海のニンフ、キルケの住むアエアエア島）など、越えゆくべきところはたくさんあるのです。そしてあなたが町を建立（こんりゅう）する安全な大地は、そのまた向うにあるのです。(3-381-387) (3-388)(3-389)(3-390)(3-391)(3-392)(3-393)(3-394)(3-395) その時、どんな予兆（よちょう）が現れるか、お教えしましょう。わたしが述べることを、しかと心得られるように。あなたが窮地（きゅうち）に陥（おちい）った時、人里（ひとざと）はなれた川波の岸の常盤（ときわ）樫（かし）の林の中に、３０頭の子豚を生んだ巨大な雌豚（めすぶた）が地面に横たわっている姿を見かけるでしょう。 その乳房（ちぶさ）に集（つど）う子豚らも白豚です。そこが、町を建（た）てる場所になります。そここそがこれまでの御苦労の休止の場所になります。あなたがたが将来食卓を噛（か）みくだくなどという予言（先のケラエノの言葉）は気にするにはおよびません。運命（さだめ）が道を示してくれます。呼べばアポロが応（こた）えてくれます。(3-3883-395) (3-396)(3-397)(3-398)(3-399)(3-400)(3-401)(3-402) しかしまず、ここの土地（ギリシャ）から離れることが必要です。また、われらの海の流れが打ち寄せるイタリアの対岸（長靴の踵（かかと）から靴（くつ）裏にかけたあたり）も避けることが肝要（かんよう）です。あのあたりは、どこへ行っても、悪辣（あくらつ）なギリシャ人どもが町を建てています。 あのあたりには、ナリュクス（中部ギリシャの町）のロクリ人が城壁を構（かま）えておりますし（南イタリアのナリュクス）、サレンティニ（イタリア半島東南、長靴（ながぐつ）の踵にあたる地域）の野は、リュクトス（クレタの町）のイドメネウスの軍隊（文番号3-127参照）がおさえています。 また、あのメリボエア（テッサリアの町（こんにちのカラブリア半島のタラント湾（わん）に面した町）城壁をめぐらせています。(3-396-402) ○誓約の伝統儀式紫頭巾 (3-403)(3-404)(3-405)(3-406)(3-407)(3-408)(3-409) さて、海を越えて、首尾（しゅび）よく艦隊をあちら岸につけた時、浜に祭壇をもうけて、誓約を果たす段取りとなります。その時にはぜひとも、髪の毛を紫の頭巾（ずきん）ですっぽりと覆（おお）うことを、実行していただかねばなりませぬ。 これは、神々を讃える聖なる火が燃えている最中（さいちゅう）に、悪意を持ったものが姿を現して、吉兆を台無（だいな）しにすることをふせぐものです。あなたご自身をふくめ、儀式に参加する方々（かたがた）全員、この聖なる作法をしっかりと踏んでいただかねばなりません。また、ご子孫（しそん）の方々にも、純粋な心でこの礼拝を受け継いでもらわねばなりません。(3-403-409) (3-410)(3-411)(3-412)(3-413)(3-414)(3-415)(3-416) (3-417)(3-418)(3-419) さて、風があなたを、シクラ（シチリア）の岸の方角（ほうがく）に運びゆく時、ペロルスの岬（シチリアのイタリア側に向かう先端）の海峡にさしかかります。その時にはぜひ、左側の陸地に沿い、左側の海をどこまでも、どこまでも進んでいただかなければなりませぬ。右側の岸辺と波は（海峡を通過しないように）避けてください。 こちら側は、大昔（おおむかし）、地殻（ちかく）の大変動により崩落（ほうらく）し、真っ二つに引き裂かれたところと言い伝えられています。劫初（ごうしょ：この世の初め）連綿（れんめん）とつづく悠久（ゆうきゅう）の時間（とき）の流れには、こんな変革をもたらす力があるのです。それまでずっと、ひと続きであった陸地に、海が無理矢理（むりやり）割り込み、大波をたてて、西涯（ヘスペリア：イタリア）とシクルム（シチリア）側とを切断したのです。畑も町も海岸線に沿って引き裂かれ、狭隘（きょうあい）な潮（うしお）の流れがその間を洗っているのです。(3-410-419) (3-420)(3-421)(3-422)(3-423)(3-424)(3-425)(3-426)(3-427) (3-428)(3-429)(3-430)(3-431)(3-432) 海峡の右（イタリア）側には海妖（スキュラ）という怪物が、左（シチリア）側には、飽くことを知らぬカリュブディスという化け物が住みついています。カリュブディスは奈落（ならく）の底から、大渦を起こして、荒潮（あらしお）を三度呑みこみ、三度吐き出し、天空の星々へ向けて大波を吹き上げています。 ○---オデュッセイア１２歌（スキュラとカリュブディス） 海妖（スキュラ）は暗い洞窟（どうくつ）に潜（ひそ）み、口を突き出しては船を捕（とら）えて岩礁（がんしょう）に引き込みます。上半身（じょうはんしん）は、陰部のあたりまで人間の姿をしていて、乙女の胸を持っていますが、下半身はおぞましい海獣の形をしています。狼の腹から海豚（いるか）の尻尾（しっぽ）を垂（た）らしているのです。 そもそもこの荒涼たる洞窟に座す醜い海妖（スキュラ）の姿や、青黒（あおぐろ）い犬（スキュラの腹部の狼のこと）の遠吠（とおぼ）えがこだまする岩礁などを見てしまうより、じっと我慢の迂路（うろ）を取り、トリナクリウム（シチリア）のパキュヌス（東南端）の岬（みさき）をまわった方が、断然（だんぜん）賢明（けんめい）なのです。(3-420-432) |
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2015/10/13 オリジナル教会（初代代表） 笹倉正義
正式名称：（笹倉宗）聖母マリヤ福音教会