３（１０）予言（後編）

 
○（３−１０）神官を兼ねるヘレヌス王がアエネアスの航海のあらましを告げる後編
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もうひとつ、よくお聞き願いたいことがあります。このヘレヌスを予言者とお認めくださるならばですが。わたしの言うことに信（しん）が置けるとお思いならば、またもし、アポロの神がわが魂（たましい）を真実で満たしたまうならば、女神のお子（アエネアス）よ、どうぞこれから申し上げること、何にもまさって心にお留（と）め願いたい。わたしは、くりかえしくりかえし、何度でもこの事を申し上げる所存です。

それは、かの偉大なる女神ユノの御心（みこころ）を、何としてでも、安んじ奉（たてまつ）ることです。ユノ女神に心より祈願（きがん）し、女神を丁重（ていちょう）に御供養（くよう）申し上げ、権能ある女神（めがみ：ヒメガミ）様のお心を、奉納物（ほうのうぶつ）でしっかりとらえて離さぬことでござる。こうすればあなたは勝利者としてトリナクリア（シチリア）の地を離れ、イタリー人の住むところへと赴（おもむ）けましょう。(3-433-440)

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さて、そこへ到着してからのことを申し上げましょう。あなたがクマエの町（ナポリの西）に近づいて、神さびた湖（みずうみ：文番号3-387）、森さやぐアウェルヌス湖を目にされる時、あなたはものに取り憑（つ）かれた巫女に出会うでしょう。彼女は、岩窟の奥深くに潜んでさまざまな運命（さだめ）をうたい、その符牒（シルシ：ふちょう）や言（こと）の葉を、木（こ）の葉に書き留めておく人物です。この木の葉に記された予言を、乙女はきちんと整理して洞窟内に隠しています。

この予言の言葉はつねに同じ場所にあって、順序を崩さす保管されているのですが、たまたま、かすかに風が吹いて、扉の枢軸（カルド：すうじく）が動き、予言の言葉の秩序（ちつじょ）を狂わすことがあります。入口が開いてしまい、柔らかな木の葉が乱れるのです。しかし彼女は洞窟内を飛び交う予言の言葉を捕（つか）まえようとはしません。もとの場所に置こうとはせず、乱（みだ）れた内容を整理しようともしないのです。そこで、助言を期待した人々は空しく帰ります。彼らはこのシュビラの巫女（いたこ）の祠（ほこら）を憎むようになるのです。(3-441-452)

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ですが、ここが踏ん張りどころです。ここでの滞在を無駄とはお考えなきように。その時、あなたのお仲間はあなたを急きたてるかもしれません。沖を目指す好条件（こうじょうけん）がすべて整っているかも知れません。あなたの船の帆は、風をはらんで膨（ふく）れあがっているかもしれません。だが、あなたはこの巫女を訪問せねばなりません。そこでしかとお頼みするのです。

彼女に予言を歌ってもらい、その声を聞かせてもらい、その口に喋（しゃべ）らせるのです。されば、巫女はあなたにイタリアの民と、来るべき戦（いくさ）について、何事かを告げるでしょう。何を避け、何に立ち向うべきか、語ってくれるでしょう。あなたが尊敬（そんけい）を示すならば、彼女は、進みゆくべき道を示してくれましょう。わたしどもが言えることはここまでです。あとは、あなた次第（しだい）だ。お発（た）ちになるがよい。ひとつひとつ仕事を果たし、大いなるトロヤを天にそびえさせなされ』(3-453-462)

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預言者は、このように、好意のこもった口調（くちょう）で、事細（ことこま）かに説明してくれました。それから、彼は、黄金や（おうごん）や、切り出した象牙（ぞうげ）など、たくさんの贈り物を船へ運ぶよう命じました。彼は船腹（せんぷく）に、いっぱい銀を入れて満たしてくれました、

彼の贈り物の中には、ドドナ（ブトロトウムの東南東約７２ｋｍにあるユピテルの神託所）の釜（その音で吉凶を占う）や、鎖（くさり）を三重に編みこんだ黄金（くがね）縅（おどし）の鎧（よろい）と、天辺（てっぺん）の尖頂（せんちょう）に見事に垂れた冠毛（クリスタ）を持つ兜（かぶと）がありました。これはかのネオプトレムス（アキレスの子ピュルルス）の具足（ぐそく）だったものでした。

彼はまた、父（アンキセス）にも気を使って贈り物を持ってきました。そのうえ馬と馬丁（ばてい：ドウクスという：馬の世話や口取りを職業とする人）、船の漕（こ）ぎ手の手配（てはい）、そして仲間たちの装備品（そうびひん）まで、面倒（めんどう）を見てくれたのです。(3-463-471)
 
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2015/10/17 オリジナル教会（初代代表）　笹倉正義
正式名称：（笹倉宗）聖母マリヤ福音教会