３（１３）カリュブディス

○（３−１３）ホメロス「オデュッセイア」の海域を通過にアンキセスの号令 (3-548)(3-549)(3-550)(3-551)(3-552)(3-553)(3-554) (3-555)(3-556)(3-557)(3-558)(3-559)(3-560) さて、誓願（せいがん）の儀式を滞（とどこお）りなく済ませると、われわれは帆柱（ほばしら）いっぱいに帆を広げ、穂桁（ほげた）の先端を進路に向けました。実は、ギリシャからの移住民の住むところはまっぴら御免でした。彼らの耕した土地に留まる事などは論外でした。 しばらく行くと、噂が本当なら、ヘラクレスが築いたという、タレントウムの町（スパルタの移住民が建てた町）の湾岸（わんがん）にさしかかりました。このタレントウムと向かい合って、ラキニアの女神（めがみ：ヒメガミ：今日（こんにち）のカラブリア州のラキニウムに祀（まつ）られたユノのこと））の神殿が、高くそびえる姿を現しました。 そこを過ぎ、カウロンの砦（とりで）と航行（こうこう）の難所（なんしょ）スキュラケウム（スクイラチェ）を通過すると、遠く潮（うしお）の彼方（かなた）に、トリナクリア（シチリア）のアエトナ山が見えました。この頃、海はしきりに呻（うめ）き声をあげ、遠くに岩打つ波の音が聞こえました。 岸に砕ける海水は、まるで叫んでいるようでした。浅瀬は高波を噴き上げ、海流に砂が混じります。父アンキセスは言いました、『カリュブディスに間違いない。これはヘレヌス殿が忠告された岩場じゃ。恐るべき岩礁（がんしょう）じゃと言うておられたあれじゃ。皆の者、ここは避けるべきところじゃ。そりゃ、一斉（いっせい）に力をこめて漕ぎ抜けい』。(3-548-560) （オデュッセイア　第１２歌） (12-234)(12-235)(12-236)(12-237)(12-238)(12-239)(12-240) (12-241)(12-242)(12-243)(12-244)(12-245)(12-246)(12-247) (12-248)(12-249)(12-250)(12-251)(12-252)(12-253)(12-254) (12-255)(12-256)(12-257)(12-258)(12-259) われらは歎きのうちに、岩の狭間（はざま）を漕ぎ抜けて行った。一方にはスキュレが控えているし、他方では恐るべきカリュブディスが、凄まじい勢いで海の塩辛（しおから）い水を吸い込んでいる。そして吐き出す時には、さながら燃えさかる火にかけた鍋の如く、その全体がぐらぐらと煮えたぎり、吹き上げられた泡がしぶきとなって、二つの岩の頂（いただ）きに降りかかる。 (3-561)(3-562)(3-563)(3-564)(3-565)(3-566)(3-567) (3-568)(3-569) 父のかけ声に、皆、ただちに応（こた）えました。まずパリヌルス（舵手（だしゅ））が、波に軋（きし）む舳先（へさき）を左へと旋回（せんかい）させると、全員、力を合わせて櫂（かい）を使い、帆を操（あやつ）り、船を左右へ動かしました。われわれは、渦巻く大波に、空中（くうちゅう）高くもちあげられました。しかし次の瞬間には、引く波とともに奈落（ならく）の底に沈みました。 洞（ほら）なす岩場の断崖（だんがい）が、三度（みたび）咆哮（ほうこう）しました。われわれは波の飛沫（ひまつ）が三度砕（くだ）け散り、星々が雫（しずく）を垂（た）らすのを目撃（もくげき）しました。しかしそのうちに風が吹きやんで、日が沈みました。われわれは疲れきっていました。そしてわれわれは、いつのまにかキュクロプスたち（シチリアに住む一つ目の巨人）の住む岸辺（きしべ）に近づいていました。(3-561-569)

次へ

2015/10/19 オリジナル教会（初代代表）　笹倉正義
正式名称：（笹倉宗）聖母マリヤ福音教会